伊勢武史 Takeshi Ise

生態学と環境科学が専門です。森林やツンドラなど、世界の様々な生態系をシミュレーションで表現する研究をしています。いま、人間活動の影響によって、自然環境と生態系は大きく様がわりしようとしています。たとえば、気候変動のため生育する動植物の種類が変化したり、土地開発によって生物のすみかとなる環境が失われたりしています。生態系が将来どのように変化するのか、私たち人間の活動と環境保全をどのように両立すべきなのか。これらの問題を解決するヒントをシミュレーション研究から導き、社会へ発信していきたいと思っています。生態系シミュレーションを軸に、各地の森林などでの野外観測や、衛星観測データを用いた生態系の観測などを融合した研究を行います。

研究テーマ

キーワード:気候変動、陸域生態系、森林動態、炭素循環

モデリング—植物生態学・物質循環

環境変動下での生態系の変化を的確にとらえ予測するために、植物などの生物のさまざまな働きを包括的に扱うシミュレーションモデルを開発しています。

まず、植物の光合成や呼吸を、光や気温、水や養分という生育条件をもとにシミュレーションします(生理生態学)。光合成によって得られた炭素をもとに、植物は成長し、また繁殖し、生育環境が悪いと枯死したりします(個体群生態学)。植物は、種によって違うストラテジーを持っています。与えられた環境下でそれらが競争し、遷移が起こったりします(群集生態学)。これらのプロセスで、植物は二酸化炭素や水を吸収したり放出したりします。また、植物由来の有機物が土壌中に蓄積されたり分解されたりします(生態系生態学)。

このような多岐にわたるプロセスをそれぞれに適した時間スケールでシミュレーションすることで、生態系のダイナミクスの全体を理解することを目標としています。

モデリング—土壌炭素

土壌中には、大気中の二酸化炭素の約二倍の炭素が蓄えられています。この土壌炭素の蓄積や分解は、大気中の二酸化炭素濃度に大きな影響を与えることが懸念されています。たとえば、温暖化によって土壌微生物が活発化することで大量の土壌炭素が分解され、その結果として大気中に放出された二酸化炭素がさらなる温暖化を招く、というフィードバックを引き起こす可能性があります。

この重大なメカニズムの解明と的確な将来予測のため、土壌炭素循環と土壌物理をカップリングした、新しいモデルシステムを構築し、発表しています。

この研究は、科学雑誌「Nature」別冊の「Nature Geoscience」で取り上げられ(2008年)、

http://www.nature.com/ngeo/journal/v1/n11/abs/ngeo331.html

また「Nature」本誌や

http://www.nature.com/nature/journal/v455/n7215/full/455839c.html

「New York Times」紙などで紹介されています。

http://www.nytimes.com/2008/10/14/science/14obpeat.html

Research interests

Ecological modeling. Computer modeling of ecological processes, especially based on ecophysiology and biogeochemistry. Reproduction of past and present ecosystem structure and function, and future responses and two-ways interactions against global environmental change.