2024年度のOCD Awareness Week(強迫症啓発週間)は10月13日から18日です。
OCD-Japanのイベント
2024.10.20(日)10:00~12:00
オンライン(ZOOM)開催・見逃し配あり
「強迫症について」
紺谷恵子:精神保健指定医、子どものこころ専門医、精神科専門医
2.「強迫症と親子関係)」
新明一星:公認心理師、臨床心理士、TCBTカウンセリングオフィス代表
3. Q8Aコーナー
医師・心理師が答えるQ&Aコーナーです。
申込み・講師への質間:10/18(金)まで
https://2024ocdawarenessweek.peatix.com
問い合わせ:ocdj.0308@gmail.com
参加費:一般チケット1100円、OCD-Japan活動応援チケット1500円
キャンセル時の返金は対応しておりません
ご自由にご周知ください!
強迫症の治療、研究、情報発信を行い、強迫症でお困りの方、その家族の支援がより一般的になっていくことを目指し ています。曝露反応妨害法の効果や家族の巻き込まれを改善することが治療において重要なことは一般的に知られてはいますが、実際に介入できる専門家が少な く、結果的に多くの患者様にご利用いただけない実情があります。このような現状をよりよくしていくことを目指しています。
強迫症(OCD)は、「手を洗わずにはいられない」、「確認せずにはいられない」というような、執拗な考えと繰り返し行為などの儀式行動に悩まされる精神疾患です。成人の約40人に1人の割合でみられ、WHO(世界保健機関)の調査によると、先進国で「人々を最も長時間にわたって苦しめる問題」の10位にランクされています。これまで、OCDへの治療の1つとして、認知行動療法(CBT)が奏功しているという研究結果が数多く発表されています。しかしながら、我が国では、専門的にOCDの治療や研究を行なっている機関や治療者の数は限られています。
そこで、私たちOCD-Japanは、国際OCD財団(International OCD Foundation)の協力を得て、専門家むけに認知行動療法(CBT)をはじめとしたOCDの治療的介入やこれまでの研究成果についての情報を提供していきたいと考えています。効果的な治療の普及とそれを実施できる治療者が増えていく足がかりになることを願ってやみません。
なお当サイトの情報を用いて行う一切の行為について、何ら責任を負うものではありません。実際の治療に関しては、主治医にご相談ください。
理事
河村寛子,中山孝子, 髙岸百合子
スタッフ
紺谷恵子, 新明一星
アドバイザー
大野裕 (一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長)
Michael A. Jenike,MD
Chair,IOCDF Scientific Advisory Board Professor of Psychiatry, Harvard Medical SchoolDirector, OCD Institute, McLean HospitalDiane Davey ,RN,MBA
President, Board of Directors, International OCD FoundationProgram Director, OCD Institute, McLean Hospital1. 強迫症・強迫性障害とは
「几帳面」、「綺麗好き」などの言葉によって表現される行動は、一般の好ましいものとされています。しかし、その清潔さや整理整頓の状態を見て「完璧主義」、「潔癖」、「神経質」、などと表現する場合、人々はそこに度を越えた何かを感じ取っていることになります。ここで、度を越えた何かとして考えられるのは、決めた通りに実行しないと気がすまない、 同じことを納得するまで繰り返すといった行動面での行き過ぎであったり、決まりごとなどへの執拗なこだわりなど、内面的な過剰さであったりします。強迫症・強迫性障害は度を越えている思考や行為に悩まされる問題です。
2 1995年 WHO の発表
1990年から、WHO、世界銀行、ハーバード大学の三者の協力によって、5年間を費やして行われた世界規模の調査によると、人々を最も長時間にわたって苦しめる問題の上位10位には俗に精神的問題と呼ばれる問題が多いことに気付きます。上位10項目の5つがそれに該当し、1位はうつ病で、強迫症は10位にランクされていました。意外に身近な障害であることがわかります。(The Global Burden of Diesase, 1996)
3 強迫症/OCDの特徴
強迫症・強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder : 以下OCD)は、成人40名に1名の割合で見られ、ほとんどの場合は思春期後半または成人期の初期に発症します。OCDを持つ成人の半分強は女性です。男性の場合、OCD発症が一番多いのは13−15歳、女性の場合、OCD発症が一番多いのは20-24歳です。OCDで苦しむ成人の1/3—1/2は、OCDのいくつかの症状は児童期に始まっていたと報告しています。児童期におけるOCDの診断は珍しいですが、加齢 にともなって増加します。子どものOCDの場合は男子の方が多いです。OCDで苦しむ1/3-2/3の人々はストレスとなる重大な出来事を経験した後にOCDを発症しています。
OCDで苦しむ人々の10名中9名は、症状の満ち引きを感じており、ストレスを感じる状況に置かれた時に悪化すると報告しています。OCDで苦しむ人々は、平均以上の知能を持っています。
4 強迫症についての理解 ~不安症としてのOCD~
強迫症(Obsessive-Compulsive Disorder : OCDと呼ぶことが多い)は、その英語名称が示す通り、強迫観念(Obsessive Thought)と強迫行為(Compulsive Behavior)の2つが主症状によって特徴付けられます。
「精神疾患の診断・統計マニュアル」の最新版の第四版・テキスト(DSM-Ⅳ-TR)は、この障害を不安障害の1つとして位置付け、この障害について「(著しい不安または苦痛を生じさせる)強迫観念および/または(不安を中和するために行われる)強迫行為を特徴とする」と表現しています。
A .強迫観念または強迫行為のどちらか
(1)、(2)、(3)、および(4)によって定義される強迫観念:
(1)反復的、持続的な思考、衝動、または心像であり、それは障害の時期の一期間には、侵入的で不適切なものと して体験されており、強い不安や苦痛を引き起こす.
(2)その思考、衝動または心像は、単に現実生活の問題についての過剰な心配ではない.
(3)その人は、この思考、衝動、または心像を無視したり抑制したり、または何かほかの思考または行為によって中和しようと試みる.
(4)その人は、その強迫的な思考、衝動、または心像が(思考吹入の場合のように外部から強制されたものではなく自分自身の心の産物であると認識している.
(1)および(2)によって定義される強迫行為:
(1)反復行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または厳密に適用しなくてはならない規則に従って、それを行うよう駆り立てられていると感じている.
(2)その行動や心の中の行為は、苦痛を予防したり、緩和したり、または何か恐ろしい出来事や心の中の行為はそれによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的関連をもっていないし、または明らかに過剰である.
B.この障害の経過のある時点で、その人は、その強迫観念または強迫行為が過剰である、 または不合理であると認識したことがある.注:これは子供には適用されない.
C.強迫観念または強迫行為は、強い苦痛を生じ、時間を浪費させ(1日1時間以上かかる)、またはその人の正常な毎日の生活習慣、職業(または学業)機能、または日常の社会的活動、他者との人間関係を著明に障害している.
D.他のⅠ軸の障害が存在している場合、強迫観念または強迫行為の内容がそれに限定されない(例:摂食障害が存在する場合の食物へのとらわれ、抜毛癖が存在している場合の抜毛、身体醜形障害が存在している場合の外見についての心配、物質使用障害が存在している場合の薬物へのとらわれ、心気症が存在している場合の重篤な病気にかかっているいるというとらわれ、パラフィリアが存在している場合の性的な衝動または空想へのとらわれ、または大うつ病性障害が存在している場合の反復思考).
E .その障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない.
「精神疾患の診断・統計マニュアル」の最新版の第四版・テキスト(DSM-Ⅳ-TR)訳:高橋 三郎/大野 裕/染矢 俊幸 2004 医学書院
括弧外の部分が、OCDの主症状で、括弧内はいずれもそれらの症状の背後にある不安または苦痛を指しています。 つまりOCDの主要な症状は、ともに不安と深く関わっており、OCDが不安障害の1つに数えられている理由がそこにあり ます。このことは、OCDを理解し、また効果的な臨床を目指す際に非常に重要な点となります。図はOCDの発症パターン を示したもので、強迫性障害の仕組みを説明する理論として一般的な「不安緩和理論」(anxiety-reduction theory)を ウォルピ(Wolpe)が改訂したものに基づいて作られています。
OCDについては、図に示された4つの部分(引き金、強迫観念、不安、強迫行為)を通して考えると理解し易いです。現象としては、これらの4つの部分が連鎖的に他を誘発し、OCDのレールを形成しています。これまでに、OCDの定義、分類、また介入などについて様々なモデルが提唱されていますが、それらの考え方のほとんどが、図に示した4つのどの部分を強調するか、またどの部分を介入の原点とするかの違いであると言っても過言ではありません。介入については後 のセクションで触れますが、まずここでは簡単にそれら4つの部分について解説します。
◆ 強迫症の症状
強迫観念:
本人が望んでない考え、イメージなどが侵入してきます。例えば、繰り返し出現する、考え、イメージ、衝動などで、内容的には暴力的、また性的なもの、また汚染に関する物が多いです。時には霊に関するものなどもあります。本人が無視したり、押さえ付けようとしても困難で、他の考えや行動によって変容します。 本人は、その強迫観念は自分が作り出していることを理解しています。
強迫観念の例 YBOCS(1989年作成)日本語版より引用
暴力的な行動:誰かを刺す、手摺越しに突き落とす、線路に誰かを突き落とす
病的な考え:自分、また他人を傷つけたい衝動、悲劇が待ち受けている、病気になる
宗教的な事柄:神を冒涜する考え、悪い霊に取り付かれる、地獄に落ちることへの恐怖
性的な考え:特定の誰か、または自分が同性愛だと思う、子どもや動物と性的関係を持つ心配
思い出す必要:他人が言ったことを振り返って全て思い出そうとする
身体的な心配:癌やエイズにかかったかどうかを過剰に気にする、自分の呼吸が気になる
知る必要:頭に浮かんだ疑問に対する答えを知らなければ気が済まない
善悪への疑問:浮かんだ考えが正しいかを知りたい、正しい考えが浮かぶまで動けない
場所への疑問:自分が住んでいる家が本当に自分の家かどうか疑う
状態への疑問:自分の目が開いているかどうか、自分が起きているか眠っているかの疑問
強迫行為:繰り返し行為(手洗い、順番通りに整頓する、確認など)または、内面行動(祈る、数える、言葉を繰り返すなど)で、強迫観念に反応して、または厳しいルールに従って、行わざるを得ないもの。
繰り返し行動や内面行動で、感情的な苦しみを中和させたり、抑えたりする働きをします。しかし、それらはリラクセーションのような実際的な方策ではありません。
強迫行為の例
心的な強迫行為
勘定:文章や数字などが割り切れるか試す、物事を好きな数字で終える、数字の組み合わせ
リスト作り:すべきこと、買い物、旅の行程などを頭の中にリストして繰り返し、なりなおす
祈る:機械的に祈りを意味もなく繰り返す、決められた祈りの儀式を続ける
身体的な強迫行為
暴力的:独り言のように暴言を吐く、自分を傷つけるような行動
身体行動:排便、つばを吐く、排尿、つばを飲みこむ、自慰
身体動作:何かに触る、握る、跳ねる、身体を揺らす、擦る、奇声を発する
洗浄・清掃:過度の手洗い、シャワー、身支度、大小便の作業、歯磨き、その他の清掃
確認:鍵の確認、火の元、家電製品、電灯のスイッチ、運転中の事故の有無、仕事上のミス
繰り返し:書き直し、読み直し、納得のいく感触が掴めるまで動作を繰り返す
勘定:メンタルな強迫行動と似ているが内面で無く実際に数えたり、割ったりする作業を行う
整理整頓:ある物を望み通りの場所に据える、並べる、洋服をある順番に揃える、ハンガーの向き
溜め込み:新聞を集める、切り抜き、雑誌、ビニール袋、キャップ、紙切れなどを集める
告白質問:どうしても情報を聞きたい、望まない情報を知らせたい、理解したかを執拗に聞く
やり直し:同じ来た道を何度も戻る、ベッドに出た時の全く同じように入る
身体検査:脈や血圧を何度も測る、病気の徴候、サインがないか身体を過度の調べる(乳がんなど)
<一般の不安の推移>
何らかのきっかけによって不安が発生する。時間の経過に従い不安はピークに達し、その後次第に納まってくる。
<OCDの不安の推移>
不安の引き金が曝露したあと、不安がピークに達する。儀式を行うことによって不安を緩和させることによって習慣化される。実際は儀式を行わなくても不安を抑えるための儀式を止めることができなくなる。儀式(強迫行動)を行わないと不安が消えないと確信している。
OCDは前述(OCDとは参照)の四つの部分からなることを述べましたが、実際のところ、何をしてOCDと呼ぶかという厳密な線引きについては、歴史を通じて様々な見解が出されています。
実際にDSMも版を重ねる度に微妙にOCDの診断基準を変えてきており、その第三版にあたるDSMⅢでは、強迫観念はOCD以外の障害(トウレット障害、統合失調症、うつ病など)から発生していないことが診断の条件として挙げられていましたが、その改訂版であるDSM-Ⅲ-Rが出版された段階から、また第Ⅳ版のDSM-Ⅳにおいても、前述の条件は削除され、OCDは他の障害と同時に発生し得ると改定されています。
OCDとその他の障害の間に存在する症状の重複は、これまでに研究者や臨床家たちを悩ませてきました。たとえば、醜形恐怖(Body Dysmorphic Disorder)や抜毛(Trichotillomania)は現象としてはOCDと酷似していますが、現在、これらはOCD以外の範疇に含まれます。また、強迫性の溜め込み(Hording)も同様に、OCDではなく、強迫性人格障害と診断されるケースが多いです。その違いは、本人が症状をどのように認知しているかによっています。本人が異常であると認知しながらも特定の行為を止めることが出来ない場合もあれば、周囲異常であると認識しながらも本人は違和感を感じない場合もあります。現時点では、前者は強迫性障害、後者は強迫性人格障害と分類されています。さらに摂食障害、依存症なども、自身のイメージや体重へのこだわり、強迫的な繰り返し行為などという点からみれば、強迫性障害と類似しています。このように、見方によれば、「こだわり病」の類いは全て、強迫症と兄弟または親族と考えることができます。
<OCDと類似している問題>
1 依存症:OCDの場合は不安を避けるための行動。依存症の場合はその行動から快楽を得ている
2 醜形恐怖:自分の身体の部分に欠陥があると異常に恐れる
3 身体疾患:甲状腺障害、不整脈、塞栓症、アルツハイマー、過呼吸など不安を伴う身体疾患
4 強迫性人格障害:OCPDは人格障害で強迫観念た強迫行動に煩わされるのではなくルールや順番、完全主義にこだわり、OCDの様に何か大変なことが起こるのを恐がっているのではない
5 PTSD:経験したトラウマに関する恐れ、OCDは起こるのではないかという恐れ
6 その他:ビタミンB12不足、チック、トゥレットなど
<強迫性障害と強迫性パーソナリティ障害>
強迫性障害
強い不安を生む、望まない、反復的、侵入的な強迫観念があります。
手洗いや確認などの強迫的な繰り返し行動を行います。そうした強迫行動によって強迫観念から発生する不安を緩和します。
自分の症状について現実的に見ることが出来ることが多いです。気にしていることが 論理的でないことや、強迫行動が異様で無意味であることを知っていることが多いです。
強迫性人格障害
柔軟性がなく、規制を重視し、完全主義的な性質を持っています。
頑固で賢い性格のスタイルを持っています。
症状自身によってあまり煩わされることがないです。問題を感じるとすると症状自体からよりも、症状のために起こる人間関係のトラブルに煩わされることからという場面が多いいです。
OCDの定義をどのようにするかについては、依然として曖昧な部分が残されています。しかし、歴史的な見地から眺めると、通常2つのアプローチが考えられます。一つは、共通点を見つけ、それを共通項として大きな括りに束ねようとする「収束タイプ」と、もう一方は相違点を発見して、細分化を進める「分割タイプ」の二つです。OCDについても、やはりこの二つのアプローチが存在します。
収束タイプ
収束タイプの専門家は、こうした分類における葛藤から、類似した症状をもつ障害を一つのグループにまとめることを試みました。ホランダー(Hollander)らは症状学、疫学、家族歴、神経生物学、依存症(comorbidity)、治療反応などの面から強迫性障害と重複すると思われる一群の生涯を強迫関連障害(obsessive-compulsive disorder-related disorder)と称してグループ化を図りました。
分割タイプ
収束タイプに代表される、強迫性障害スペクトラム障害や強迫性関連障害のように類似した障害を一つにまとめる作業とは逆に、強迫性障害をさらに細分化する動きもあります。強迫性障害を特性によって幾つかの下位タイプに分類するのです。最近では、それら細分化した下位タイプ間の違いを脳内の活動によって明らかにする試みなども行われています。 典型的なタイプ分けの例として、ジェニキ、ベア、ミニチェロ(Jenike、Baer、Minichiello)の5つの下位タイプをあげることができる。強迫性障害の下位タイプには以下のものがあります。
Obsessive-Compulsive Symptoms on Admission の表を邦訳したもの
Hodgson&Rachman(1998) The Epodemiology and Clinical Features of Obsessive-Compulsive Disorder