2025.6.3|TUE
2025.6.3|TUE
水素社会の実現を目指した低コスト触媒に関する研究開発やCO2還元反応についての研究開発が注目されています。反応機構を調べたり、最適な反応条件を調べるためには、大量の試料が必要であったり、時間がかかったり、反応の前後で化学分析が必要だったりしました。
本研究では、触媒反応や酸化還元反応を制御した条件下で電気化学反応を進めながら、固液界面での化学反応解析について、表面増強ラマン散乱分光法を用いることで高感度に検出できるマイクロシステムを創出することに成功しました。このシステムを用いることで、一回に用いる試料は数マイクロ・リットルから数十マイクロ・リットル程度で済みます。電極に配置されたナノ構造によって、電気化学反応自体も増幅されており、電気化学反応を制御しながら、酸化還元反応を分子振動変化の遷移として追跡することが可能となりました。
実験では、酢酸銅水溶液における電気化学反応追跡を行っています。ナノ構造電極表面にメルカプト安息香酸を塗布した場合としてない場合では、銅イオンの酸化還元反応が異なる挙動を示し、メルカプト安息香酸が反応を阻害していることがわかりました。この実施例は、研究開発における一例ですが、電気化学関連分野全体に新しい分析システムとして活用が期待できます。
以上の結果は、Scientific Reportに受理されました。東洋大学、兵庫県立大学、慶應義塾大学、京都大学、東京農工大学の共同研究として実施されました。
東洋大学 理工学部 電気電子情報工学科
山口明啓
yamaguchi054@toyo.jp
用語説明:
通常のラマン散乱方が検出感度が非常に微弱である一方、表面増強ラマン散乱は、ナノ構造によって電場が増強されることで、100万倍上の検出感度を実現することが可能となる。