思えば昭和11年、横浜フォード工場の好意により、1936年式フオードセダン5ドアーの新車提供を頂いたので、部活恒例の年末年始の伊勢参りを済ませ、真新しい木札の御守りを頂戴して帰路に着き、無事横浜市内を過ぎて、京浜国道から子安の細道に入り、午前1時30分頃(正に丑満どき)無人踏切りを通過する時に、先頭の部車が一時停止を怠り、徐行で通過した直ぐに機関車が進んで来て、後車がその直前を渡りきりました。それに続いてフォード車が何と踏切りに突入したのです、車窓から見えた限りりでは、機関車の前面3メートル位の距離しかなかったのでした、機関車は車が渡った直後、轟昔をたててすれ違い通過して行きましたが、踏切りを渡り切った後、お互いに顔を見台わせ暫くは震えが止まらない有様でした。
後で伊勢神宮の御札を取り出した見たところ、不思議にも新品の木札が二つに刃物で切ったように割れていまして、部員一同だれも神仏の信仰を持っていなかったのにと、改めてその力が感じられ、命の尊さと神仏のご加護を思いました。
それ以来、無人踏切りでは、通過する気配の有無に拘らず、一時停止、左右確認を厳守しますと神仏に誓いました。今年、87才、いまだにこの事は守って、家族に笑われる事もありますが、信念で違反は致しておりません。永遠の誓いですから。