教育制度

私の所属するDepartmet of Biological Sciencesではポスドクは全体で五人前後で、研究の多くは学生によって担われている。研究室に出入りする学生は学部生、修士の学生(二年間)、博士の学生(五年間)がいる。修士は学費を払い、博士だと生活費がPI(研究室長の教授)の研究費から出ているようである。また授業のTA(試験の採点や質問対応などの助手)などを大学院生が行うことで多少の経済的支援を受け取ることもできる。修士が終わったのちにで博士に編入したり、博士を中退する場合でも修士号を授与されたりすることもある。


他に、visiting studentなども来る。様々な国から、夏の間二ヶ月ほど来たり、あるいはまるごと一年ほど来たりする。Visiting studentはだいたい奨学金を持ってくる。私自身は博士三年目の夏にリーディング大学院の資金で二ヶ月今の研究室に滞在し、実験や解析方法を習った。なお、それはポスドクとして働くという将来を見据えて、今の上司と私が互いを吟味する期間でもあった。しばらく過ごしてみて研究環境がとても良さそうだったので、学位取得後に、今度はアステラス製薬の研究留学フェローシップを頂いて同じ研究室に戻ってきた。そのときその研究室にいた学生が、彼女自分のポスドク候補先でも同じように短期滞在をし、無事にそこに就職していった。

学部生は一年生から、研究に興味があれば研究室で実験や解析を習うことができる。Honorと呼ばれる成績上位者のグループが主にリクルートされる。こうした、学部生専用のフェローシップがあって、研究が推奨されており、ちゃんと給与が出る。給与は、大成した古い卒業生の寄付金などで賄われているようだ。彼らは研究者になりたいものもいるが、別の大学院に進みたい、あるいはコンサルティングや法学など全く別のものに興味がある場合もある。医学部に進みたいと思っているものも多い。米国では医学部は大学院になるので、生物や化学などの学部を卒業してから試験を受けて医学を学ぶ大学院にはいるのだが、その時に研究室での研究の経験があると、その研究室の教員から推薦書を得ることができる。ともあれ、学部生の研究が制度化されていることで、学生の立場は保護されるし、その研究室や研究環境が合うか合わないかを、学生もホスト側も早めに互いに見極めることができる。


博士課程の学生は原則として多少の生活費が支払われている。日本だと最もメジャーなのは日本学術振興会の生活費+研究費であるが、それでも受け取れるのはごく一部(5-8%くらい)の学生である。さらに、全国的な制度なので、大学院生が少ないような地方大学だと、応募経験者が身近にいないといったリソース上の不利益があるかもしれない。

一見すると米国の教育支援制度のほうがよく見えるかもしれないが、しかし、米国の学部と修士までの学費は恐ろしく高い。一例として、州立大学であるバッファロー大学の学部生の学費は、ニューヨーク州出身者は一年で約200万円、ニューヨーク州以外の出身者や留学生はその2-3倍である(私大はもっと高い)。学費までアメリカ式を取り入れられたら大変なことになってしまう。そんな学費だったら私は大学に進学できなかっただろうと思う。