地球観測における補償光学系の応用

人工衛星による地球観測では、高度600kmの軌道から地上の1m未満のものを識別できるほどの高い解像能力が求められます。一般的に、望遠鏡では口径(レンズ、またはミラーのサイズ)が大きいほどレンズの形状による像のボケは小さくなり、かつ多くの光を集められるようになるため、高い解像能力の実現には、大型の望遠鏡が必要となります。

一方、宇宙空間で使用される望遠鏡では、軌道上の熱入力による熱歪み、打上げ環境や重力解放による光学素子のずれ、地上試験における調整誤差などの影響を考慮しなければなりません。特に大型の望遠鏡ではこれらの影響を受けやすく、打上げ前の調整だけでは抑え込むのは非常に難しくなります。

そこで、軌道上でより多くの自由度を持った高度な「オートフォーカス」を行うことが考えられます。本研究では、天体観測において大気揺らぎの補正に使用される補償光学系を応用して、この問題の解決に取り組んでいます。

地球観測における償光学系の概念を下図に示します。様々な影響により歪んだ光の波面を、形状を変形させることができる薄い鏡(デフォーマブルミラー)に導き、きれいな波面に補正します。このとき、どのようにして波面の歪みを検出するか、または波面が補正されたことを確認するかということが重要な課題になります。本研究では観測画像のフィードバックにデフォーマブルミラーを積極的に活用することにより、これらの課題を解決しています。

補償光学実験装置を下図に示します。この装置ではレーザー光源による光束をデフォーマブルミラーに導き、光の波面を様々な形に変化させます。その後、ビームスプリッタを用いて光をカメラと波面センサに導き像と波面を測定します。