Tsukuba Hopf Seminar

筑波大学で不定期に開催している、ホップ代数とテンソル圏に関するセミナーに関するページです。

つくばホップセミナー

スーパー代数群のコホモロジーについて/柴田大樹(筑波大学) [PDF]

日時:2015年12月15日 16:00-17:00

場所:筑波大学・自然系学系D814

代数群の表現の研究にコホモロジーは大いに役立つ.任意標数の体k上の代数群Gとその標準ボレル部分群Bに関して,ウェイトλに対する1次元B-加群kλの 0 次コホモロジー H0(kλ) が消滅していないことと,λ が支配的ウェイトであることは同値であることはよく知られている.すなわちG-単純加群はB-単純加群の0次コホモロジーに着目することで調べることができるのである.さらにこのとき,高次のコホモロジーHn(kλ) (n > 0) は消滅している(Kempf の消滅定理)ので,例えばオイラー指標はH0(kλ)の指標を計算するだけでよいとも分かる.これまでに本研究では,この様なコホモロジーを用いた表現の研究がスーパーの世界でも有効であることを明らかにした.本講演では特に Kempf の消滅定理のスーパー類似を紹介する.

有限的テンソル圏の中心のリボン構造について/清水健一(名古屋大学) [PDF]

日時:2015年12月15日 17:00-18:00

場所:筑波大学・自然系学系D814

有限次元ホップ代数の Drinfeld double のピボタル構造やリボン構造は Kauffman と Radford によって完全な分類が与えられているが, その結果の有限的テンソル圏への拡張として次のことを示すことができた. まず, 有限的テンソル圏Cの中心Z(C)のピボタル構造は可逆な対象 β ∈ C とモノイダル自然変換 ξ: β ⊗ (-) ⊗ β* → (-)** の組 (β, ξ) の同値類と1対1に対応している. さらに, そのような (β, ξ) に対応するZ(C)のピボタル構造がリボン構造を与えるための必要十分条件は, Etingof-Nikshych-Ostrik によって導入されたモジュラー関数の圏論的類似物を用いて記述することができる. 以上の結果の応用として, C が Douglas-Schommer-Preis-Snyder の意味で spherical ならば, Z(C) は Lyubashenko の意味でモジュラーであることが分かる.

過去の記録

フェアリンデ公式の圏論的理解に向けて/清水健一(名古屋大学) [PDF]

日時:2015年7月20日(月・海の日)10:30-12:00

場所:筑波大学・自然系学系D509

共形場理論におけるフュージョン積の分解係数をS行列を用いて記述するフェアリンデ公式は、モジュラーテンソル圏と呼ばれるある種の有限性と非退化性を持つ半単純リボン圏の枠組みで理解することができる。 今回は、モジュラーテンソル圏におけるフェアリンデ公式を、リュバシェンコの余エンドホップ代数(およびその双対)の役割を前面に出した形で与える。 さらに、この議論を踏まえた上で、『非半単純なモジュラーテンソル圏』に対するフェアリンデ公式の確立へと向けた取り組みを紹介したい。

任意標数の体上のスーパー代数群の表現論について/柴田大樹(筑波大学) [PDF]

日時:2015年7月20日(月・海の日)13:30-15:00

場所:筑波大学・自然系学系D509

スーパー代数群スキーム(以下,単にスーパー代数群)とは,スーパー(= 𝕫2-次数付)ホップ代数で表現される群関手のことである.これは代数群の単なる一般化ではなく「ある緩い条件を持つリジットな対称テンソル圏は,スーパー群の表現圏として実現できる」というドリーニュの定理から見て,それ自体が興味深い対象である.この結果が発表された当初は具体的なスーパー群の例はあまり知られていなかったが,近年になって,よい性質を持つスーパー・リー代数とその表現からシュヴァレー・スーパー群と呼ばれるスーパー代数群を任意標数(ただし2は除く)の体上で,組織的に構成することが可能となった(増岡彰氏との共同研究).

本講演ではシュヴァレー・スーパー群の構成や,その表現の研究(正標数の場合を含む)を解説する.特に表現に関して,スーパーでないときのトーラスにあたるものが,スーパーの場合は特殊なふるまいをしているので,この事情も自らの最近の研究結果を含め紹介したい.

『ホップ代数と余エンド』/清水健一(名古屋大学) [PDF]

日時:2015年2月14日(土)・15日(日);下記参照

場所:筑波大学・自然系学系D509

テンソル関手から生じるある種の余エンドは、自然な(組みひも)ホップ代数の構造を持ちます。この構成はホップ代数の理論およびその応用において極めて重要であり、例えば淡中双対性や、閉三次元多様体の不変量の構成などに登場します。このセミナーでは、まずエンドや余エンドといった圏論的概念について復習したあと、上述したようなホップ代数の構成をグラフィカルに説明し、特にマジッドによって導入された『トランスミューテーション』が例になっていることを説明します。さらに、このような構成を用いる理論の例として、淡中双対性や、ある種の有限性を持つリボン圏から構成される閉三次元多様体の不変量について概説を行います。