追憶 内燃機関研究一筋の真ちゃん
渡辺真一さんは、「真ちゃん」となれなれしい呼び方で失礼しますが、初対面の時は、早稲田大学の第一高等学院の二年生で、丸帽を目深く被った紅顔の美少年でした。時に私は専門部の政治経済科で、角帽を被り、どう見ても私の方が年上の先輩に見えました。
自動車部では入部以来同じ席で、私は真ちゃんと云い続けていました。しかし、渡辺さんは既に免許を取っていましたし、早稲田に入ったのも一年先ですから、当然私の先輩でありました。
私が免許証の交付を受げた時には、大先輩の吉村二郎さんと真ちゃんから、励まされ俺達の云う通りにやってみろ、何て云ったって天下の東京警視庁の運転免許だ、お前は新米だから、受付に行ったならぱ、新しい学生帽を警察官の顔の真正面に向け、はっきりした音声で応答する事だと云われました。
所定の手続きを終え緊張で喉もからから、想像とは大分違った状態で部室に戻り免許証を見せたら、「何だ、この免許証の日付が違っているぞ」と云われた。日付は私が直したのじゃない、天下の警視庁保安係の立派な警察官が認めて捺印を貰ったものである。
大切にしている内に70年がたってしまった。今となっては、時効かどうかも判らないが何時も気にはしていました。
真ちゃんにはその後も色々とお世話になった。だから、今では大先輩と思っている。
大先輩としての渡辺真一さんの遺徳を偲び、親友としてのご好誼に感謝を捧げ、自動車部創世期を偲ぶ思いでの序文に代えさせて頂きます。