研究紹介

近年、携帯電話などの新たな情報通信技術の普及などを背景として、社会・経済と関連した詳細なデータが容易に入手できるようになってきており、そのようなデータを解析する上で情報科学の役割が重要になっています。私たちは、複雑ネットワーク、非線形科学をキーワードとして、データ解析からモデリングまで幅広く研究を行っています。藤原の詳細な研究業績はresearchmapをご覧ください。

空間経済学・地域科学・空間情報科学・数理工学・データ科学など、幅広い視野で研究を行いたい方は、どのようなバックグラウンドでも歓迎します。

コロナ禍における人流分析

新型コロナウイルスのパンデミックは、現代でも非医薬品介入しか対策が存在しない事態が発生しうることが明らかになりました。そのような状況下において、感染拡大を特徴づける実効再生産数𝑅(𝑡)と人流指標の間に相関があることを報告しました(Yabe et al. (2020))。

また、新型コロナウイルス感染症の第1波と第2波の人流データを分析することで、①目的地の人口密度が大きいほど外出を自粛する傾向②緊急事態宣言時には外出自粛が増加すること③コロナ禍が長引くにつれて、人流がコロナ以前の水準に近づくこと、を明らかにしました(Tsuboi et al. (2022))。

新型コロナウイルス感染症第1波の時期の、正午における東京人口密度の時系列と、新規感染報告数の時系列。Yabe et al. (2020)より。(Licenced under CC BY 4.0

人流ネットワーク解析

地域間の人の流動量は、人流において興味が持たれるポイントのひとつです。このような流動量のデータはネットワークと見なすことができるので、ネットワーク分析に適しています。我々は、地域間通勤流動量データから、空間的に連続した、我々の「地域」の直観とよく合う階層的クラスター構造が抽出されることを明らかにしました(Fujishima et al. (2021))。

都市形成の数理モデル

都市の形成は、空間経済学など多くの分野と関連があるテーマですが、我々は地形の衛星画像などのデータを用いたシンプルな数理モデルを提案し、現実の人口分布再現できることを示しました(Aoki et al. (2022))。モデルの数理的構造についても解析を行っています。


都市形成数理モデルにおいて地形が果たす役割。海岸線、標高、水域を考慮すると現実の都市に近い場所に人口密集地帯が出現する。Aoki et al. (2022) より。(Licenced under CC BY 4.0

移動する振動子ネットワークにおける同期状態。色が振動子の位相を表す。Fujiwara et al. (2011)より
© American Physical Society 

ネットワーク上の非線形ダイナミクス

ネットワーク上においては、その構造と非線形現象が関係して興味深い現象が発生します。Fujiwara et al. (2011)では、非線形振動子を持つ素子が時間とともに移動しながら近接する素子と相互作用して同期するモデルを考察しています。ネットワーク構造の変化と局所的な動機達成という異なる時間スケールを導入し、それらの時間スケールに応じて異なる機構で同期が達成されることを示しました。