3D PRINTING

この記事執筆時、2019年の暮れにおいて、「3Dプリンタ」という言葉を聞いたことが無い人は殆どいないだろう。3Dプリンタとは其の名の通り、三次元(3D)の物体を造形(プリント)するための装置である。2010年あたりから家庭用機がリリースされ始め、当時はRapid Prototypingや、Desktop Fabrication、さらにはものづくり革命などと大きくもてはやされていた。しかし当時の家庭用3Dプリンタはお世辞にもすぐさまものづくりに革命をもたらせるものでは到底なく、表面はボコボコ、まともに動かすにも装置自体の改造や調整が必須で3Dプリンターを使うことそのものが目的になっていた雰囲気があった。筆者も当時の3Dプリンタブームについては懐疑的で、使えたとしてキャノンのグリップの造形ぐらいで、メカは切削と考えていたのであった。

しかし、今、その認識は完全に過去のものとなった。

アマゾンで3万円以下で手に入るプリンタを30分で組み立て、10分で調整、フィラメントを装填すれば誰でも失敗なしにプリントできる。造形品質は格段に向上し、ラフな大物はもちろん、小型精密部品、さらには圧縮空気、高圧水をハンドリングできる耐圧プリントまでが可能になった。そしてモデリングのための3D-CAD、CAMは無償で手に入り、世界中のユーザーがアップロードするチュートリアルをググればトラブルは即解消する。

この数年で時代は完全に変わったのだ。当時は物好きのおもちゃ程度としか思っていなかった3Dプリンタとそれを取り巻く環境は数年のうちに劇的な変化を遂げ、万人のものづくりに革命をもたらす魔法の機械となった。

■TECHNIQUES

ありふれた3Dプリンタの用法を、巴波重工ならではの視点で解説していく。

2019/11/01

昨今の3Dプリンティングの潮流から、基本的な方式。その中でも最も一般的かつ使いやすいFDM方式に焦点を当て、使い方の流れを具体的に解説する。

2019/12/05

スライサーの設定を適切にハッキングすることで、数万円のFDM式3Dプリンターで自由自在に耐圧部品を造形するという革命を起こす。

■WORKS

耐圧3Dプリントを活用し、流体機械を3Dプリンタで作っていく試み。

2020/03/01

耐圧3Dプリント技術を応用し、自分専用にカスタムした仕様で普段遣いできる水流式真空ポンプ、アスピレータを3Dプリンタで自作する。

完成したアスピレータの性能は素晴らしく、絶対圧で0.06気圧までの減圧が可能だ。

2020/02/15

長年の構想であった真空引き可能なミキサーを3Dプリンタを用いて完成させた。

真空環境下でのミキシングは酸化フリー、発泡フリー。今までの常識を覆す結果を得ることが出来る。特にバナナと牛乳で作る真空バナナオレは驚くべき濃密さで、今までの常識を覆すものであった。

構想から実現まで1日。3Dプリントのスピード感はすごい。

2019/03/15

携行可能&使用後は廃棄可能な超小型空冷式ビアサーバーを3Dプリントで構築した。市販の1.5Lペットボトルをケグとし、キャップに取り付け小型レギュレータをつなぐだけの簡単接続。ホームブルーイベントで大活躍した見事な実用品。

1.5Lという容量は少人数のパーティに最適で、使用後にボトルをパージできるのも本当にありがたい。

2020/09/10

3Dプリントしたアスピレータを応用し、超音波洗浄機の真の洗浄能力を引き出す減圧脱気機能を付与した。

適切な脱気により超音波の減衰は抑制され、その投入エネルギーを余すことなくキャビテーション生成につぎ込むことができる。

2020/05/31

6年の沈黙を破り、3Dプリンタの技術をフル活用し製作した、巴波重工の完全復活を象徴するAM新時代のエグゾーストキャノン。

耐圧3Dプリント技術や、樹脂部品に対して引張応力を生じさせない設計を適用することで、一般的なFDM式3Dプリンターで十分な強度と性能、そして製作性を有するエグゾーストキャノンを構築することができた。

2020/09/11

光造形3Dプリンタでディンプルキーを複製する実験。

得られた教訓は「鍵の外観は絶対に公開するな」、である。