「DoGeNa」プロジェクトとは?
鳥取県の方言で「どげな?」とは、「どう?」や「どうしたらいい?」という意味を持ちます。この問いかけを出発点に、地域社会やグローバルな課題に対して、医学生が自ら考え行動する力を育む医学部公認のプロジェクトが「DoGeNa」です。
名前の由来
DoGeNa = For Doctors in training to rear a Generalist mind in a compassioNate community
頭文字をつなげて「DoGeNa」と名付けました。方言と英語の頭文字をかけた、ユニークなネーミングです。
プロジェクト誕生の背景
きっかけは、2014年に開校したミネルヴァ大学を知ったことでした。
この大学はキャンパスを持たず、学生が世界各地(サンフランシスコ、ソウル、ベルリン、台北など)を巡りながら、その土地の課題に取り組む学びの形を実践しています。
その学び方を知ったとき、「せっかく鳥取に来てくれた若者が、校舎の中だけで学ぶのはもったいない」と感じました。「鳥取全域さらには世界が学びのフィールドになれば、学びの価値はもっと広がるのではないか?」と考えたのです。
参考→世界最難関ミネルヴァ大学、初の日本人学生ーー今を生きる19歳の「原動力」の正体, 世界のエリートが今一番入りたい大学ミネルバ(ダイアモンド社)
かといって、当時は、大学教員ではありますが、消化器内科のスタッフが大学全体の教育について提言する立場にはありませんでした。
そこで、大学院時代から先輩であった医学教育長の植木教授にこのアイデアをお話したところ、とても気に入って下さり、医学教育学講座として支援をして頂ける事になりました。
「 …たとえば焚き火。焚き火を囲むだけで、僕らは同じ世界を生きる存在になれるんです。あるいは花火でもいい。みんなで線香花火をやって、落ちていく様子を楽しむ。それで僕らはひとつの世界に入ることができます。」(NewsPicks「Rethink Japan」宮台真司の言葉より )
偶然耳にしたこの言葉がヒントになり、時間と空間を共有できる「サマーキャンプ」を起点にしようと考えました。とにかく、まずは自分から身銭を切ってやってみて、皆に見てもらおうと心に決めていました。
そこで、2023年3月に以前から健診事業などで関係のあった鳥取県東部の若桜町の町長にこの企画を持ち込みました。いきなり、医学生を連れて若桜町でサマーキャンプをしたい!と持ち掛けたわけですから、町としても困られたと思います。しかし、前例のない案件にも関わらず、理解をして下さり、なんと町の予算も付けて頂きました。
このプロジェクトの開始にあたって決めたのは、「学びの目標をあえて立てない」ことです。目標があると、学生は“そこに向かえばよい”という受け身になってしまう。逆に、目標がないからこそ、出会いや体験から多様な“気づき”が生まれます。鳥取に来なかったら無かったこの経験だけは、きっと人生の糧になる。
人生は記憶の積分です。記憶の積み重ねがあなたの人生そのものなので、良い記憶(体験)・悪い記憶(体験)全てあなたを形づくる全てだからです。あえて学びの目標を立てない事で、この企画の体験価値から得られる解を発散させます。ともすれば、ただ遊んでいるだけに見えるかもしれませんが、それでプロジェクトの価値を最大化させたいのです。
その場で感じること、そのものが学びになる。
2023年の初年度、医学部1年生向けの「ヒューマンコミュニケーション学」でこの企画を紹介したところ、わずか数時間で定員20名を超える応募がありました。プロジェクトは医学部執行部の承認や地域医療学講座の協力も得て、無事実施されました。このサマーキャンプ卒業生がどのような医師になってゆくのか、楽しみです。またプロジェクトに合わせて、同年10月には私自身も医学教育学講座に所属を移し、より教育に軸足を置くことになりました。
その後の展開と未来構想
2024年も25名の医学部1年生が参加。さらにグラウンドゴルフ大会など新たな企画も加わりました。参加学生の一部は海外への関心も高まり、タイ・ベトナム・マレーシアの医療機関訪問にもつながっています(「出る杭プロジェクト」)。さらに、ファシリテーターとして学外の多様な大人たちも参加してくれるようになり、世代や職種を超えた交流の場にもなっています。
もちろんキャンプがゴールではありません。あくまでも「DoGeNaプロジェクト」のプレイベントです。サマーキャンプはいずれその役目を終えます。その時には「DoGeNaプロジェクト」が本格始動する時でしょう。「DoGeNaプロジェクト」は、サマーキャンプを皮切りに、「鳥取全域」そして「アジアを含む世界全域」を学び舎にすることを目指しています。人生の大切な数年を鳥取で過ごす学生たちに、最高の学びと記憶を提供したい――その思いを込めて、今後もプロジェクトを進めていきます。
私自身の所属は保健学科・検査技術科学専攻に変わりましたが、DoGeNaプロジェクトは継続中です。
関わってくださったすべての方へ感謝を込めて。今後ともどうぞ応援よろしくお願いいたします。