教科書公開質問

中学校用歴史教科書採択に関する質問状

平成二十四年 二月 二十日

日本会議三重 伊勢支部 支部長 堀崎 萱二

伊勢市長 鈴木 健一 様

伊勢市教育長 宮崎 吉博 様

伊勢市教育委員長 楠田 英子 様

昨年 平成二十三年は、平成二十四年度から使用される中学校の教科用図書選定の年であり、伊勢度会採択区でも、各教科一社の教科書が選定された。しかるに、採択後に公開された「平成二十四年度使用教科用図書調査報告書 」「平成二十三年度伊勢度会地区教科用図書採択協議会報告書」「教育委員会議事録」などを見るかぎり、伊勢度会採択区では、「地方教育行政法」第二十三条、また、「教科書採択の在り方の改善について」(平成二年三月二十日付、文部省通知)などに反する「違法採択」が行われた可能性が高く、まことに遺憾なことである。

「地方教育行政法」第二十三条には、「教科書その他の教材」を「管理し、執行する」権限は、民間の教育委員会にあることが明記されている。また、「教科書採択の在り方の改善について」(平成二年三月二十日付、文部省通知)でも、「学校で使用する一種類の教科書を決定すること(採択)は、教育委員会のなすべき仕事のうちで、最も大切なこと」と明言されている。それにもかかわらず、前出の三つの公文書を見る限り、伊勢度会採択区での教科書の採択にあたっては、民間の教育委員ではなく、実質的には事務方の「社会科部長」の判断によって採択されている。それのみならず、その「社会科部長」は、多くの市民のアンケート結果や、民間の教育委員の意思を故意に無視し、強引に一社に絞り込んでいる。

つまり、先の「教育委員会議事録」に即して言えば、複数の教育委員が、ある教科書会社の教科書を推薦しているにもかかわらず、合理的な根拠もないまま、結果的には「社会科部長」という謎の人物が決めた会社の教科書が採択されているのである。これは、きわめて非民主的で、かつ疑惑に満ちた採択というほかない。密室での不透明な採択と見なされても、いたしかたのない採択過程といえる。

かかる事務局の「違法」な越権行為については、同様の例が、他県にも見られ、近年は、石川県の加賀市、また同じ石川県の「小松・能見採択地区協議会」などにおける、事務局から教育委員への「圧力」が、新聞紙上でも批判されはじめている(『産経新聞』平成二十三年十二月五日・同十二月六日)。そのような「圧力」は、民主的な採択制度を、根本から脅かす許しがたいものであり、私たち市民としても、とうてい看過することはできない。

よって私たちは、今後、少なくとも「伊勢度会採択区」では、二度とそのような「違法採択」が行われず、法律に則った正常な採択が行われるようになることを強く要望し、かかる懸念に対する正確な情報の公開を求める。

ついては以下の三点を、私たち市民は法に則り行政当局に対して中学教科用図書採択の方法についての質問に対する回答を、強く要望する次第である。尚、係る質問に対しての回答を本質問状送付の一か月後にあたる平成二十四年三月二十日までに文書でご回答いただくと共に、貴市ウエブサイトにおいてもご回答頂きたい。

お答えいただいた内容は、そのまま有志に情報提供すると共に報道関係各社にも資料として送付する。

期日までに回答を頂けない場合は「ご回答の意志がなく、公開質問を拒否された」ものと判断し、返答が無かった旨を貴市からの回答と代える。

一、

事務局が作成する「選定資料」は、あくまでも「教育基本法」と「学習指導要領」を基準にして作成され、「教育基本法」と「学習指導要領」に照らして議論されるべきであり、それ以外の恣意的、且つ曖昧な判断基準を持ち込んでいなかったか。

1.今回選定された教科書のどういう部分が、他の教科書に比べて教育基本法及び学習指導要領に「最も」即しているかの説明が不十分 であり、明確な判断基準を公開されたい。

2.平成二十三年六月及び七月に実施されたアンケート結果の詳細を公開されたい。

3.今回選定された教科書は、事前に実施されたアンケートの結果が反映されていないと考えられるが、反映されていない理由が明らか ではないので、アンケート結果と教科書選定に関する明確な判断基準を公開されたい。

4.教育基本法に謳われている「郷土を愛する心を養う」ためには、教育委員会議事録でC委員が発言されている通り「伊勢にとっては伊 勢神宮や神話がキチンと記述されている教科書が良い」と思うが、このC委員の発言に対しての明確な回答と判断基準を公開された い。

二、

事務局の仕事は、あくまでも参考資料の作成を行うにとどまるものであり、教科書の選定は、開かれた民主的手続きのもと、民間の教育委員のみで行われていたか。もしも教育委員の間で、意見が分かれる場合は、教育委員のみによる多数決で、採択が決定されたか。 (神奈川県・藤沢市の議事録を参照されたい)。

1.「社会科部長」なる人物の氏名が判る教科書調査員名簿を公開されたい。

2.教育委員会議事録によると「これは採択をしていただかないと先へ進みません」との教育長の発言は、事務方トップである教育長が採 択の結果を誘導しているように見受けられ不適切だと考えられるが、不適切であったか正しく検証し回答を公開されたい。

3.教育委員会議事録にある、近隣の教育委員会との情報交換の中身を公開されたい。

三、

民間の教育委員に最終決定権があるのであるから、今後、そのことをシステムとして担保するため、伊勢市は単独の採択地区とすることを検討し回答を公開されたい。(現に、すでに文部科学省は一教育委員会・一採択区を実現するための法整備に乗り出しているが(『読売新聞』十二月五日)、現在の法律下でも、伊勢市が単独採択区とすることには、何の支障もないと考えられる。)

以上