コンサートやお祭りで黄緑やオレンジ色に光る棒をみたことはありませんか?
あの光は電気や火を使わなくても光ります.それはなぜでしょうか?
それは化学反応で光らせているからです!
そう,化学反応のというのは塩酸に金属を入れると水素 (泡) が発生したり,水に電極を入れると水素と酸素が反応したり,塩酸と水酸化ナトリウムを混ぜると塩ができたり,身近な所ではお酢に卵の殻を入れると二酸化炭素が発生したり….
例を挙げるときりがありませんが,その化学反応のことです.
その化学反応によってあの怪しげな光をつくることもできるのです!
この実験ではそれをつくってみようというものです.
その前に…ちょっと説明させてね.
化学発光,化学発光と言いますが,化学発光には3種類のタイプがあるんです!
ルミノール反応という化学反応による発光
ルミネセンスによる発光
生物の発光
最初のルミノール反応という化学反応による発光というのは…そう,サスペンスや殺人事件などの事件現場などで血痕を見つけるために使われる青白い光ですね.
これはルミノールという物質をオキシドールや鉄で変化させて光らせるというものです.
次のルミネセンスによる発光.
これは前に述べたコンサートやお祭りで見かける光る棒で使われているものです.
これは A 液と B 液があって,これを混ぜ合わせることにより,蛍光物質を発光させます.
↑稚拙な図だけど,原理はこんな感じ…
だから,蛍光物質の色を変えると発光する色も変わるのですよ!
最後の生物の発光というのは,その名の通り生物の体内で起こっている化学発光です.
例えば…ホタルとかウミホタルがそれにあたります!あれも化学反応で光っているんですよ.驚きました?
今回は色を変えることができるルミネセンスによる発光について実験しようと思います.
試薬
Bis-(2,4-dinitro phenyl) Oxalate: DNPO
フタル酸ジメチル (フタル酸-n-ブチルでも代替可)
30% 過酸化水素水
第 3 ブチルアルコール
サリチル酸ナトリウム
ペリレン (蛍光物質)
ローダミン 6G (蛍光物質)
フルオレセイン (蛍光物質)
ローダミン B (蛍光物質)
器具
50ml ビーカー
駒込ピペット
ミクロスパチュラ
ガラス棒
試験管
0.1g DNPO をフタル酸ジメチル 20ml に溶かし,これを A 液とする.
30% 過酸化水素水 1ml と第 3 ブチルアルコール 4ml をビーカーに取り,フタル酸ジメチルを加えて 20ml にする.
2.の液にサリチル酸ナトリウムをミクロスパチュラ 1/2 ほど取って溶かす.これを B 液とする.
蛍光物質をミクロスパチュラで取り,試験管に入れる.
4.の試験管に A 液を 5ml 加えて,発光物質を溶かす.
B 液を加え (この時点で光りだす),よくかき混ぜて,暗所で観察する.
1. 〜 6. の操作をペリレン,ローダミン 6G,フルオレセイン,ローダミン B について行う.
まず溶液調整!
↑A 液の様子
透明な液体です.
↑B 液の様子
少々黄色みがかった液体です.
さて発光実験.まずはペリレンを蛍光物質として実験します.
ペリレン自身の色は黄色です.
ペリレンは写真や動画のように青緑色に,強く光る.
う〜む.実に怪しい.学校祭のお化け屋敷の火の玉にでも使うか (ぉぃ.
次にローダミン 6G を蛍光物質として実験します.
ローダミン自身の色は鮮やかなピンク色 (蛍光ペンのピンク色) です.
ローダミンはその性質上 A 液には溶けにくい.そのため試験管にローダミンを入れた後に,B 液を入れ,最後に A 液を加えた.
ローダミン 6G は写真や動画のように黄色っぽい橙色 (火のような色) になりました.
発光時間としてはペリレンより短いようです.光の強さとしてもペリレンより弱い感じ….
そしてフルオレセインを蛍光物質として実験をします.
フルオレセイン自身は淡い黄色をしています.
A 液と B 液を加えると…変化がない!
なんということだ!
どうやら実験は失敗してしまったようだ.う〜む実に残念!
失敗と言うよりフルオレセインは十分な蛍光物質ではなかったということがわかった.
さて,気を取り直して,最後にローダミン B を蛍光物質として実験します.
ローダミン B 自身は鮮やかなピンク色 (蛍光ペンのピンク色)をしています.
ローダミン B は写真や動画のようにほの暗い赤色になりました.
前の光った 2 つの発光物質に比べると,元気がない感じだ.でも光ったからよし!
ネットで文献を調べると,もう光らなくなった液にお湯 (80℃) を入れると,再び強く光るとあったので入れてみる.
…何も起こらない! ただ液とお湯が分離しただけ.
おそらく,その文献は "かき混ぜる作業" を "お湯を入れたときの勢いでかき混ぜている" だけななのではないだろうか?
それに化学反応は温度が高いと反応しやすくなるから,お湯を使ったのではないだろうか?
ペリレンは黄色だが,青緑色に,強く光る.
ローダミン 6G は鮮やかなピンク色 (蛍光ペンのピンク色) だが,黄色っぽい橙色 (火のような色) に光る
フルオレセインは淡い黄色だが,光らない!
ローダミン B は鮮やかなピンク色 (蛍光ペンのピンク色) だが,ほの暗い赤色に光る.
ただ単に文献通りに混ぜて光らせるだけではつまらない.それに DNPO は高い! (我々が使ったのは 1g で 4,700円!!)
そこで!DNPO に似た試薬でも光るか実験してみる.
Oxalic Acid Diphenyl Ester (シュウ酸エステルの一種)
Diethyl oxalate (シュウ酸エステルの一種)
Dimethyl oxalate (シュウ酸エステルの一種)
Dibutyl oxalate (シュウ酸エステルの一種)
これらを DNPO の代わりに使う.
シュウ酸エステル約 2.4×10-4mol をフタル酸ジメチル 20ml に溶解し,これを A 液とする (シュウ酸ジメチル 0.028g ,シュウ酸ジエチル 0.035g ,シュウ酸ジブチル 0.048g ,シュウ酸ジフェニル 0.057g ) .
30%過酸化水素水 1ml と第3ブチルアルコール 4ml をビーカーに取り,フタル酸ジメチルを加えて 20ml にする.
2.の液にサリチル酸ナトリウムをミクロスパチュラ 1/2 ほど取って溶かす.これを B 液とする.
ペリレンをミクロスパチュラで取り,試験管に入れる.
4.の試験管に A 液を 5ml 加えて,蛍光物質を溶かす.
B 液を加え,よくかき混ぜて,暗所で観察する.
反応がうまく進むように液を H+存在下 (塩酸を少量加えて) での反応も同様に行う.
※○は発光あり,×は発光なし,—は実験してない項目を示す.
DNPO はシュウ酸エステルの一種であったので,シュウ酸エステルであれば何でも発光するものと思って実験したが,シュウ酸エステルの代わりに試したものは全部発光しなかった.(´・ω・`)ショボーン
反応がうまくいくように塩酸を加えたが,それでも DNPO の代わりのものは発光しなかった.
最後にサリチル酸ナトリウムを加えないで,DNPO について実験してみたが,サリチル酸ナトリウムを加えなくとも発光した.
しかし,サリチル酸ナトリウムを入れて発光するよりも,いくらか光が弱いような気がした.
これはサリチル酸ナトリウムが反応がうまくいくように作用しているためで,なくても反応が進行するということがわかった.
追加実験はどちらかというとあまりいい結果が得られなかったと言える.でも次は頑張る YO (`・ω・´)シャキーン.
DNPO の他に TCPO (Bis-(2,4,6-Trichloro Phenyl) Oxalate) も代用することが可能です.しかし,価格が高いです.