授業の原則10か条とは

 これまで100万部以上刷られた教育界の名著「授業の腕を上げる法則」(向山洋一著)に書かれている原則が「授業の原則10か条」です。この法則を知ることで、授業が見違えるほど変化します。


如何に、授業の原則十か条の冒頭の一文と十か条を掲載しました。

また、この10か条を実践した結果、変化を体感した教師の文章を以下に掲載いたします。

教え方セミナーでは、この原則が常に意識されています。

ぜひ、実際に使ってみてください。驚くほどの変化を感じることが出来るはずです。

授業の腕を上げる法則の冒頭より

教育をするには、技術や方法が必要であり技術や方法は科学的であることが求められる。

 だが、現実の教育はこの逆である。

 「技術」や「方法」もなく教育をしている教師が多く、また、たとえ「技術」や「方法」を使っている場合でも科学的でない場合が多い。

 だから教師の中には授業の上手な人もいれば、授業がへたな人もいるということになる。

 授業がうまい人は、授業の技術や法則を上手に使いこなしている。

 何気ない一つ一つの「指示」「発問」の中にも、原則が貫かれている。原則に支えられた技術や法則を使いこなしている。逆に、授業が下手な人の「指示」「発問」はゴテゴテしていて、原則から大きく外れている。教師が言えば言うほど子供の頭は混乱する。子供はざわつく。それを叱って静かにさせようとする。

 授業の技量とは、技術や方法を使いこなせることなのであるが、技術は方法の比重は同じではない。

 絶対守らなければならない技術や方法もあるし、小さな小さな技術や方法もある。

 大切な技術や方法は、それぞれの考え方に支えられている。

 このような、いくつかの大切な技術や方法を貫いている考え方を原則と呼んでみる。もちろん「原則」は、それ自体が「技術」「方法」と考えられないこともない。どこまでが「原則」で、どこからが「技術・方法」なのか区別がしにくい。いずれ研究が進めばはっきりしてくるだろうが、この本では「原則」と呼んでおく。この「原則」はいくつもあるが、私なりの考えで最も重要なことを10ほど選んでみた。この原則をまず理解していただくことが大切になる。

 以下、「授業の原則10カ条」を簡単に説明する。 

授業の原則10か条

第一条 趣意説明の原則 → 「指示の意味を説明せよ」

 子供が指示の意味を理解しているという事が大切です。
 こういう目的でこれをやっていると分かるように、教師が説明してから活動に移すようにしましょう。
 ポイントは短くスパッという事です。
 例「教室をキレイにします。ゴミを10個拾いなさい。」

第二条 一時一事の原則 → 「一時に一事を指示せよ」
 子供たちに指示を与えるときの基本原則です。
 同じ時に、二つも三つもの指示を与えてはいけません。
 一つの時に一つの事を伝えることを意識するようにしましょう。
 悪い例「教科書開いて、40ページ開いて、③の問題をやる」
 良い例「教科書開く。」開いてから→「40ページ」開いてから→「③の問題やる」と分ける

第三条 簡明の原則 → 「指示・発問は短く限定して述べよ」
 
 指示・発問は短く伝えるようにしましょう。目安は一つにつき15秒程度です。
 ポイントは、輪舞のくっきりとした指示をあたえることです。
 悪い例「跳び箱を飛ぶときは、もっと勢いよく、一生懸命に飛ぶようにすることが大事なんですよ。」
 良い例「踏切台をトンと飛ぶようしなさい」

第四条 全員の原則 → 「指示は全員にせよ」
 組織として、全体に関する情報は、全体に知らせなければなりません。
 教室では、情報の共有がことのほか大切です。
 ポイントは「全員」を貫くという事です。
 悪い例「先生、○○の時間、窓開けてもいいですか?」→「いいですよ」
 良い例「先生、○○の時間、窓開けてもいいですか?」
     →「全員注目。ペンを置いて。○○の時間では、窓を開けて良いこととします。」

第五条 所・時・物の原則 → 「子供を活動させるためには、

                   場所と時間と物を与えよ」
 場所と時間と物を工夫して与えることが、大切です。
 教育活動をするときに教師が当然やっておくべき原則になります。
 例 社会の資料資料読み取り → 5分は時間を取る
   理科の授業 → 理科室で行う、ものを準備する
   図工の授業 → 各種道具、ガラクタ、絵を描かせるなら様々な形の紙を準備する

第六条 細分化の原則 → 「指導内容を細分化せよ」
 指導する内容は、可能な限り分解してみることが重要です。
 教材を細分化して、解釈して、指導につなげることで子供に力をつけることができます。
 例 体育・図工などの実技教科「細分化し、解釈し、イメージ化せよ」
   国語・算数などの主要教科「細分化し、解釈し、発問を考えよ」

第七条 空白禁止の原則 → 「たとえ一人の子供でも

                    空白の時間を作るな」
 学習活動を行う際、早く終わった子が何もしていないという状態を作ってはいけません。
 全員が何かをしている状態を作るようにしましょう。
 コツは「まず全体に、大きな課題を与えよ。然る後に個別に指導せよ。」です。
 例「③の問題をやりなさい」→終わった子どもが出てきたら「終わった人は④に挑戦」

第八条 確認の原則 → 「指導の途中で何度か達成率を確認せよ」
 学習活動を行う時は、都度都度達成状態を確認する必要があります。
 この時、「分かりましたね」「できましたか」という確認ではいけません。
 達成率を確認する方法はいくつかのささいな技術です。
 例「大阪市を探せた人は、指をあてなさい」「全員起立。読めた人は座ります。」

第九条 個別評定の原則 → 「誰がよくて

                  誰が悪いのかを評定せよ」
 指導の際に大切なのは、一人一人を個別に評定することです。
 10点満点などで次々に評定をすることと、「どこがなぜいいのか」を説明することが大切です。
 ポイントは厳しくも、楽しく、一人一人にどうしたらよくなるかを明示してあげることです。
 例 手を挙げた子に対して「A。自分から発表できる人は伸びる!」

第十条 激励の原則 → 「常にはげまし続けよ」
 人間が動く方法は、「やる気」にさせることです。それしか方法はないといってもよいでしょう。
 やる気にさせるために最も大切なことは「はげます」ことです。「はげまし続ける」ことです。
 子供のもつ欠点を「克服していくはげまし」を絶えずつづけることが教師の仕事であり、大切ことです。
 悪い例 忘れ物をした子供へ「昨日言いましたよね。なぜわすれたんですか?」
 良い例 忘れ物をした子供へ「言いにこれたのが偉いぞ!じゃあ、忘れ物をしないためにどうしたらいいかな?」

実録:授業の原則10か条を意識すると授業が激変する

「食物連鎖というのは、食う食われるの関係を指します。
 今まで習ってきたよね。いろんな生き物がつながっているんですよ。わかりますか。
 はい、図を書くから写してね。」

 ある日の授業の一場面。眠たそうにしている生徒が見える。
 それでも変わらずに進める。生徒一人一人がどのような表情が暗いのは分かる。
 でも、どうしてよいかわからない。
 一生懸命教材研究をして、ノートにびっしりまとめた内容を黒板に書いていく。
 生徒はけだるそうに授業を受ける。

 気分を変えて、話し合い活動をさせてみる。
 一部の生徒が話をして、他の生徒はお客さん状態だ。

 学び始める前の私の授業はお世辞にも良い授業とは言えなかった。
 でも、それでもどうしてよいかわからなかった。
 眠たそうにしている生徒を見るのがつらかった。
 周りの先生に相談した。
 「仕方ないよ」「うちの子たちはやる気ないから」「厳しくガツンと言ったほうがいいよ」
 どれも気休め程度の事で、具体的にどうすればよいかわからなかった。
 ガツンと言うのは具体的だが、一時の気休めで生徒との関係が悪くなるだけだと思ったのでやらなかった。
 逆に、そのままにガツンとやった先生は一時はうまくいっていたが、
 だんだんに授業が成立しなくなっていった。生徒から嫌われていった。

 授業を何とかしたくて、様々な教育書を読み、その内容を試してみた。
 いろいろと書いてあることを試した。
 生徒に自由に話し合い、学び合わせることもやってみた。
 しかし、どれもうまくいかなかった。
 一見うまくいっているように見えても、それは生徒が自由にしているだけで、
 決して教科の授業を楽しんでいるわけではなかった。

 そんな中で出会ったのが授業の腕をあげる法則だった。
 一気読みした。明快な原則に胸が躍った。
 次の日から取り入れてみた。明らかに子どもの動きが違う。
 授業の中にメリハリが生まれた。
 これまで眠そうにしていた生徒が一生懸命に授業に取り組むようになった。

 年度の終わり、生徒から次の感想をもらった。

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□いままで授業をしていただきありがとうございました。

先生の授業は新しいスタイルで初めのうちはずっと緊張していました。ですが、ただ席に座って話を聞くという先生メインのものだとぼ~っとしがちですが、そうではなく主体的に取り組まなくてはいけないものだったので、毎回意欲的に授業に励むことが出来ました。

また、個人的に先生の授業が1番生活に役立つというか、新しい学び、驚きがありました。本来勉強というものは、何かを得る喜びを感じそれが、実生活に生きるものでなくてはなくてはならないと考えています。ですので、先生の授業は学ぶことについて考えられるものでした。


□先生と授業できたことで疑問に思ったことを疑問のままにせず解決するということが出来るようになりました。今までは質問をしたりするのが苦手だったけど、疑問を解決することの大切さを知ることが出来ました。

 自由な授業スタイルで、とても楽しくそして他の授業に比べてすぐに理解が出来たのは、先生が要点をまとめて言ってくれていたからです。先生の授業スタイルはとても好きでした!!!

 先生といっしょに授業出来てよかったです。理科はあまり好きじゃないと思っていたいままでの思いを変えてくれたのは、先生と一緒に授業できたからです。楽しく学べる授業をしてくれた先生に感謝!!!

 今までありがとうございました。
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 ただしい原則と、様々な教育技術を学ぶことで、
 子どもたちを熱中させ、楽しい授業ができるようになります。