ハラスメントに苦しんでいる学生・院生の方へ

この文章は、研究室等でのハラスメントに悩んでいる学生、院生を念頭においています。あくまで一意見、情報提供であり、ここに書かれていることを実行した場合の一切の責任は負いません。また、私は法や臨床心理学の専門家ではないので、個人的な相談には応じられません。

ハラスメントが辛いと感じた時、まず学内にハラスメント相談室がないかを探して、相談しに行くのがいいと思います。まわりの人に相談してもいいのですが、家族、友人、専攻の教員が正しい専門知識を持っているとも限らないので(例えば、気のせいだよ、とか、君の甘えじゃないの?などと言われたら余計に傷つくことになるでしょう)、学内の適切な相談機関をあたってみるのがよいと思います。その時、落ち着いて情報を伝えられるよう、起きた出来事やそれに対してどう感じたかをまとめた紙を持っていくといいと思います。

ハラスメント被害者に対するサポート体制がどれほど充実しているかは、大学によってまちまちでしょうし、相談員が任期制で始終入れ替わってしまうということもあるかと思います。物理や化学などの学科の教員が、持ち回りで相談員を務めている相談室より、社会学、心理学の専門知識・資格を持つ教職員が開いている相談窓口のほうが、一般的には適切に助けてくれる可能性が高いと思います。


なかなか大学で適切な相談機関を見つけられない場合は、国の相談窓口があります。

法務局 http://www.moj.go.jp/JINKEN/index_soudan.html

厚労省 https://harasu-soudan.mhlw.go.jp/


まずはあなたの心の健康を第一に考えてください。おそらくまず提案されるのは、研究室を移動する、学科を移動する、などかと思います。もしかしたら、加害者側に罰を与えたい、補償を請求したいと思っているかもしれません。それは十分に理解できますが、その手続のためには大変な労力とさらなる精神的苦痛が伴うかもしれません。また、必ずしも思うような結果が得られるとは限りません。そのあたりをよく検討してみてください。

また、隣の研究室に移っただけでは、結局頻繁に加害者と顔を合わせるので嫌だ、というのも理解できます。あなたの幸福に対して一番いい選択肢だと思ったら、他大学への移籍、あるいはあなたがアカデミア就職志望だったら、アカデミア以外の就職も検討してもいいかもしれません。

海外に出て研究を継続することを検討してもいいと思います。私は今のところ米国の事情しか知りませんが、米国では日本の研究界隈で往々にしてある、「ハラスメントについて話すのは恥ずべきこと、話すべきではない、そんなものが存在すると認めたくない、触れたくない、それは被害者の考え過ぎや甘えである」というような空気は薄く、「被害者は守られるべき、ハラスメントは断じて許さない、力のあるものがハラスメントと率先して戦うべきだ」と考える研究者が圧倒的に多いです。米国でもハラスメントは存在します。しかし、助けてくれる人の数・パワーは概して日本よりずっと強力ですし、学生の権利がとても強いです。

もちろん、外国で研究をすることは、とくに若い人、学生にとっては容易ではないと思います。それによって余計な費用もかかるかもしれませんし、ストレートに日本で学位を取るより何年も余計な労力や時間がかかるかもしれません。なぜ加害者がのうのうと暮らし、自分が他の道を模索しなければならないのか、と理不尽に思うかもしれません。しかし、例えば特定の分野について学ぶには日本だとこの教員しかいない、という状況だったり、学会で特定の人と顔を合わせたくないから研究をやめる、というほどに追い詰められていたりするのであれば、外国を視野に入れて選択肢を広げていくことを検討していいと思います。