懸垂修飾語句

Dangling Modifier

日本企業のウェブページ英語版を読んでいると、結構dangling modifiersが見逃されているというのを実感します。自分の翻訳でも、dangling modifiersを見逃しかかったことが何度もあったので、自戒の意味も込めて、ちょっとまとめておきます。

Dangling modifier(懸垂修飾語句)とは、私が卒業したカナダの大学で使っていたWriting manualの定義では、(Dangling modifiers) have no referent in the sentenceという至極簡単なものですが、日本語でもう少し具体的に定義すると、修飾語句の意味上の主語と主節の主語が一致していないもの、となります。Dangle というのは、ぶらぶらぶら下がるという意味で、しっかりどこかにとまっているというのではなく、looselyにぶら下がっているという状態を意味しており、主語がしっかりとまっていないというニュアンスを表しているのだと思います。日本の文法では、dangling participle 懸垂分詞というくくりでいう場合が多いですが、dangling modifier ⊃ dangling participle というように私は了解しています。

例えば、某日本企業の製品紹介では

Metallurgical grade A, B and C are reacted at high temperatures (approximately xxx ℃), obtaining D in gaseous form.

obtaining の意味上の主語は、作業をした人物であって、Metallurgical grade A, B and Cではありません。よって、obtaining以下がdanglingです。主節を変えないのであれば、obtaining D in gaseous form → turning into D in gaseous formに直せはいいと思います。into が来て in が来ると音の続きが悪い感じがするようであれば、turning into gaseous D or turning into D(g) とか。大学のwritingのクラスであれば、受動態(passive voice)は嫌われますので、むしろ主節のare reactedを書き直すように言われると思います。

上記はわりと分かりやすい例ですが、ネイティブでも見逃しやすい例を、以下はカナダの大学で使っていたテキスト (APA Manual pp. 52)から:

After separating the participants into groups, Group A was tested. ×

※Group Aが the participantsを分けたわけではありません。

After separating the participants into groups, I tested Group A. ◎

To test this hypothesis, the participants were divided into two groups. ×

※the participantsが、仮説を検証しようしたわけではありません。

To test this hypothesis, we divided the participants into two groups. ◎

This participants were tested using this procedure. ×

※the participantsが、この手法を使ったわけではなく、the participantsは、この手法でテストされた対象。

Using this procedure, I tested the participants. ◎

さすがにテキストブックレベルになると、proofreadingがしっかりかかるので、danglingはまずないですが、実際、出版までのproofreadingがゆるい大学の学部が発行しているLab Manualとかには、時々散見されます。北米でもテキストブックなら問題だが、Lab Manualくらいだったら、その程度のミスはま~いいか、という雰囲気はあると思います。学位論文だったら、直しておきたいところですが、気づかない教授もいると思います。日本のウェブページの英語ページにはかなり散見されます。企業のウェブページによっては、東証一部上場の大きな企業でも、ほぼ野放し状態のようなところも多いです。

Dangling modifiers の厄介なところは、Spell Checkerではもちろんのこと、Grammar Checkerでも引っかからないところ。Grammar Checkerで引っかからない理由は、文節ごとには文法的に成り立っているため。例えば、After separating the participants into groups, Group A was tested. の例でいうと、After separating the participants into groupsも、Group A was testedも、それぞれ独立した文節内では、何の間違いもありません。

Dangling が生じやすいのは、長い文章を翻訳していて、途中で休憩等してリセットした後など。長いと、文の前半を忘れてしまうわけです。それがゆえに、ネイティブでも間違いが多いわけで、北米の大学での Writing に関するテキストブックでは、しっかりセクションを割いて、指摘されています。

Dangling を見つけるためには、全て終わった後に、通しで読むしかないと思います。後は、自分がdangleしやすいパターンをしっかり分析して、経験値を高めていくとか。Danglingを防ぐには、能動態(active voice)で書くのが有効とされ、最近のトレンドもあいまって、北米の大学の教育は能動態で書けというものが多いですね。

ネイティブも間違うのであれば、そこまで日本の企業のウェブページの英語版で気を使わなくともいいのではないか、といわれれば、何事も費用対効果なのでそういう見解もあるかもしれません。ただ、danglingが頻発する文章は読んでいると、たどたどしい感じがするので、特に海外の顧客にたくさん読まれるページでは、その辺もしっかり修正したほうがいいと思います。最初に書きましたように、私自身も含めてかなり見逃す部分ですが。