論文内容抜粋
Hashimoto, N., Saito, Y., Maki, M., Homma, K. (2019) Simulation of reflectance and vegetation indices for unmanned aerial vehicle (UAV) monitoring of paddy fields. Remote Sensing 11, 2119.
山本修平・本間香貴・橋本直之・牧雅康 (2019) UAVリモートセンシングに基づく農家圃場におけるダイズ湿害の評価.2017年仙台沿岸部における観測例.日作紀88, 48-49.
Song, Y., Nakajima, T., Xu, D., Homma, K., Kokubun, M. (2017) Genotypic variation in salinity tolerance and its association with nodulation and nitrogen uptake in soybean. Plant Prod. Sci. 20, 490-498.
Hashimoto, N, Saito, Y, Maki, M, Homma, K (2019)
Simulation of reflectance and vegetation indices for unmanned aerial vehicle (UAV) monitoring of paddy fields. Remote Sensing 11,2119.
図 様々な日射条件に対する植生指数のシミュレーション結果
この論文は近年普及が進んでいるUAV(いわゆるドローン)にマルチスペクトルカメラを搭載し,作物群落を観測した場合の日射環境の影響を評価したものです.
UAV による空撮は様々な日射条件下で行うことが可能であり,群落反射率等の値は日射条件に影響されて変動するものと考えられ,生育状態を誤って判断することに繋がる可能性があります.
そこで日射条件の違いによる群落反射率等の変動を評価するために,水稲を対象として,放射伝達モデルの1つであるFLiES を用いて様々な群落構造や日射条件における群落反射率等をシミュレーションしました.
シミュレーションの結果,太陽天頂角の違いは入射光対散乱光割合が1 (散乱光のみ) においては群落反射率の値に影響しませんが,散乱光割合が低くなるにつれ影響が大きくなりました. 入射光対散乱光割合が0 (直達光のみ) においては,太陽天頂角が0,25,85度の場合に変動が大きく,45と65度では比較的変動は小さかったです.
この群落反射率の変動は植生指数の変動にも繋がることが示されました (図).
この変動は NDVI において最も小さかったのですが,NDVI は LAI が小さい段階において値が飽和してしまうという問題があります.一方,変動は SR において最も大きくなりましたが,LAI が増加しても値は飽和しませんでした.EVI2 は NDVI と SR の中間的な傾向を示しました. これらのシミュレーション結果は,仙台市沿岸部に位置する実際の農家圃場において実測した結果とよく一致したことから,妥当であると考えられました.
以上の結果から,散乱光割合が高い (1に近い) 時,あるいは散乱光割合が低い (0に近い) 場合には太陽天頂角が45 ~ 65度の時間帯が UAV によるモニタリングにとって望ましい観測条件であることが示唆されますた. また,日射条件に依らず UAV の観測自由度を活かすという点では比較的変動の小さい EVI2 を使用することが適切であると考えられました.
山本修平・本間香貴・橋本直之・牧雅康 (2019)
UAVリモートセンシングに基づく農家圃場におけるダイズ湿害の評価.2017年仙台沿岸部における観測例.日作紀88, 48-49.
図 9月5日に撮影したマルチスペクトル画像に基づくGNDVI 値と9月5日のSPAD値(a),および収量(b)との関係.
日本の大豆栽培では湿害が大きな制限要因となっています.
本研究では農家圃場で実態調査を行うとともに,UAV(Unmanned Aerial Vehicle,通称ドローン) を 用いてダイズ農家圃場を観測し,湿害評価を試みました.
2017年は7月末から8月末にかけて天候不順となり,土壌体積含水率の高い地点では葉色(SPAD 値)が低下し,収量が低下する湿害が観察されました.UAV によるマルチスペク トル画像を解析したところ,GNDVI(Green Normalized Difference Vegetation Index)を説明変数とすることにより,SPAD 値および収量に対して有意な回帰式が得られました(図).
以上のことよりUAV を用いたリモートセンシングにより湿害の把握が可能と考えられましたが,量的な評価のためには閾値の設定や,経時的な推移に基づく指標化が必要と考えられました.
Song, Y., Nakajima, T., Xu, D., Homma, K., Kokubun, M. (2017)
Genotypic variation in salinity tolerance and its association with nodulation and nitrogen uptake in soybean.
Plant Prod. Sci. 20, 490-498.
図 乾物重と窒素含量の関係.(a)コントロール,(b)塩ストレス下.
塩害環境下での作物栽培は世界的な課題となっている.
そこでダイズのミニ・コアコレクション85品種・系統の塩ストレス耐性が、塩ストレス下における窒素吸収量,根粒形成能,窒素利用効率(PNUE)およびSPAD値に及ぼす影響を検討しました.
感受性および中間品種と比較して塩ストレス耐性品種は,塩ストレス条件下で窒素含量を比較的高く維持し,物質生産の低下を抑制することが示されました(図).