「福島原発事故後の強制退避と介護保険利用」

Mass Evacuation and Increases in Long-term Care Benefits: Lessons from the Fukushima Nuclear Disaster, PLOS ONE, 14(9): e0218835, 2019 (with Tomohiro Morita and Yui Ohtsu) [Paper]

これまで、福島原発事故後に強制避難の対象となった自治体の高齢者において介護保険サービス利用が増加することが知られていました。しかし、その増加がどのように生じているかは十分に検証されていませんでした。そこで、福島県の強制避難地域に指定された自治体の介護サービス利用が、それ以外の自治体と比べてどう異なるかを調べました。すると、避難地域自治体の高齢者一人当たりの介護保険サービス利用増は、とりわけ要介護認定率の増加すなわち新規のサービス利用者の増加によって引き起こされていました。また要支援・要介護度別にみると、要介護5以外の全ての認定区分の認定率が増加していました。

この結果は、介護保険が災害に起因する介護ニーズ増への「保険」として機能していることを示す一方で、災害によって発生する介護負担や財政負担をどう分かち合うべきかについてのさらなる議論の必要性を示唆しています。

注:『介護保険事業状況報告』の自治体統計より作成。福島県の自治体および津波被害を受けた自治体は比較対象の自治体から除いている。

注:論文中のFigure 4より作成