「森脇和郎賞」

設立趣意

毛色変異の遺伝からはじまったマウス遺伝学が誕生して、ほぼ百年が経過致しました。その後、遺伝子地図が整備され、がん研究や免疫学でマウス遺伝学の重要性が広く認められようになりました。さらに、リバースジェネティクスの進歩や最近のゲノム解読によって、マウスは全ての基礎生命科学と医学研究において他の追随を許さないモデル動物の地位を確立しています。

 このようなマウスを用いた遺伝学の発展は、優れた研究者の独創的な発想とたゆまない研鑽とともに、研究の土台となるマウス系統の開発や技術開発などの基盤整備を担ってきた一部の研究者の血の滲むような努力があったことも忘れることができません。この状況は、マウス遺伝学が目覚ましい発展を遂げた現在においても変わりません。

 これまで、残念なことに研究の基盤整備を担ってきた方々の貢献に対する報償制度は整っていませんでした。また、他の研究分野と比較して成果を上げるまでにより長い時間と大きな労力を要するマウス遺伝学に進んで参加しようという若手研究者を奨励するための制度もほとんどありませんでした。私たちは、研究の基盤を支えることに貢献された方々を称え、それとともに今後のマウス遺伝学の担い手である若手研究者を奨励するための賞の設立が今こそ必要であるという認識を共有するに至りました。

 モロシヌス研究会(哺乳動物遺伝研究会)は、今から20年ほど前に我が国のマウス遺伝学分野の交流を促進する目的で設立されました。この研究会が、フォワードジェネティクスとリバースジェネティクスを統合し、基礎から応用にわたる広範なマウス遺伝学分野での情報交換にユニークな役割を果たしてきたことはご存じのとおりです。私たちは、この20年という節目に、マウス遺伝学の基盤整備に貢献した研究者を称え、合わせてこれからのマウス遺伝学を担う若手研究者を奨励するための新しい賞を設立することと致しました。この賞は「モロシヌス研究会」の設立者である森脇和郎氏の名を冠して「森脇和郎賞」と命名致します。

 この賞の設立が、マウス遺伝学を支える多くの方々の貢献への思いを新たにし、マウス遺伝学のさらになる発展に資することを切望いたします。

平成17年10月1日

モロシヌス研究会(哺乳動物遺伝学研究会)

幹事一同