研究内容
Reseach
Reseach
超音波とは,ヒトの耳では聞こえないほど周波数の高い(20,000 Hz 以上)音で,出力が小さければ生体に無害であるため,診断目的に使用でき,医用技術にとって非常に有用な物理現象の1つです.
(吉信)・荒川研究室では,超音波の医学への応用を目ざした研究を行っています.
従来の超音波診断装置は、生体内に超音波を送信し反射波を解析することにより器官や組織の画像を得ることができますが、形態的かつ定性的な情報しか得ることができません。当研究室では、生体の粘弾性特性に着目し、圧力変化に対する歪みの応答を超音波計測することにより、弾性率(硬さ)や粘性率(粘っこさ)という定量値を計測する研究に取り組んでいます。
循環器系疾患の主因である動脈硬化症の従来の診断には、X線や超音波を利用した手法が用いられてきました。しかし、これら従来法は、侵襲的である、広い範囲の平均値しか得られない、形態情報しか得られない、早期診断には適用できないなどといった問題点があります。動脈硬化症では、進行に応じて動脈壁の硬さが変化します。このため、超音波を用いて血管壁の粘弾性率を計測することにより、動脈硬化症の進行状況や、投薬や生活習慣の改善による治療状況の評価を目指して、新しい超音波計測法の研究を進めています。
血圧計測が可能な超音波プローブ(開発品)(左)と圧力―歪み特性およびBモード断層像(右)
血液性状の評価は,血液流動性測定装置(MC-FAN)を用いた方法や血液粘度の計測により行われていますが,いずれも採血が伴い侵襲的です.また,超音波診断装置による超音波断層像により,赤血球集合の亢進を「もやもやエコー」と呼ばれる輝度の上昇として観察できますが,定性的です.当研究室では超音波後方散乱係数の計測による赤血球集合体サイズの推定法に関する研究に取り組んでます.ヒト手背静脈に対して,本研究の手法を適用した結果,駆血しない場合には8 µm程度,駆血し低ずり速度状態とした場合には12-18 µmと大きなサイズに推定されました.このことから,血液性状を非侵襲的に調べることが可能です.糖尿病は血液性状と関連が深く,進行すると網膜症,腎症,神経障害などの合併症を引き起こすことから,これらの合併症に対する血液マーカーになることを目指して,新しい超音波計測法の研究を進めています.
硬膜外麻酔は,手術の際に最も効果的な鎮痛方法です.穿刺位置の確認のために医用超音波が用いられることがありますが,硬膜外麻酔の穿刺位置である胸椎間隙は非常に狭く,その特定が難しいという問題があります.
通常の超音波断層像(Bモード像)は,生体組織からの散乱波を仮定した反射信号の遅延加算を行って形成されます.しかし,骨は周囲の組織に比べ硬く,入射超音波がその表面で鏡面反射します.このため,正確な遅延加算が行われず,骨の描出が不鮮明になるという問題があります.また,骨の浅部に存在する筋膜での散乱信号の振幅が,骨からの反射信号の振幅よりも大きく.さらに,骨の端部は平坦ではなく曲率を有するため,間隙の描出が難しいです.
当研究室では,硬膜外麻酔の穿刺位置特定のための補助を目指した超音波胸椎描出法に関する研究を行ってきました.胸椎,特にその間隙の鮮鋭な描出を目指し,散乱特性の受信素子データにおける「骨における反射特性」と「筋組織における散乱特性」の違いに着目し,骨の描出の強調を行いました.その結果,骨表面についてはある程度描出できましたが,胸椎間隙は依然として不鮮明なため,その鮮鋭化に向けてさらなる研究を進めているところです.
心臓壁や動脈壁は自らの収縮力や血圧変化によって自然発生的に変形が生じているため,それら変形を計測することにより伸縮特性や粘弾性特性を評価することができます.しかし,安静状態の骨格筋や肝臓などの静止器官は,そのままでは変形を生じないため,外力を加える必要があります.この際,体表を押すことで外力を加えることも可能ですが,体深部に外力を加えることが難しいなどの問題があります.
本研究室では,超音波を対象物に照射した際に発生する音響放射圧という微弱な力を用いて対象器官を変形させ,その変形を超音波計測することにより静止器官の粘弾性特性を評価するための手法に関する研究を行っています.
作成中
作成中