Comments on My Publications (in Japanese)
8. Shunsuke C. Furuya and Thierry Giamarchi,
"Spontaneously magnetized Tomonaga-Luttinger liquid in frustrated quantum antiferromagnets",
arxiv:1403.1513, Physical Review B 89, 205131 (2014)
1次元量子系では自発的対称性の破れは非常に特殊な形で現れる.この論文では幾何学的フラストレーションを持つ擬1次元反強磁性体において,スピンのSU(2)回転対称性が自発的に破れて強磁性秩序を持ち,さらに朝永・Luttinger液体としての性質も兼ね備える「自発磁化を持つTL液体」と呼ぶべき基底状態が可能であることを示した.この基底状態は高次元系ではcanted ferrimagnetic状態に対応する.この状態は高次元系では1つの非相対論的南部・Goldstoneボソンと1つの相対論的NGボソンを伴うが,擬1次元系では相互作用と量子ゆらぎのために後者がTL液体に変質し一部の対称性を回復している.この論文は先行論文[Shimokawa and Nakano, J. Kor63, 591 (2013)]で見出された非整合フェリ相の数値計算に着想を得ている.強磁性秩
別の系に対してもごく最近議論されている[Sun et al., Phys. Rev. B 89, 134420 (2014)].
7. Zheng-Yuan Wang, Shunsuke C. Furuya, Masaaki Nakamura and Ryo Komakura,
"Dimerization in spin-S antiferromagnetic chai
arXiv:1311.0626, Physical Review B 88, 224419 (2013)
この論文では先行論文[Michaud et al., Phys. Rev. Lett. 108 127202 (2012)]で初めて議論されたスピンSの
反強磁性鎖の模型を拡張し,その模型がダイマー化した基底状態を持つことを厳密に証明した.ボンド交替がない
場合にはこの模型はMajumdar-Ghosh模型の一般のスピンSへの拡張と見なすことができる.また,MG模型の
スピンSへのナイーブな拡張はS>1/2の場合にダイマー化した基底状態を持たないことも議論している.
5. Shunsuke C. Furuya, Yoshitaka Maeda and Masaki Oshikawa,
"Electron spin resonance shifts in S=1 antiferromagnetic chains",
arXiv:1208.6017, Physical Review B 87, 125122 (2013)
2.の研究は一軸異方性のあるS=1 Heisenberg鎖を「可解な場の理論+摂動」という枠組みで定量的に理解できるという
点がメインの主張であったが、この論文ではそれを電子スピン共鳴に応用して、NDMAPというS=1 Heisenberg鎖化合物
の電子スピン共鳴の実験と比較した。低磁場(といっても数T)から55Tというかなりの強磁場までのデータを理解できた。
4. Shunsuke C. Furuya and Masaki Oshikawa,
"Boundary Resonances in S=1/2 Antiferromagnetic Chains Under a Staggered Field",
arXiv:1112.1088, Physical Review Letters 109, 247603 (2012)
S=1/2反強磁性スピン鎖に磁場をかけると、結晶構造のために有効的に交替磁場が生じる場合がある。そのような有効
交替磁場を持つスピン鎖中に非磁性不純物を導入してスピン鎖を切断すると、切断されたスピン鎖の端に束縛状態が
生じるということ、さらに、この端状態が電子スピン共鳴という実験で観測可能であるということを示した。元々、
KCuGaF6の電子スピン共鳴実験[I. Umegaki et al., PRB (2009)]において、"unknown peak"が系統的に観測された
ということから着想を得た話で、この論文によって、この"unknown peak"の起源に説明を与えることができた。
3. Shunsuke C. Furuya, Pierre Bouillot, Corinna Kollath, Masaki Oshikawa and Thierry Giamarchi,
"Electron Spin Resonance Shift in Spin Ladder Compounds"
arXiv:1107.5965, Physical Review Letters 108, 037204 (2012)
電子スピン共鳴スペクトルには様々な起源の共鳴吸収ピークが現れるが、外部磁場Hに比例する共鳴周波数(ω=gμH)を
持つピークが自然に現れる。電子のエネルギー準位のゼーマン分裂に由来するこのピークは、常磁性相や磁場誘起朝永・
Luttinger液体相など様々な相で見られ、その共鳴周波数ωは温度と磁場の関数である。本論文では、この共鳴周波数の
ズレ(Tを温度としてω(T,H)-ω(∞,H)と定義)を、有限温度密度行列くりこみ群法を用いて計算した。S=1/2梯子化合物
においてESRの共鳴周波数の系統的な温度・磁場依存性の解析をして、最近調べられているBPCBと呼ばれる物質に応用
した。
2. Shunsuke C. Furuya, Takafumi Suzuki, Shintaro Takayoshi, Yoshitaka Maeda and Masaki Oshikawa,
"Single-ion anisotropy in Haldane chains and the form factor of the O(3) nonlinear sigma model",
弱い単イオン異方性相互作用を持つS=1反強磁性Heisenberg鎖を場の理論を使って定量的に解析した論文。通常用いられる、
自由場の理論を被摂動項にする摂動論ではなく、相互作用を持つ「可解な」場の理論を被摂動項にする摂動論を用いると、
反強磁性スピン鎖のような強い相互作用を持つ系を摂動的かつ定量的に取り扱えるということを示した。実際、対角化やiTEBD
による数値計算やNDMAPという化合物の実験結果を精度よく再現することができた(4.の論文も参照)。
1. Shunsuke C. Furuya, Masaki Oshikawa and Ian Affleck,
"Semiclassical approach to electron spin resonance in quantum spin systems",
arXiv:1102.3239, Physical Review B 83, 224417 (2011)
電子スピン共鳴は低次元量子スピン系の実験的研究によく用いられる実験手法で、電子スピン共鳴スペクトルから様々な情報を
得ることができる。しかし、スペクトル自体を数値的に再現しようとすると、有限温度における動的構造因子が必要になり、
なかなか難しい。この論文では、有限温度であることを逆手に取り、古典近似をすることで有限温度の動的構造因子を数値的に
得た。使った手法は、古典モンテカルロ法とシンプレクティック法と呼ばれる動力学計算手法のふたつ。古典近似しているとは
いえ、単なる高温極限ではなく、(1)短距離秩序が存在する程度に低温、かつ、(2)古典近似可能なほど高温、という中間温度
領域を対象としている。