招待講演者について

南澤 究 先生(東北大学大学院生命科学研究科教授)

『根粒菌と宿主の攻めぎ合いと窒素循環』

略歴

1982年 東京大学大学院農学系研究科農芸化学専門課程修士課程修了

1986年 農学博士号取得(東京大学)「優良ダイズ根粒菌に関する研究」

1983年− 茨城大学農学部

1996年− 東北大学遺伝生態研究センター

2001年− 現在 東北大学大学院生命科学研究科

研究歴

1)根粒菌のポストゲノム研究:宿主植物との共生時には、根粒菌ゲノム上の共生アイランド上の遺伝子全体が高発現していることを明らかにした。Bradyrhizobium属ダイズ根粒菌 のゲノムのコアと可変的なゲノム領域のあることを発見した。共生不和合性が根粒菌エフェクターとダイズの耐病性Rタンパク質で起ることを証明し、現在その分子メカニズムと根粒菌進化の研究に熱中。

2)窒素固定エンドファイトやメタン酸化窒素固定に関する研究:イネやソルガムのイネ科植物で機能している窒素固定エンドファイトをフィールドオミックス解析で同定し、イネ根のメタン酸化窒素固定が低窒素条件でイネ共生遺伝子を通じて機能することを発見した。細菌の窒素固定能をもっと圃場で活性化できないかと考えている。

3)マメ科植物根圏における温室効果ガスN2Oの発生機構の解明とその削減:根粒根圏における生物コミュニテイーによるN2O代謝を解明し、根粒菌によるN2O削減のポテンシャルを見いだし、 国内外から反響があった。現在実用化に熱中。

岩野 智 先生(理化学研究所 脳神経科学研究センター 細胞機能探索技術研究チーム 研究員 )

in vivo 生物発光イメージングを革新する新技術 AkaBLI (仮タイトル) 』

略歴

2011年 電気通信大学大学院 電気通信学研究科 修士課程修了

2012年 米国カリフォルニア州立大学バークレイ校に短期留学

2013年 理化学研究所 脳科学総合研究センター (研修生)

2014年 電気通信大学大学院 情報理工学研究科 博士課程修了 学位:博士(理学)

2014年- 理化学研究所 脳科学総合研究センター 細胞機能探索技術開発チーム 研究員

2015年- 同 基礎科学特別研究員

2018年- 同 脳神経科学研究センター 細胞機能探索技術研究チーム 研究員


研究歴

私は学生時代から一貫して生物発光に関わる技術開発を行っています.生物発光は発光基質が酵素によって酸化されることで,発光します.生物発光は生命現象の可視化ツールとして,生命科学分野で汎用されていますが,様々に課題があります.学部生から学位取得までは,電気通信大学 丹羽治樹教授,牧昌次郎助教の基で有機化学を基にして,ホタルの発光基質の類縁体合成(ちょろっと)と発光活性評価(みっちり)を行っていました.生物発光は基質と酵素による発光反応であるため,基質だけの改良では限界があり,酵素もいじくりたいなと考えていました.そこで, 学位取得後は,理研の宮脇敦史先生の基で,1から分子生物学の技術を学んで,遺伝子,大腸菌,哺乳細胞,マウスなどを扱えるようになりました.4年かけてようやく,動物個体の非侵襲イメージングで強力な力を発揮する新技術AkaBLIを報告できたので,これについて紹介させていただきます.Aka は電通大で開発に携わった人工基質 AkaLumine と理研で開発した人工酵素 Akaluc の組合せのことで,BLI は Bioluminescence imaging の略称です.4年かかりましたが,学生の時にぼやっと思っていたこと(基質も酵素もイメージング技術開発も全部やる)はある程度できたかなと思っています.