日本企業の現金保有

最終更新日: 2024/4/19

日本企業の持つ現金

日本銀行『資金循環表』によると、民間非金融法人企業(金融機関を除く事業会社)の保有現預金は336兆円になります。この数値は法人企業統計調査の集計結果とも近いものです。

法人企業統計調査の集計データはe-statで公表されています。それを見て、状況を確認しましょう。

日本企業の現金保有総額

未公開企業も含めた現金保有は増加傾向にあります。ただし名目値であることは割り引く必要があります。

データの出所は法人企業統計調査です。e-statで公開されている情報から確認できます。

しかし公表値自体は名目値です。


現金比率

企業が成長すればその規模が大きくなるのはあたりまえに思えます。そのため、現金保有額ではなく、総資産に占める比率(現金比率)で考える方が実態に即しているかもしれません。

直近では現金比率が増加傾向にありますが、1980年代以前の水準には及びません。



法人企業統計調査はすべての企業に限定してます。より規模の大きな上場会社に限定してみましょう。

このうち上場企業(非金融業・連結)の保有現金合計は220兆円で、そのうち70兆円近くがゆうちょ銀行を子会社に持つ日本郵政が保有しています。

けっかとして、金融機関と日本郵政も除外した場合の保有現金総額は152兆円です。

なお、一部報道(たとえば)では600兆円などとされることがありますが、これは金融業も含めたものです。上場金融業のみで478兆円の現金を持ちます。

なお、上場企業の限定した上での、非金融上場企業の現金保有ランキングについてはこのnote記事 をご確認ください。


企業の現金保有は様々な要因によって決まる

すべての企業が現金保有を同じように変動させているわけではありません。様々な要因によりことなるように変化させます。同志社大学中岡先生のレビュー論文などが参考になります。

そうであれば、企業ごとに異なる理由で現金保有を変化させます。そもそも日本国内の企業数は、株式会社に限定しても261万社存在します。

日本の企業数

個人事業などを含めると確認することが困難です。

国税庁『令和3年度分 会社標本調査』によると、株式会社の合計は261万社。それ以外の形態もふくめた法人数は284万社です。


説明できない現金保有は?

企業の現金保有の増加分を、(1)先行研究などにより説明できる部分と(2)それ以外に分けました。その結果おおよそ半分の増加分は先行研究によって説明できることが確認されました(JxivのDP)。

無形資産と現金保有

経済全体での現金保有の現金としては、さまざまな要因が考えられます。その一つとして、経済を構成している企業の特徴が変化していることが挙げられます。

いわゆるテック系企業は現金比率が高い傾向になります。

左図は資本金1000万円未満に限定したときのソフトウェア資産比率(横軸)と現金比率(縦軸)の関係を表しています。

有形固定資産比率と現金保有

有形固定資産比率も現金比率と負の相関にあることが知られています。両者の関係を2000年と2019年の2時点で比較してみましょう。同じ有形固定資産比率でも2019年の方が現金比率が高いことが分かります。

なおここでの数値は産業レベルでの集計データを元にしています。

このことから、企業の現金保有はさまざまな要因できまること、またその関係性は機関によって変化していることが示唆されます。