「商社9条の会」って?

Post date: 2016/10/24 13:30:13

サーチン(元 東邦商会)

「商社9条の会」って?

前回の本欄を「鎮魂のトキの中で」と題する、引き締まった美しい文章が彩りました。作者は Tristan.K さんです。

「『新盆』が間近に迫っていたある早朝、息子の夢を見ました。」

この部分に続く文章には胸打たれました。「(死への)順番を間違えてしまった息子」が、気配に驚いて(父親である)「私の眼を見上げたところで目が覚めた」というくだりです。

順序通りならばTristan さんが、生ける息子さんの夢の中に立ち現れるはずなのでした。この世の現実では「長幼の序」なる概念は、しばしば覆されるもののようです。わが子よ、いまひとたび立ち戻ってきて欲しいという残された親の切なる願いが、この文章に込められて、読む者の胸を打ってきます。

日本にも世界にも、東西南北、いたるところで「長幼の序」が壊される不条理を、われら年寄りは見なければならないのか? どうにもならないこともあるけれど、どうにかなることもあるはずだ。若者たちよ、親より先に死への旅路にいで立つことのないよう、心を強く持って生き抜いて欲しい。

「商社9条の会」にはその他に数々の秀才、傑物が、どうしてこんなにたくさんいるのだろうと不思議になるほどひしめいています。

HUさん。勤めを終えてから大学院へ入り、学の道を究め直します。博士課程に進み10年、博士論文が教授たちの高い評価を獲得し、称号も得られました。

子として、母として、祖母としての役割をしっかりと果たしながらです。「商社9条の会」の世話人として煩雑な勤めを遂行し、不条理な政治社会をただすための諸活動をも果しています。秀才とは努力する人の別名である、という言葉をそっくりそのまま体現したような人です。

TGさん。HUさんと同じように勤めを終えた後大学修士課程に挑戦、修士論文をクリアし、いま博士論文に取り組んでいます。失礼ながらこの年で博士論文に挑戦するとは! そのエネルギーの源となるものはTGさんの体のどこにあるのだろうか。

ロシア語学者であった夫、故郷熊本におられた母、近くに住む兄など、続けざまに亡くされたようです。Tristan さんのように「順番を間違えてしま」うことはなかったとしても、肉親の死はこたえるものでしょう。自分の傍から去って行った人々への尽きぬ想いの数々が、TGさんを日本近現代史探求の道へ駆り立てた、と私は思っています。HUさんと同じ努力と粘り強さが、TGさんの、またとなき伴侶とこの上なく愛した肉親を一時に失った胸の空虚を埋め、新しく豊かな命の息吹で満たしはじめているように思われます。

TMさん。「商社9条の会」の現役世話人の中では、おつむの禿げ具合からすると最長老のように見えますがさにあらず、なのです。いまだ金官デモにはほとんど欠かすことなく参加していらっしゃいます。毎週金曜日、国会前へ詰めかける小さな体のTMさんのエネルギーはどこから溢れてくるのだろう。永年の海外駐在員暮らしで培われた、故国を思う心の温かさ、見つめる目の確かさが、今日まで衰えることなく持続しているからであろうと思われます。TMさんがこよなく愛するウイスキーを二次会のS水産にて惜しげもなく仲間に振舞うことで、仲間たちと自分の、心と体の潤滑油を補給しているのです。TMさんはまた、暖かな文章をよく書く文筆家でもあります。

THさん。多くを語ったり書いたりする人ではありません。だが、「商社9条の会」が起す何かの行動やイベントに必ずその人あり、といったふうに、地球を包む空気のように貴重な人です。昨年の9月19日だったと思うのですが、戦争法案の強行採決に怒った市民が、抗議の声を上げて国会前に集まった時のことです。大集会が始まる1時間前に「商社9条の会」は国会図書館前に集まることになっていました。私は混雑の中を進むことに不安があり、「商社9条の会」の集合時間のさらに1時間前に指定場所にたどり着いたのでしたが、すでにTHさんがいたのです。例の有名な昇り旗を組み立てている様子で、驚嘆したことがありました。信念と誠実の塊みたいな人です。THさんの存在が、今日は休もうかと安易に走りがちな私たちの気持ちを叱咤し、励ましているように思えました。

「商社9条の会」が「反原連」の、いわゆる「金官デモ」に参加してすでに4年余も続いています。信じがたいことです。信じがたいことを「商社9条の会」の年寄りたちがやってのけているのです。SNさんとYTさんのお二人が、この信じがたいことの牽引車を勤めています。このお二人については既に何回か言及しましたので、改まって言うことはやめますが、その果たしている役割は、「反原連」を5年にわたって支え発展させてきた若者たちとともに、称賛措く能わざるものがあります。その日本社会に果たしている役割は巨大なものがあります。SNさん、YTさんと「商社9条の会」の仲間たちの行動する姿は、朝日新聞、東京新聞、しんぶん赤旗などで全国的に紹介もされました。すでに全国区の存在となっています。「SEALDs」の学生たち、「市民連合」の市民たちの結集を促したと思います。YTさんの「2016.9.9 原発反対、国会前抗議」によると、インド、韓国、ベトナム、インドネシア、バングラデシュなどアジア各国の若者たちが、金官デモに参加しています。金官デモはすでに世界バージョンともなりつつあるのです。

「反原連」の国会前・官邸前集会のたゆみない、原発再稼働阻止・原発ゼロの行動が、これらの新しい力が、日本共産党による野党統一候補擁立の提案に結集したのだと思います。川内原発の一時停止を訴え当選した三反園鹿児島県知事、先頃行われた新潟県知事選挙では、柏崎刈羽原発再稼働を認めないとして、米山候補者が絵に描いたような見事な勝利を勝ち取るなど、反原発と野党統一候補の訴えが、広く深く市民の間に浸透し、受け入れられてきていることを実感しています。

「商社9条の会」の仲間たち、「s-kinkan-mlg」に結集する友人たちは、民意を徹底して無視する政権により閉塞した社会を、「老いの一徹」でいま、切り開きつつあります。