2020 研究記録

市場は一大変革期を迎えており、その実態は経済学の教科書的構図と大きく異なっている。また、市場の研究は大きく進んでおり、研究内容と経済学の教科書の内容との間には、否定しがたい大きなギャップが生じている。しかし、市場の理論としてまとまった本格的な書物はまだ存在していない。そうした認識のもとに、 本書は、そのような最初の書物となる目的を持って書き上げられた、3部構成で13章からなる。その内容は、市場をめぐる過去の思想の広大な山並みを振り返り、クールノーを現代の市場理論の始祖と位置づけ、ミクロの森を支配してきたワルラスの完全競 争からの脱却を図るミクロ経済学の進化を展望し、さらに、市場メカニズムの虚構としてのアダム・スミスの「見えざる手」の神話を解き明かすことを試みた 。そのために、「場としての市場観」と「市場の動態論」という視点に立つことによって、市場経済の運動法則として「市場の編成原理」を提起した。