平成21年12月15日
「21の若手の会による共同声明 ―知の継承と未来への投資―」
宇宙ライフサイエンス若手の会
応用生態工学会若手の会有志
ゲノム微生物学会若手の会有志
静岡生命科学若手フォーラム
触媒学会若手会
植物生理若手の会
植物病理学研究者若手有志
森林学若手の会有志
生化学若い研究者の会
生態学会若手有志
生物物理若手の会有志
生命情報科学若手の会
天文天体物理学若手の会有志88名
日本光合成学会若手の会有志
日本生理学会若手の会
日本草地学会若手の会
日本地球化学若手シンポジウム事務局有志
日本農業気象学会若手研究者の会
日本陸水学会若手有志
脳科学若手の会有志
有機固体若手の会
私たち若手研究者から構成される学術団体(以下,若手の会)は,各学問領 域の一層の発展のため,若手研究者間での研究成果の共有などの活動を行っている団体です.このたびの行政刷新会議の若手研究者支援に関する審議結果を受 け,私たちは以下の通り声明を発表いたします.なお,通常それぞれの若手の会は独立に,かつ,あくまでも学術的な目的のために活動しており,多くの若手の 会がこのような問題に危機感を持ち協力して声明を出すのは,私たちが知る限り初めてのことであることを付言いたします.
まず,限られた予算に対して事業の効率化を行うことは当然のことであり, 私たちも関係各位の尽力に深く敬意を表するものです.私たち若手研究者自身も,限られた研究費を無駄に用いることなくなるべく多くの質の高い研究成果をあ げ,かつ,そこから生まれる文化的・産業的価値が広く国民に還元されるべく,努めていかなければなりません.
一方で研究者にとって若い時期は,柔軟な発想をもとに十分に研究に集中することができる極めて重要な時期と言われています.例えばノーベル賞の対象となった研究の多くは,科学研究費補助金等の種目において「若手」とされる20代後半から40歳 頃の成果を評価されたものです(※).したがって,我が国から革新的な研究成果を生み出すためには,若手研究者が失敗を恐れずに困難な研究課題に挑戦する ことができるよう戦略的な支援を行うことが必要であると考えられます.なかでも,特別研究員制度や科学研究費補助金(若手研究)に類する,若手研究者が独 自の自由な発想に基づいて研究を遂行することを特別に支援する制度などは強くその充実が望まれるものです.
すでに多くの指摘があるように,特に基礎的な研究の場合,その成果はすぐ に目に見える形では得られにくいものです.しかしながら,それらの研究を支援し,若手研究者を育成することは,先人が積み上げてきた「知」を継承するのみ ならず,我が国の将来の科学技術力の基礎を築くことに繋がるものです.我が国や人類が将来直面するであろう様々な困難を乗り越えて持続的な発展を遂げるた めには,基礎研究を含めた科学技術とそれを伝えていく研究者を継続的に支援・育成することが強く望まれます.
行政刷新会議の第3ワー キンググループでは,若手研究者支援の制度に関連し多くの疑問点が提起されました.上で述べた若手研究者支援の重要性を考えたとき,単純な予算の削減がそ れらの疑問点に対する優れた解決方法であるかどうか,私たちは強く疑問を抱いています.また今回の結論が私たちの世代だけでなく,未来の研究者となるさら に次の世代の失望に繋がってしまうことを危惧しております.博士号取得者の活用法から我が国の将来の科学技術のあり方までより時間をかけて議論を行った上 で,若手研究者支援の枠組み全体に関しての予算措置および再設計がなされることを要望いたします.
※ 平成19年度 科学技術白書による