修士・博士の学生指導について(in Japanese)
修士課程(博士前期課程)の学生指導について
修士課程については、各組織内で定められているコースワークおよび私が指定するいくつかの講義を修士1年目に履修することを、必要条件として課します(私を主指導教員に希望する場合は、他の学生に比して多くの科目の履修し、かつ卒業要件単位数を超過して履修することを課す可能性があることをご理解ください)。この条件を満たし、かつ私と興味がある研究分野が少しでも重複していれば、原則として主指導教員(主査)を引き受けることは可能です。
私を主指導教員(主査)に希望する場合、修士課程入試前に私にコンタクトを取る必要は一切ありません(むしろ、入試対策のためだけであれば、コンタクトしないようにお願いします)。修士課程入試合格後は、入学までの準備や希望進路などについて話し合うため、少しでも早いタイミングでメールいただければ幸いです(ただし、入学前にコンタクトしなくても、それを理由に私が主指導教員を断ることはありません)。また、『経済論文の書き方』(日本評論社、2022)を、正式な指導開始までに読んでおいてください。
私を主指導教員として博士課程(博士後期課程)進学を希望する可能性が少しでもある場合は、下記要件の説明等のため、遅くとも修士1年目の秋学期開始時に私にコンタクトを取るようにしてください。
修士1年目は上記コースワーク等に集中することを強く推奨しています。通常の場合、修士論文(あるいはそれに類するもの)の本格的な指導は、修士1年目の終了時以降に行う予定です。
修士2年目から、定期的に面談を行います。また、毎学期初めの履修申請時の面談に加えて、学年末に次の1年間についての面談を行います。
Emailは、少なくとも2日に1度は確認し、なるべく早く返信してください(メールに書く内容が無い場合は、承知しました、読みました、など一文のみの返信で全く問題ありません)。なお、私は学生とのLINE等は原則として行いません。
いわゆる「研究室・ラボ」単位での活動は、私は行いません(原則として個別指導になります)。ただし、興味が大きく重なっている学生が複数いた場合には、この限りではありません。
英語で修士論文(あるいはそれに類するもの)を執筆したい人は、修士2年目の夏までにMcCloskey `Economical Writing' (third edition)あるいはThomson `A Guide for the Young Economist' (second edition)などの経済学の論文執筆に関する書籍のうち少なくとも一冊以上を読むことを必要条件として課します。日本語で執筆したい人は、木下是雄『理科系の作文技術』など論文執筆一般に関する書籍を一冊以上読むことを強く推奨します。明確かつルールに則った文章を書く能力は、どのような進路を選択する場合においても強力な武器になります。
大学関連の仕事(TA・RA等)を行う場合、また履修中の講義の取消・追加・変更などを考えている場合は、必ず事前に相談してください。奨学金、就職先、進学先などが決まった場合も、早急に連絡してください。
修士課程・博士課程のいずれにせよ、(できれば複数の)他教員とも交流・相談することを強く推奨します。そもそも経済学においては、主指導教員は理想的には修士1年目の終了時に選択されるべきであると私は考えています(これは私個人の意見であり、組織の意見ではありません)。主指導教員の変更について相談すること、また結果として主査・副査の変更を行うこと等について、私は全く問題ありません。また、より適切な教員がいるかもしれないと思った場合は、主査・副査の変更についての検討を含め、私からも学生と話し合うことがあります。
博士課程(博士後期課程)の学生指導について
私を指導教員に志望するか否かに関わらず、博士後期課程への進学についての相談を受けることがあります。以下は個人的な見解ですが、私が見聞きする範囲では、多くの博士後期課程の学生については(自分一人が独立した生計を維持するという意味においての)金銭的工面、および博士号取得後の就職は奏功しています。私自身も、日本・米国とも大学院生時代の生計は自分で工面しました。私が進学においてより重要だと感じているのは次の点です。博論を提出するためには、オリジナルの学術論文を3本程度完成させることが原則として課されます。少なくとも私の研究分野において、(博士後期過程修了の最短である)3年間で博論を提出できることは極めて稀であり、順調に研究を進めたとしても多くの場合は博士号取得に4-6年程度かかります。長期間にわたり自分が研究を続けたいかどうかを、修士進学の際よりも慎重に考えてみてください。
博士課程進学希望者については、私が主指導教員になるための要件を以下の通りに課しています。
コースワークの要件については、各組織内で定められている博士課程進学要件に加えて、コースワークの中で私が特に指定する数科目においてA以上を取得することが必要条件です。また、この条件が満たされるまで、対外的な研究報告およびいくつかの競争的な資金への応募は原則として推奨しません。
数学の準備については、Chiang and Wainwright `Fundamental Methods of Mathematical Economics' (fourth edition)のChapter 15までの中身を漏れなく全て理解していることが必要条件です。特に、方程式が複数ある場合の陰関数定理やKuhn-Tucker条件などを活用できるようにしてください。さらにChiang and Wainwrightでは扱われていない内容として、数学的な証明の仕方や集合論の基礎を理解していることも必要条件として課します。例えば、Simon and Blume `Mathematics for Economists'のChapters A1, 12, 13, 29の例題や練習問題を自力で解けるようにしてください。
進学前あるいは進学後なるべく早い段階で、Strunk and White `The Elements of Style' (fourth edition)などの英語文章一般に関する書籍のうち一冊以上を読むことを極めて強く推奨します。加えて、修士課程の学生指導で紹介したMcCloskey `Economical Writing' (third edition) あるいはThomson `A Guide for the Young Economist' (second edition) など経済学の論文執筆に関する書籍のうち、少なくとも一冊以上を読んでいることを必要条件として課します。これらの書籍は、それぞれ指定のeditionを手に入れて読むようにしてください(とくに`The Elements of Style'は初版の版権が切れたこともあり、類似書籍が近年多く出回っているようです)。
研究に関し具体的な条件を明記することは難しいですが、研究アイディア自体も含め、経済学の学術論文を英語で出版するための素地が出来ているかどうかが判断基準になります。
その他の要件については、詳しくは私に直接コンタクトを取ってください。
私が副指導教員(博士論文の副査)等になることについては、上記の限りではありません。ただし、定期的に(少なくとも半年に一度は)研究その他の進捗について連絡してください。
内部・外部からのどちらにせよ、私を博士課程の主指導教員にと考えている方は、必ず博士後期課程入試の出願前にコンタクトを取るようにしてください。
博士後期課程の何年次であっても、専門分野の知識を身につけるため、学生の興味に応じ(学内・学外を問わず)特定の講義の履修または聴講を課すことが多いです。
博士課程進学を希望し、かつ上記コースワークの要件を満たした学生には、自身の専門に関わらず学内の研究セミナー(大阪大学であれば待兼山セミナーなど)への定期的な参加を必須とします。さらに、自身の専門に関わる大学間の研究セミナー(Contract Theory Workshop、関西労働研究会など)のうち最低1つ以上への定期的な参加を強く推奨しています。
その他の方針については、上記「修士課程の学生指導について」と同様の形式で行います。
博士課程での研究・論文執筆についてのリンク(under construction)
[slides, economics] 日本経済学会 男女共同参画セッション 過去スライド共有サイト
[short, general] Hiroshi Watanabe「研究者として生きていくコツ 」 「Re:研究者として生きていくコツ」
同トピックにおいて、私が今まで見たことがある中で最も素晴らしい内容。分野を問わず全ての院生・研究者の方に読んでほしい文章。
ただし、以下の点についてだけは筆者と私は大きく意見が異なります: 私は、もし誰かに「経済学の研究者を目指すべきかどうか迷っている」と相談されたら「(OSIPP、阪大経研、および国内の幾つかの経済学系の大学院であれば)とりあえず修士課程は迷いながらでも進学しておいて損はないのでは。博士後期課程は個々の希望や状況に大きく依存するが、それでも進学自体が将来の職業について大きなリスクになることは現在では殆どない」と答えています。
[short, general] つなぽん「研究に心を押しつぶされないための、新米研究者へのメッセージ」
[short, general] 小松英一郎「(英語での)論文執筆:アドバイス」
[short, economics] 佐藤進「応用ミクロ理論分析をする時の初歩的なチェックリスト」(および他のいくつかのブログ記事)
[short, economics] 山岸敦「自分の研究アイデア出しのスタイルいろいろ」
[short, economics] 清水崇「セミナー報告のためのtips」
[short, economics] P. Niehaus "Doing research"
[short, economics] C. Goldin and L. Katz "The Ten Most Important Rules of Writing Your Job Market Paper"
[medium, economics] J. Cochrane "Writing Tips for Ph.D. Students"(最新版をインターネットで検索して見つけてください)