<事前調査>
○SACMEQ加盟国(14カ国)で行われたテスト
SACMEQとは
Southern Africa Consortium for Monitoring Educational Quality
教育の質評価のための南部アフリカ連合
SACMEQ IVの結果:
ナミビア
14か国中8位
平均(Mean)と の差:19.4
ザンビア
14か国中14位
平均(Mean)
○PISA-Dにおける数学の結果のスコア別階級の内訳
PISA-D→開発途上国における生徒の国際的な学習到達度調査
これを見るとザンビアの結果は特に低く、通常のPISAテストでは測れないレベル1a未満のレベル1b, レベル1c, below 1cの生徒が90%を占めています。
※レベル1a→関係のある情報がすべて存在し、日常のなじみのある文脈を含む、明確に定義されている質問に答えられる。特定の状況において、情報を認識して、指示された方法を実行することができる。
レベル1b→関係のある情報が表やグラフなどで明確に示され、簡単に理解できる文脈を含み、わかりやすい短い文章で定義された質問に答えられる。はっきりとした所定の指示に従うことができる。
レベル1c→すべての関係のある情報が写真や表などのシンプルでなじみのある形式で明確に示され、簡単に理解できる文脈を含み、わかりやすいとても短い文章で定義された質問に答えられる。少ないステップや方法を示した指示に従うことができる。
<私たちが行った計算能力調査>
私達は事前調査を受けて、実際に自分たちで開発途上国の子どもたちの基本的計算能力を調べました。
これはザンビア、ナミビア、ケニアの小学校で、主に小学3年生から小学5年生を中心に行った計算能力調査の結果です。問題は繰り上がり繰り下がり含む足し算引き算各10問ずつを5分間で解いてもらうものになっています。
日本の正答率は約96%なのに対し、3カ国全体の平均正答率は約61%となっており、日本の約3分の2となっています。問題別の正答率を見てみると、足し算では76+69がザンビアでの正答率が約31%、ナミビアやケニアでも40%代となっており、引き算では46-8、60-6、91-77の3問が40%を下回っています。このことから、開発途上国の小学生は繰り上がり、繰り下がりのある計算を特に苦手としていることがわかりました。
Kablonga Primary School (Zambia)
Prince Takamado Primary School (Zambia)
採点の様子
小学4年生の答案(ザンビア)
多くの生徒がこのように棒を書いて数えていて、最も多い解答例となっている。
<私たちが実施した計算カード検証>
開発途上国では紙は貴重で、1度で紙を大量に消費してしまう計算ドリルのような教材は不向きだと考えました。そこで、何度でも何年でも繰り返し使用できる計算カードに注目しました。
これらはナミビアの小学生4年生に足し算の計算カードを1ヶ月間使用してもらい、使用前と使用後に実施したテストの結果をグラフに表したものです。95%の生徒に改善が見られ、事前テストに比べて、事後テストでは誤答数はほぼ変わらず、正答数は76%も上昇し、計算スピードは平均で約1.7倍向上しました。このことから、計算カードは開発途上国の小学生にも有効であることが分かりました。
こちらは引き算の計算カード検証の結果です。足し算の計算カードでは上手く行ったものの、引き算では、事前テストと事後テストで正答数にあまり差はなく、ほとんど向上が見られませんでした。
その理由として、
・引き算の計算カードは青年海外協力隊の方ではなく現地の先生の指導のもと行ったので適切に使用されなかった。
・数の概念を理解しておらず、計算カードによる暗記のみでは対応できなかった。
などがあげられます。
○数の概念とは?
開発途上国の小学生の回答
私達は図のように、57という数は10が5個と1が7個、もしくは5が1個と1が2個集まった数だというイメージを持つことができます。ですが、開発途上国の子どもたちには57は1が57個集まった数という認識しかできず、数を分解していく事ができていません。
写真のように、問題の数が大きくなると、1ずつ数えると時間がかかりますし、数え間違いによる誤答も発生してしまいます。
<今後の課題>
・既存の計算カードでは、数の概念の形成が難しいため、イラストを使用し、数のまとまりを意識させることができるような計算カードを考案する。
(イメージ⬇️)
また、考案したイラスト付き計算カードを量産するため、計算カード会社との連携を考えています。