1.はじめに
発売から既に1年以上が経過し,その上昨年10月にはNew ニンテンドー3DSおよびLL(New3DS,New3DSLL)が発表され,ますますその存在感が薄まりつつあるニンテンドー2DS(2DS)。最近ではポケットモンスターオメガルビー・アルファサファイア(ポケモンORAS)の発売に合わせ,スケルトン仕様の2DSが英国任天堂から発売された(その後,北米でも発売)。任天堂の携帯ゲーム機でスケルトン仕様の機体が世に出たのは,2002年に発売された「ちょびっツ for Gameboy Advance」以来でなんと約12年ぶり(ちょびっツという時点で既に時代を感じざるを得ない)ということもあり,少し話題になった。私(nohm)も2DSの醸し出すかつてのゲームボーイカラー(GBC)を彷彿とさせるプラスチックの質感に心を揺さぶられ,それを計ったかのように生じた渡米機会も相まって,発売の2週間後に現地で購入してしまった。その後,先にも書いたようにスケルトン仕様が発表され,これまた強烈な玩具感の誘惑に耐えることができず,ちょうど1年前に12月に英国Amazonから2台目を購入。現在2台の2DSを所有(ちなみに,所有している3DS系のハードは3DS1台,3DSLL2台,2DS2台である)し,最初に購入した2DSを使用して2年が経過した。さらに2016年2月には初代ポケモンソフトのVCとの同梱版として2DSがついに日本で発売された。そこでこの記事では日本人のゲーマーから見て,2DSはどんなハードなのか?2DSは買うべきなのか?といった疑問に,使用感とともに仕様を3DSと比較しながら答えていきたいと思う。
2.2DSと3DSの違い
2DSと3DSの違いで真っ先に挙がるのは,やはり名称にもある通り,「上画面の3D機能の削除」であろう。3D機能を(建前上)前面に押し出していた”3D"Sで,姉妹機がその機能を捨てたのは軽い衝撃であり,発表当初はコラ画像と疑う者がいたほどである。しかし,3D機能は一部で不要論も根強かったので実際にはほとんど驚かれなかった。現にこれまで2年間2DSを使ってきて3D機能の削除によって感じた不便は全くない。むしろ操作ミスで3Dボリュームが上がって不意に3D画面が目に飛び込んでくる事故がなくなった分便利にすら感じられるくらいである。
次に挙げられる違いは「折りたたみ機能の削除」であろう。折りたたみ式筐体を採用しない機体もゲームボーイミクロ(GBM)以来約8年ぶり。折りたたみのヒンジ部が2画面の間に存在しないため,通常の3DSより2画面間のギャップは短くなっており,その分筐体全体の大きさも画面を開いた3DSより小さい。しかし,一般的な3DSソフトは2画面間のギャップが3DSを想定して設計されているものもあるため,2画面のつなぎの部分に若干違和感が出る場合もある(このギャップを全く考慮していないソフトの場合は逆に違和感は小さくなる)。筐体は折りたたんだ状態の3DS(および3DSLL)よりもちろん大きい。また,筐体の厚さは手前から奥に向けて分厚くなっている。手前の厚さは開いた状態の3DSとほぼ同じ,奥の厚さは閉じた3DSとほぼ同じである。これまでのハードは折りたたみ式が主流であった上,ヒンジ部の接触不良や破損による画面の乱れなどもよくあったが,ヒンジ部を削除したことで,筐体全体の堅牢性は上昇したといえよう。おそらく体重の軽い子供が本体を踏んでも致命的に壊れることはほとんどない。折りたたみの機能が削除されたことにより,スリープ機能は機体の折りたたみではなく,右下に備えたスリープスイッチをスライドすることで利用できる。
さらなる違いは機体のスピーカーがステレオではなくモノラルを採用している部分である。これはスピーカーがモノラルというだけであり,音声出力はステレオであるため,ヘッドフォンを通せばステレオ音源になる。実際のところ,機体のスピーカーがステレオであることの違いは大多数の人にはわからないので割と合理的なコスト削減であると思う。
公表されている違いはだいたいこのくらいであるが,もう1つ地味なコスト削減点が存在する。それは,無線機能のON/OFFスイッチの削除である。通常の3DSは無線機能を物理的なスイッチでコントロールしていたが,2DSではソフト的にコントロールする。実は画面の明るさなどを設定する項目に,ひっそりとワイヤレスのON/OFFを設定する項目が追加されている。
以上が主に挙げられる相違点である。逆にそれ以外には違いは見受けられない。使用可能ソフトも全く同じであるし(3DSで使用できて2DSで使用できないソフトも存在しない),3D機能が削除されているにもかかわらず,ステレオカメラもしっかりと備えている(当たり前だが2DS内で撮った写真を3Dで確認することはできない)。
3.使用感
2DSと3DSの違いは先ほど挙げた。その中でも書いたとおり,それらの違いがゲームプレイに影響を与えることはほとんどない。3DS機能はたまにしか使わないし,折りたためなくなったからといって操作感が悪化するわけでもない。スピーカーに関してもステレオ音はヘッドフォンを付ければ聴くことができるし,ワイヤレススイッチの削除がゲームプレイに支障をきたすわけでもない。つまり,2DSではほぼ3DSと同等にゲームをプレイすることができるのである。
ゲームプレイに最も大きな影響を及ぼすのは,そのような「機能の削除」ではなく,むしろそうしたことから生じた「形状の違い」であろう。先にも書いたが2DSは手前から奥にかけて分厚くなっておりくさびのような形状をしている。その外見に違わず奥のほうが若干重たくなっており,小指から中指で本体を支えたとき,中指に負担が集中しやすく,長時間持つと手(中指)が疲れやすい。3DSの場合は下部の筐体の分厚さが均等なため,このような負担の集中は起こりにくく,長時間持ち続けても手が疲れることはさほどない。
以上から2DSはプレイ時間が長時間化しがちなRPGやシビアなタイミングが要求されるアクションや格ゲーなどをプレイするときに中指への負担集中のため操作性が悪化する可能性がある。これらのゲームをプレイするときはある程度時間を区切り,負担を感じたら中断する必要があるだろう。
4.2DSが日本で発売されることはあり得るのか?
2DSはもともと3DSの販売価格が高いとされている国での販売を想定した3DSの廉価版である。しかし,3DSと2DSの販売価格の差は高々ソフト1本分にしかならない。日本人のゲーマーから見るとこの差はそれほど大きくないように思えるし,2DSは折り畳みの削除により外観そのものが3DSに比べて価格差以上にチープに見えてしまう(そのチープさに惹かれるゲームボーイ世代は確実にいるであろうが)。また,占有面積も大きいのでポケットに入れて持ち運ぶのも難しい。
以上のように日本では2DSのデメリットばかりが目立ってしまうため,3DSがあるのに敢えて2DSを選択するという状況は発生しにくい。したがって,廉価版というもともとのコンセプトの下で2DSが日本で発売されることは恐らくあり得ないだろう。
…というのが2015年12月25日までの見解だったが,2DSが日本で発売された現在でもこの考えは変わらない。ポケモン同梱版の2DSの顧客ターゲットは明らかに携帯ハードのカラーバリエーションにスケルトンが存在していたポケモン第一世代であり,本体自体も3DSの廉価版としてではなくコレクションとしての要素が強い。
5.2DS買うときに注意すべきこと
まず第一に,本体のポーチは必須である。2DSは折り畳んで画面を保護することができないため,常に2画面とも剥き出し状態になる。そのため2DSには珍しく任天堂純正の本体ポーチが存在する。本体と同時購入することを強く推奨したい。先とほぼ同じ理由で画面保護フィルムの使用も推奨したい。2DSの画面の大きさは通常の(LLやnewでない)3DSとほぼ同じなので一般に出回っている3DSの画面保護フィルムをそのまま流用できる。
6.おわりに
日本人視点で2DSを紹介してきた。2DSは3DSとの機能差で見ると日本人にとっては割高な上,形状の違いによりむしろ悪影響を受ける可能性があるので,節約のために2DSを買うという選択はほぼないと言っていい。しかしその一方で単純化された筐体は子供が踏んでも壊れにくいし,スケルトンカラーに強く惹かれる人には一考の価値があるだろう。本記事がポケモン同梱版2DSの購入の際に参考になれば幸いである。