研究トピック: Artificial Cells, Molecular Robotics, AUTOMATTER; programmable Automated Materials
人工細胞、分子ロボット、そして自律的に動作する分子をデザインして運用する物質群をオートマター(ATM)と呼んで研究を行っています。
概念・理論としての自動機械(オートマタ)の部分集合として、実体のある自動物質群を考えましょう。すると、その最も高度化先鋭化された部分集合として、進化に磨かれた現存する生命体があると考えられます。私たちが実験的にさまざまなATMを作り出す行為は、宇宙のどこかにいるかもしれない別のタイプの生命体を探す行為に等しいことでしょう。生命と物質をつなぐ道が1本とは限らないでしょうし、その数も道のりも太さも模様もさまざまで、豊かに広がっていることでしょう。現存の生命と共存して、いまの我々にできないこと・して欲しいことを助けてくれるような自動物質群を分子設計から創り出すことを目指します。
人工細胞(Artificial-Cell)とは、人為的に設計された分子システムで構成されたミクロサイズの活動ユニットのことで、生きた細胞とは 似て非なる機能を持ちます。その人工細胞研究の二つの鍵は、天然の細胞に学びつつ望みのシステムを設計し実装することと、分子プログ ラムによる制御を実現することです。私たちの研究グループでは、人工細胞の作成を通して、医療、環境、材料、バイオなどの分野に応用可 能な、自動的に働くマイクロ分子システムの提供を目指しています。
天然の細胞は複製・代謝など様々な機能を有しています。人工 的な細胞では、欲しい機能に注目して設計した分子システムをマ イクロサイズの「袋詰め」にして、その動作を評価します。DNA、 RNA、タンパク質、触媒、遺伝子発現、分子モーター、DNA 論理 回路、光センサ、温度センサ、磁気センサなど多彩な内容物をデザ インし、天然を超える/天然にない機能の実現を目指しています。
人工細胞構造は、その複雑な構造を 1 つ 1 つ組み立てるのではな く、分子同士の親和性にしたがって自己組織化されます。通常の実 験に用いるのは数mLですが、将来的な利用をにらんで、私たちは 簡便で高効率な大量生産によって多細胞化を可能にする方法を研 究しています。現状では自己複製を行えない人工細胞ですので、自 然の細胞の増殖率に匹敵しうる製造効率を目指しています。
樟脳船やバクテリアの群れなど、自動的に動く物質が ActiveMatter と呼ばれ注目されています。我々はモータータンパ ク質で駆動する分子ロボット群を分子計算回路で制御したり、人工 多細胞体の動きを内外からの分子 / 電気信号で制御したりする課 題に取り組んでおり、「プログラムにしたがって」自動的に動く物 質群を “AutoMatter”(造語)と呼び、研究を行っています。
これらの人工細胞は、天然の細胞の「世話役」として働くことが 期待されています。そのために、人工細胞に組み込むことで特定の 分子シグナルを伝達する「ポア」や「センサ」、そして情報の増幅を 行う分子システムを設計しています。さらに、細胞内部へ物質を輸 送するコンテナとして人工細胞を利用することも可能であり、バイ オエンジニアリング分野への応用への道が開かれつつあります。
・自律的に運動する単細胞型分子ロボット
・cmスケールの多細胞型分子ロボットの構築と自律動作
・環境や生きた細胞と相互作用する分子センサデバイス
・人工多細胞型・薬剤徐放システム
等々