日本語一般向け文書

経済学研究一般

プラットフォーム競争

通信政策関連

放送政策関係

  • 兵庫県立大学VFM研究会2012年度報告書

    • 本 年度は近年の放送に関する経済学研究のサーベイを行い、消費者にとって NHK の放送の価値を高めるために有益な知見をもたらすであろう方法について検討を行った。サーベイの結果、近年の経済学研究の文脈から、チャネル・番組編成の あり方について検討する事のできる混合寡占の理論、及び放送局間の競争が編成に及ぼす影響についての研究、並びに放送される内容と消費者行動の関係につい ての研究に焦点を絞り,近年の研究動向について要約を行う。以下、上記 3 分野毎の簡潔な概要を記した後、各分野毎のサーベイ結果について記す。

  • 兵庫県立大学VFM研究会2013年度報告書("Bundling information goods under "Break-even" price"の元となった報告書)

    • NHK の世論調査によって得られた支払い意志額の表明区間を区間回帰モデルによって推定し、 得られた消費者の放送番組に対する支払い意志額に基づき、衛星のみの単独契約や、チャネル・ジャンル毎の契約が可能となった反実仮想状況における消費者の 受信契約行動について分析を行った。受信料に変化が無い場合、 衛星単体での契約が可能となったとしてもその契約を行おうとする者はいないが、チャネル毎の契約やジャンル毎の契約が可能となった場合には、 契約数を拡大する効果があることが明らかになった。また、契約形態の多様化に伴う契約数の増加を利用し、収入一定のまま料金を引き下げた場合、全チャネ ル・全ジャンルの抱き合わせ契約が需要を大きく拡大し、社会余剰を改善する効果を持つことが明らかになった。

  • 兵庫県立大学VFM研究会2014年度報告書

    • 本 年度は第一に衛星放送の導入による NHK の視聴機会の拡大が民放視聴時間をクラウドアウトするのではないかとの懸念について実証的に分析したところ、 NHK の衛星放送を視聴している人は NHK の衛星放送を視聴していない人よりも民放視聴時間が短いが、この差は NHK の番組が好きな人が NHK の衛星放送を見ている選抜効果によるもので、現在 NHK の衛星放送を見ていない人が衛星放送を見られるようになったとしても民放視聴時間は減少しないことが明らかになった。 第二に、今後のインターネット配信のあり方について、排除可能公共財の理論のサーベイを通じて考察を行った。排除可能公共財の理論によれば、最善の配分は 受信契約の有無に関わらずインターネット配信を利用可能にすることである。しかし、非対称情報下で実行可能な次善の配分では、受信契約者のみにインター ネット配信利用を制限する事で消費者が支払意志額を過少申告する誘因を減らし、財の供給量を増やす事で厚生を改善しうる。 ところが、 公共財の供給規模に上限が設定されている場合、メカニズムの参加者の数が増加するにつれ過少申告の誘因は低下し、十分に大きな参加者の下では排除を行わな い方が高い余剰が得られる事が示されている。 また、 インターネット配信では比較的広範な支払意志額の分布の下で、番組の抱き合わせがより高い余剰をもたらすこと、 排除可能な公共財であるインターネット配信と公共財それぞれに契約を設けるよりも抱き合わせ契約による余剰の方が大きいことが示されている。 また、市場における私的財の供給同様に、公共財の最適供給メカニズムにおいても、需要の相関が強すぎなければ抱き合わせが余剰を改善し、 混合抱き合わせは抱き合わせよりも常に好ましい。 インターネット配信の最適メカニズムはメカニズム参加者数と支払い意志額の分布に依存して定めることができ、 参加者の数が排除の誘因を無視できるほど十分に大きいか、 複数の財のばら売りがより高い余剰をもたらすほど支払意志額の分布の相関が十分に強いかは今後の実証的な課題である。

  • インターネット活用業務 審査・評価委員会でのプレゼン「インターネット活用業務のメカニズムデザイン

プライバシーと競争政策

  • ビッグデータと市場の効率性と公平性 (Slide)

    • 企 業が消費者個々人を識別し、個別に価格を設定出来るようになることで何が起こるであろうか。供給者が独占である市場では、企業は消費者余剰を利潤に移転す ることができ、企業は利潤を増やす事ができる。同時に総余剰は増加するものの、消費者余剰は減少する。一方、このような性質は寡占市場では成立せず、消費 者を識別した価格付けは企業間の価格競争を激化させ、企業利潤は減少し、消費者余剰と社会余剰は増加する。また、情報を独占している企業が存在する場合、 情報を持たない企業から利潤を奪うことができる。また、このヨナ場合においても消費者余剰は増加する。この、寡占化における競争激化のメカニズムは囚人の ジレンマ均衡となっており、企業は最終的に利潤が減少するにもかかわらず、個々人の情報を収集し、個別価格を付けることをやめられない。従って、ビッグ データを用いた企業の利潤追求活動は結果として消費者を利することになる。このとき、企業はプライバシー保護に関する自主規制を競争回避のためのツールと して利用することができる。競争当局が考慮すべきなのはプライバシー情報の過剰利用ではなく、過小な利用なのである。

コラム