前橋市「富士見産業祭」に参加しました!
前橋市「富士見産業祭」に参加しました!
国際学部 国際地域学科の鈴木ゼミでは、スローシティ運動(イタリア発祥の持続可能なまちづくり)を研究テーマとしています。
2025年11月3日、群馬県前橋市富士見公民館で開催された「第28回フェスティバル in FUJIMI 富士見産業祭」において、スローシティに関するパネル展示と活動報告会に鈴木ゼミ3年生6名、2年生1名で参加しました。会場では地域の歴史や文化をテーマにしたさまざまな展示や出店が行われていました。その活動の中で、富士見地区の伝統である「富士見かるた」についてお話を伺ってきました。
富士見かるたは、前橋市と合併する以前の富士見村であった昭和31年に作られたもので、地域の風景や歴史、文化を題材にしています。制作当初から何度か改訂が行われ、現在の形に至っているそうです。前橋市との合併後も、地域の伝統文化を象徴する存在として受け継がれており、毎年富士見産業祭で販売されています。価格は1セット500円と手に取りやすく、県外からの購入者も多いそうです。群馬県立図書館にも所蔵されており、郷土史や文化に関心を持つ専門家や研究者などからも注目されています。
最近では、「昔を懐かしむために」購入する方が増えているそうです。高齢の方が自分の思い出として購入したり、ご家族がお母様や祖父母のために贈ったりすることもあるそうです。富士見かるたは地域の子ども会や小学校などでも活用されており、富士見VYS(青年ボランティア団体)が主催する「富士見かるた大会」も長年にわたって開催されています。しかし、コロナ禍の影響で2〜3年間は大会を実施できず、かるたを知らない子どもも増えてしまったそうです。それでも、地域の育成会や学校の取り組みによって一定の知名度は保たれています。
実際に、富士見の小学校に通っている小学生にもお話を伺いました。児童の多くは「富士見かるたの存在は知っている」と答えており、地域では広く認知されていることがうかがえました。一方で、「かるた大会にはあまり参加していない」という声もありました。中には「優勝したことがある」という児童もいました。「友達がやっていたり、景品があったりしたら参加しようかなと思う」と話す子もおり、景品の有無など参加へのきっかけづくりが課題であることが感じられました。
また、かるたに登場する場所については「知っている場所が多い」との意見が多く聞かれました。富士見かるたは昭和に作られたものであり、現在の令和の子どもたちにとってはすでに身近な場所が多く、「新しい発見はあまりない」と感じるようです。こうした声からも、今後は現代の子どもたちの視点を取り入れた新たな活用方法を考えていくことが大切だと感じました。
一方で、「かるたを通して地域の歴史や文化を学ぶ」という意識は、まだ十分に広がっていないとのことでした。富士見かるたの制作のときには、特定のターゲット層を想定していなかったそうです。今後は若い世代に向けて発信していくことが重要であり、若者が富士見の歴史や文化を知ることで、地域への愛着や誇りを育むきっかけになると考えられます。そのような地域への愛着が、将来的に地元へ戻って地域づくりに関わる動機づけになる可能性もあります。
今後は、ただ販売するだけでなく、学校教育や地域イベントと連携して富士見かるたを活用していく必要があるかもしれません。たとえば、スローシティの理念を学ぶ授業の中でかるたを使った体験型イベントを実施したり、YouTubeやSNSで富士見かるたを紹介したりするなど、現代の若者にも関心を持ってもらえる工夫が必要であると感じました。
イベント当日の朝は開始時間より1時間早めに会場に着き、展示物の設置や最終調整を行いました。9時半に開会式が富士見公民館の外で開催され、前橋市長や東京都目黒区の代表の方の挨拶や太鼓のパフォーマンスもあり、迫力がありました。
私たちは室内のスローシティや気仙沼かるたプロジェクトの展示、すいとんの調理・販売、抽選会の運営の主に3つに分かれて活動しました。
室内のエリアでは、鈴木ゼミの2年が作成したスローシティの概念を説明したポスターと、3年が作成した気仙沼かるたプロジェクトのポスターを展示しました。前橋市長が気仙沼カルタプロジェクトの展示に興味を持って下さり、「かるたは地域の魅力を子どもたちに分かりやすく伝えることが出来るので、ぜひ実現して欲しい」と応援のお言葉を頂きました。スローシティの概念や前橋がスローシティに認定されていることを知らない地元の方にも、スローシティの認知度を広めることが出来ました。このような機会をきっかけに、多くの人にスローシティの概念が伝わって欲しいと感じました。
外のブースの一角では、無料ですいとんの提供を行っていました。粉からすいとんを成形したり、並んでいるお客さんに割り箸とすいとんの提供をしたりなど、数人に分かれて手伝いました。寒い中、多くの人に並んでいただき12時ごろには完売になりました。地域の方と交流をしながら、最後は私たちもすいとんや赤飯を頂くことが出来ました。人の温かさに触れることで、スローを感じた良い経験になりました。
富士見産業祭の抽選会は、今回が初めての試みだったそうです。産業祭内の売店で購入、またはイベントのブースで体験すると抽選券が貰え、それを持って抽選会に挑むことが出来るようになっています。当たりの商品はすべて富士見町の特産品であり、町内のお店で使える商品券でした。このように町内の商品を景品として扱うことで、自発的に手に取って購入するよりは自然に地域の事に目を向けられるので地域の魅力を再認識でき、新たな発見に繋がり、スローシティ運動に自然な流れで関われるようになるのだと感じました。抽選会のような参加型イベントはどの年代でも受け入れられるものなので、地域の魅力を発信していく有効な手段であると思いました。
14時半に富士見産業祭が終了し、抽選会で余った景品をスタッフの方だけでじゃんけんをして分けました。その後、テントの解体や展示ボートの回収・収納を行い、床掃除をしました。分担して片付けを進めたので、40分程度で終えることが出来ました。去年よりも多くの来場者数で、沢山の地域の方の笑顔が溢れるイベントに携わる、貴重な体験が出来ました。今後も地域の人々と関わりながら、スローシティを広める活動を続けていきたいです。
以下は今回初めて参加した2年ゼミ生のフィールドノートの一部を紹介します。
前橋市地域おこし協力隊員の方と活動中に何度も会話する機会があり、ゼミ活動の話や前橋についても話すことができた。その中でも私が印象に残っているのは、「ゼミ活動としてわざわざ遠い前橋まで来て、ゼミ活動だけしてすぐ帰ってしまうのはもったいないのでは」「前橋をもっと知るために、地域のお店でおいしいもの食べたり観光したりできる時間がとれたらいいね」という言葉である。これを聞いて、せっかく前橋で活動するのならば、活動する私たち自身がもっと前橋について知っていたり、地域に関わりを深めることが大切だと感じた。いつかゼミ生で前橋散策をする時間を設けたいと思った。
地域おこし協力隊員さんの活動は、食を通じた地域おこしで、農薬を使わずに育てた野菜を収穫して調理して、食べる(その場で消費する)。これは、前橋の食を盛り上げるだけでなく、非常にスローであると感じた。子どもたちや地域の大人とさつまいもの収穫イベントを行ったり、料理教室を開いたり、前橋の生活環境に合わせたこうした活動が人の交流を生み出して、地域おこしに繫がっているのだとわかった。そして、「参加型の食文化」があることが、スローシティ的価値を強く感じさせた。
富士見産業祭は、マーケットや、飲食ブース、体験・遊びコーナー、ステージイベント、抽選会などがあり、多様な楽しみがミックスされた地域イベントである。地域の自治体や団体が協力して、まちの魅力や文化、暮らしを知ってもらうことが目的とされ、「地域のための地域の人々による」イベントであると感じた。今回で28回目となる歴史ある祭りで、これまでも地域の実行委員会や自治体の継続的な協力により支えられ、実施してきたことがわかった。これは、スローシティが重視する「持続可能性」「継続した地域文化の維持」が実践されているイベントだと感じた。今回の参加をきっかけに、前橋の地域文化や人に触れ、スローシティについて自分自身で体験して学びを深めていきたい(北條)。
東洋大学 国際学部 国際地域学科 鈴木ゼミ3年
宇佐美樹里、伊藤萌果、深谷なつみ
鈴木鉄忠教授
この活動は、「東洋大学地域活性化支援事業」の支援金と「地域活性化支援活動に関する東洋大学と前橋赤城マイマイの会との相互協力覚書」の下に、実施しています。