鳥取大学大学院工学研究科 化学・生物応用工学専攻

増井研究室(無機材料化学研究室)

Masui Laboratory, Department of Chemistry and Biotechnology, Graduate School of Engineering, Tottori University

研究概要

Ⅰ. 優環境型顔料 

 無機顔料は、セラミックス、ガラス、プラスチック、塗料等の様々な物質の着色用色材として古くから利用されています。 しかしながら、現在使用・製造されている顔料の多くには、カドミウム(Cd)、クロム(Cr)や鉛(Pb)等の人体や環境に対して極めて有害な金属元素が含まれています。 近年、自然環境保護の観点から、これらの有害元素を含む化合物の使用がいっそう厳格に規制されています。実際に多くの国ではこれらの有害元素を含む化合物の使用は法律によって禁止され、 有害元素を含まない代替顔料が強く求められています。そこで当研究室では、有害元素や自然環境を汚染する元素を含まない原料及び合成プロセスを用いて、高性能かつ優環境型の無機顔料の開発を行っています。 また、着色以外の特性(赤外線反射等)を備えた顔料の開発も行っています。下の写真は、これまでに当研究室で開発した顔料の写真です。 

 もっと詳しく知りたい方は増井先生の解説をぜひご覧ください。⇒優環境型酸化物顔料の解説

Ⅱ. 紫外線遮断材

 太陽光に含まれる紫外線は、UVC(波長100~280nm)、UVB(280~320nm)、UVA(320~400nm)の3つに分類されます。 これらの中で、UVBは材料の光劣化をまねき、皮膚にあたるとDNAの損傷、赤くなる日焼け、皮膚ガンや白内障などを発生させます。 また、UVAは壁紙や床、家具などを褐色劣化させ、皮膚に対しては、コラーゲンやエラスチン繊維に作用したり、皮膚の老化を促進させるほか、 UVBの悪影響を増大させることが知られています。紫外線遮断材は、紫外線を吸収するはたらきや、紫外線を散乱させるはたらきによって紫外線から基材や皮膚を守っています。 現在紫外線遮断材として、酸化チタンや酸化亜鉛が用いられています。しかし、酸化チタンと酸化亜鉛は光触媒活性を有するのが問題となっています。 当研究室では、光触媒活性の低い新しい紫外線遮断材の開発を行っています。

Ⅲ. 蛍光体

 蛍光体とは、光や熱、電子線などのエネルギーを光に変換する材料のことです。 無機蛍光体はディスプレイや照明器具など、私たちの生活を支える重要な機能材料の一つです。 また、近年では生体深部を可視化するためのバイオイメージング材料としても注目されており、 生体に安全かつ高い発光強度を示す蛍光体の開発が求められています。 当研究室では、バイオイメージング材料のための蛍光体として、生体に安全な母結晶と、 高い発光強度を示す発光イオンの組み合わせを検討し、材料設計を行っています。

Ⅳ. 環境触媒

 私たちの生活を支えるために利用した化学物質や工業生産などより発生した化学物質が、河川や地下水などに流れ込み、人の健康や生態系に影響を及ぼす可能性があることが問題となっています。この排水中には、有害物質である有機塩素化合物や難分解性の1,4-ジオキサンなどが含まれています。1,4-ジオキサンのように、有害物質の中には効率よく取り除くことが極めて困難なものもあり、新しい排水処理技術の開発が強く求められています。そこで当研究室では、固体触媒による液相酸化分解に着目し、有機塩素化合物や難分解性物質を効率よく酸化分解することができる環境触媒の開発を行っています。