2025.11.12
2025年11月2日~8日、東北大学と華中科技大学の共同で「日中合同デザインワークショップ」が開催され、中国・武漢市をフィールドに人口減少が進む農村部のデザインを検討しました。
都市デザイン研究室からは窪田亜矢教授・植田啓太助手・堀口耕平の3名が参加しました。WSで得た知見と課題を、研究生の堀口が報告します。
初日、集合写真
武漢の街並み
武漢の夜
市場の様子
武漢の人口は1000万人を超える。日本でいえば東京に匹敵する規模だ。街は活気にあふれ、人や車の数に圧倒された。人々は思い思いの時間を過ごし、自由な空気が流れていた。市場の店に入った際、英語で「中国語はわからない」と何度伝えても、かたくなに中国語で話しかけられた。しかし、それもなぜか心地よく感じられた。結局、言語の壁は確かにあるものの、伝えようとする姿勢さえあれば最終的には互いに理解し合えるのではないだろうか。
日本と中国の都市計画上の違い
茶园村の家屋の様子
日本は人口減少集落をいかに存続させるか、現状の中でいかに暮らしの質を上げていくのかを検討する。一方で、中国ではいくつかの村を一つに集約することで村の存続を図る。半ば強制的に故郷を離れる住民の生活を想像すると、非常に難しく慎重な対応が求められる。しかし、両国に共通するのは、人々が集まって暮らすこと。日本でも中国でも、その場所だから、そこで暮らす人々だからこその集落の在り方を丁寧に調査し、得られた知見を具体的な"かたち"として現場に還していきたい。
ワークショップを通して 「Capturing Silence」
発表の様子
日中の学生で共同し、3つのグループに分かれて都市計画の提案プロジェクトに取り組んだ。グループは公共政策(public policy)、都市計画(urban plannning)、建築(architecture)を学ぶ学生が一つとなり、スケールを横断した総合的な提案を目指した。私たちのグループは湖北省武漢市江夏区に位置する”茶园村”を対象地とし、4つの村を一つに統合する計画を提案した。現存する約100軒の家屋(うち約25軒は空き家)に対し、村の統合に必要な約200戸の新規住宅を見積り、計画を練った。はじめは言語の壁を感じ、打ち解けるのに時間がかかったが、一つの成果物に向けて議論を重ねていくうちに、「既在村民を"exist"、移住してくる村民を"moving"、 都市からの移住者を"new comer"」とするなど、専門分野を超えた共通言語が自然と形成されていった。 分析の結果、村の構造が”main street”と”sub street”から構成されており、村民の生活の中心は”sub street”を中心に営まれていることを発見した。これを軸に以下のような提案を行った。
public policy : 田舎の美しい風景を守りつつ「半農半漁の暮らし」を都市生活者への余暇として提案
Detail solutions
urban planning : ”exist”と”moving”、”new comer”の居住地を区分し、”new sub street”と”new main street”を計画
森を一部残すことで地区計画を実施
District concept
Current situation of the village
District plan
Village Layout
architecture : 集落の建築要素を抽出し、urban planningと統合するため、道路の類型化に基づきsize,material,activityを設計
Sectional drawing 1
Sectional drawing 2
Sectional drawing 3
課題を通して感じたのは、スケールを横断した提案の難しさだった。1/1000,1/200,1/50といった異なる縮尺での検討とそれらの統合は、スケールの行き来が必要不可欠だ。今後は広域の都市計画から詳細設計までを統合できるようになりたい。
これから
一週間という短い時間で、日中の学生が協力し一つの提案を完成させることは想像以上に難しく、とても刺激的な時間だった。期間中は実際に中国の学生と同じような生活を送り、多くの中国の文化に触れることができた。日本と同様に中国の学生の中にも日付を超えるまで課題に向き合う者がいたり、夕方になると自由に帰る者がいたり様々だった。最終日にはグループのメンバーと一緒にお酒を飲んだ。やはり、お酒の席で話す内容がないことは日本と同じみたいだ。私たちを助け一緒に課題に向き合ってくれた中国の学生には感謝を伝えたい(中国の友人によると中国では親しい間柄では「ありがとう」を言わないらしい、、)。また、ご指導いただいた先生方、ともに議論を重ねた学生の皆さんにも深く感謝いたします。この経験を糧に、今後は中国の学生に遅れをとらないよう励むとともに、いつか諸先生方と同じ舞台で都市や集落の抱える課題に向き合っていけるようさらに精進する。
最終講評後、集合写真
堀口 耕平