立石 祐樹
国立感染症研究所 寄生動物部/東京大学 医科学研究所
博士課程4年
本年度の分子寄生虫学ワークショップ/分子寄生虫・マラリア研究フォーラムは、数年ぶりの合宿形式での開催となりました。今回、印象記を執筆する機会をいただきましたので、初参加の私が感じた本ワークショップの魅力について綴っていきたいと思います。
本ワークショップは、学生から大御所の先生方まで幅広い年代の研究者が参加し、全員が発表しますが、質疑応答の時間が10分と長く、普段の学会では見られないような白熱したディスカッションが行われます。本ワークショップの目玉とも言える質疑応答ですが、普段の学会では経験できないような核心を突く質問や建設的な助言をいただくことができ、自分の研究内容を多角的に考えるトレーニングになります。私自身も本ワークショップでは発表に対して様々な質問や助言をいただいたことで自分の研究を客観的に見つめ直す機会を得ることができました。
会の合間には、ペタンク・ビアホール・BBQなどの様々なレクリエーションが企画されており、発表での疲れを癒すだけではなく、普段の研究生活の中では交流することのない他研究グループの方々とコミュニケーションをとることができます。またレクリエーション企画により、初参加や単独参加の方でも気軽に交流する機会を得ることができます。特に大学院生は他の研究グループとの交流の場を持つ機会がないため、このようなレクリエーションを企画していただいたことは同年代とのコミュニケーションを持つ上でとても助かりました。夜にはお酒を飲みながら、普段の学会ではお話することができないような先生方と研究を含めた様々な熱い議論を重ねて、交流を深めることができました。
今回、このような素晴らしい会で非常にありがたいことにBPAを頂くことができました。今回の受賞を励みにこれからも努力してまいりたいと考えておりますので、今後ともご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
最後になりましたが、本会を企画運営いただきました世話人の先生方、その他準備や当日の運営などを行っていただきました長崎大学の皆様に厚く御礼申し上げます。
中村 咲蓮
北里大学 獣医学系研究科
獣医寄生虫学研究室
博士課程2年
今回初めてこの大会に参加させていただきました、北里大学獣医寄生虫学研究室の中村咲蓮(なかむらさくれ)です。本大会にて有難いことにBPAを拝領いたしましたので、印象記を綴らせていただきます。はじめに、素晴らしい学びと交流に終始充ち満ちた会を準備、運営してくださった世話人の先生方に御礼申し上げます。ならびに、初参加の私を温かく迎え入れ、数々のご助言と激励をくださった諸先生方、研究の面白さと大変さの両面で共感しあった学生参加者の皆様にも心よりの感謝を申し上げます。
さて、本大会は決して堅苦しいものではなかったので、その印象記もまた堅苦しくなく書きたいと思います。史上最も暑いとまでいわれた2023年夏の長崎にて行われた三泊四日、合宿形式の本大会は、私にとって”予想外”の連続でありました。
まずは、これは大会内容との関連はないものの話さずにはいられない、羽田空港での立ち往生です。青森から順調に羽田まで来たのはいいものの、空港上空にて発生した雷雲で運行が一時見合わせ。猛烈な雨のなか海のように波立つ滑走路と閃く雷を眺めながら待つことおよそ三時間、ようやく長崎に着いたのは開始予定時間を大幅にまわった暮時でした。しかしこれも怪我の功名で、時を同じくして足止めをくらった他の参加者の方々との間に連帯感が生まれ、到着直後の夕食時にも団欒に混ぜていただける運びとなりました。またこの遅れを受けて夕食後に変更になった講演では、皆さんビール片手に席につき、「カンパーイ!」で開始、これにも正直驚きました。私はこれ幸いと冷えた缶ビールをいただきましたが、それまで本大会に対してあった“学会”の認識は瞬く間に吹き飛びました。そして、「ここは襟を正して研究成果を整然と語る場ではない、立場や分野を問わず腹を割って研究のあれこれを話し合う場なのだ」と悟りました。
相部屋も予想外な出来事の一つです。全く見知らぬ人と同室で寝泊まりするのは人生初だったので、いざ部屋に入るまではド緊張でした。しかし蓋を開けてみれば長崎大の林下さん、Juneさん(ここはあえてニックネーム)、東北大のLinさんとはあっという間に打ち解け、2日目の朝食を食べ終えるころにはプライベートやこれまでの研究生活の話で盛り上がり、グループラインをつくり、最終日には皆で食事に行くほど仲良くなりました。多国籍だったことから、部屋での公用語は英語だったのも刺激的でした。最初はどうなることかと不安でしたが、貴重な経験と素晴らしい友人を得たように思います。そして、バーベキューでの林下さんの入籍発表!まさにとっても素敵な予想外でした。
最も予想していなかったのは、BPAの受賞でした。というのも、元より私には本大会に参加される方々の多くが原虫、なかでも人体寄生虫症に関わる研究をしていらっしゃるという認識がありました。そのなかで、ニッチな蠕虫の、さらにPhilopinna higaiというニッチ極まりない魚類寄生吸虫の話題を持っていく私は、場違いだろうとすら思っていたのです。ところが発表を終えて質疑応答になると、たくさんの先生方、学生の皆さんから非常に有意義な質問やご意見を多数いただき、規定時間を超えてもディスカッションする時間をいただきました。その後も、釣った魚に寄生していたDidymozoidae科吸虫の写真を見せていただきながら尽きない興味や感動について話す機会を得たり、今後どうやって研究を進めてゆくのが面白いかと膝を突き合わせて真剣に考えていただけたり、それはもう言葉には尽くしがたい素晴らしい時間となりました。そして、BPAをいただけるとの発表があり、思わず口から「噓でしょう」との言葉まで漏れましたが、皆さんの激励として光栄に思い、ありがたく拝領いたしました。面白さが伝わりにくい研究をやっているという自覚がある分、伝わるようにということを心掛けてプレゼンテーションすることに努めてきました。この度の受賞が、参加者の皆さんに面白い、もっと知りたいと思っていただけた結果であれば、これほど嬉しく励みになることはありません。
結びに、今後新たにこの大会に参加することを考える学生の方には、ぜひ参加してくださいと記しておきます。寄生虫学そして研究への興味と、それを誰かに伝えたいという思いを携えて行くなら、それは必ずかけがえのない知と感動に満ちた経験になるでしょう。研究にもペタンクにも全力でアツくなれる先生方と、同じ熱意を抱く学生が待っています。
最高にアツい4日間をありがとうございました!さらにも増して研究成果をお話できるよう今後とも精進して参ります。