過去と現在のすべての立命館構成員に呼びかけます.

これからが、本当の始まりです.

「安保関連法案に反対する立命館学園有志の会」は2015年9月24日に名称から「案」を削除し、「安保関連法に反対する立命館学園有志の会」と改称しました。

声明文 および以下の声明に賛同される方は 賛同者署名フォーム からご署名をお願いします.

私たちは、日本学術会議委員任命拒否に抗議し、全員の任命を求めます

――立命館大学法学部・法務研究科教員有志緊急声明――

2020年10月1日、菅内閣総理大臣は、日本学術会議が推薦した新会員候補105名のうち、第1部会(人文社会系)候補6名の任命を拒否しました。任命拒否された候補者の中には、私たちの同僚である本学法務研究科所属の松宮孝明教授が含まれています。刑事法学の優れた研究業績を有する松宮教授が、明確な理由も示されずに任命されなかったことについて、私たちは同僚として強く抗議します。

さらに、今回任命を拒否された6名のうち、3名は法学者、1名は政治学者、1名は近代史研究者であり、これらの学問研究分野を擁する立命館大学法学部・法務研究科としても、看過することのできない事態です。

のみならず、今回の任命拒否は、「法の支配」を無視した政府による行政権の濫用であり、また、日本の学問の自由を大きく歪め、本来的に政治権力から独立していないと成り立たない学問活動に対する極めて政治的な介入行為として、法律学・政治学を学び教える立場として容認できません。

私たちは、今回の学術会議会員任命拒否について、とくに以下の点を問題視します。

1) 学問研究活動は、本来的に政治権力から独立していなければ、その真の力を発揮できません。そのために日本学術会議は特に、時の政権から独立して活動しなければなりません。そこで、日本学術会議法は、会員を内閣総理大臣の任命としていますが(7条2項)、それは学術会議の推薦が前提であり(同)、この推薦は学術会議自身が「優れた研究又は業績がある科学者のうちから会員の候補者を選考」することになっています(17条)。この任命に関する手続の趣旨は、「科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させること」(2条)を目的として設置された学術会議が、「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること」等の職務を「独立して」行う(3条)ために、必要不可欠だからです。

首相の任命権が形式的なものであることにより、学術会議の政府からの独立性・自律性は担保できるのです。このことは1983年の政府答弁でも明らかなように歴代の政府も認めてきた「確立した習律」というべきものであって、時々の内閣の都合で恣意的に破りうるものではありません。この習律の変更を内閣が欲するのであれば、その必要性を合理的な理由を示して国会や世論に説明する責任があります。しかし、内閣は2016年の委員任命の際に従来の立場を秘密裏に変更し、そして今回の任命拒否に至りました。これは法的安定性も行政の説明責任も無視しており、法治国家の観点からも民主的な行政統制の観点からも到底許されないことです。

2) 現在の内閣は任命に首相の裁量余地があるという誤った解釈に拠っています。しかし仮にこの政府の解釈に立っても、「優れた研究又は業績」の有無以外の(例えば「政権に批判的な学者だから」などの)事由で判断するのは、「他事考慮」そのものであり、違法な裁量権の濫用として、やはり許されません。そうではなくて「優れた研究又は業績」の観点から判断したというのであれば、内閣はその判断根拠を明らかにすべきですが、拒否された6人の業績からして学術的に耐えうる理由を示せるはずもなく、やはり裁量権行使の誤りということになります。なお、「税金を投入しているのだから学術会議の運営や人選に政府が介入するのは当然」といった弁明が与党議員の一部などから出ていますが、それらは裁量権の濫用を正当化する理由になりえません。

3) 首相は具体的な拒否理由を公表していませんが、外形的事実に即してみれば、政府の推進する法案に批判的な見解を持つ候補者を「狙い撃ち」で拒否したとみることは十分可能です。政府の政策について学術的観点から疑問を提起した研究者を「狙い撃ち」で不利益を科すのは、特定の思想や学説を国家が選別する差別行為です。なぜならそれは、「この思想や学説は国家にふさわしくない」というメッセージを内閣が発するに等しく、拒否された候補者のみならず、そうした思想や学説を共有する市民全体にも負のレッテルを張ることになるからです。

4) 拒否理由の非公表は、拒否された候補者のみならず、市民全体を疑心暗鬼に陥らせ、「萎縮と忖度」で社会を分断させることによって統制を行う、「人治主義」の手法といえます。このような統制は、やがて大学への補助金や私学助成はもちろん、文化芸術の分野さらには市民の生活全般にも拡大可能でしょう。

立命館学園は、戦前の重大な学問の自由に対する侵害事件である滝川事件に関わって京大法学部を辞した研究者を多く受け入れ、その中から末川博を日本国憲法下における初代の学長に迎える、という歴史を持っています。このような歴史を持つ立命館だからこそ、今回の任命拒否にあたって、大学を挙げて異議を唱える必要があると考えます。

私たちは、今回の任命拒否に強く抗議し、拒否に至った経緯を明らかにした上で、すみやかに6名全員を任命することを求めます。

2020年10月14日

立命館大学法学部・法務研究科有志


日本学術会議への政治介入に抗議し、説明・撤回を求める京都抗議集会(2020年10月20日開催).pdf