第14回九州人類学研究会オータム・セミナー(2015)

【2015年11月21日(土)~11月22日(日) 1泊2日】

【場所】※今年度は、2013、2014年度と同じ会場です。一昨年、昨年同様【発表会場】と【宿泊会場】が異なります。詳しくは、下記のご案内をお読みください。

【発表会場】

基山町民会館 1階第1会議室(初日)、2階会議室A(2日目)

( http://www.town.kiyama.lg.jp/soshiki/9/shisetsu-chominkaikan.html )

〒841-0204

佐賀県三養基郡基山町大字宮浦666番地

電話:0942-92-1211

最寄駅:JR基山駅(JR博多駅より快速列車で25分程度、九州新幹線新鳥栖駅から在来線乗り換えで15分程度)

JR基山駅から基山町民会館までは、徒歩15分程度(地域コミュニティバスあり)。

発表会場までのアクセスは、(http://www.town.kiyama.lg.jp/site/profile/kotuakusesu.html )をご参照ください。

【宿泊会場】

とりごえ温泉 栖(すみか)の宿 ( http://sumika-y.jp/index.html )

〒841-0087 佐賀県鳥栖市河内町2352番地

電話:0942-82-5005

最寄駅:JR基山駅、もしくは鳥栖駅。ただし、現地は駅から10km弱離れており、山の中腹にあります。

発表会場の基山町民会館まで来ていただければ、宿泊施設のバスが送迎します。

なお、2日目朝も宿泊会場から発表会場まで、宿泊施設のバスで移動します。

お車でいらっしゃる方は、( http://sumika-y.jp/access/index.html )をご参照ください。

【参加費】

学生:6,000円(宿泊費+1日目夕食+2日目朝食を含む)

一般(常勤有職者):8,000円(同上)

※会場には、フェイスタオル、丹前・ゆかたのみしかありません。

その他、部屋着、洗面用具(バブラシ等)はご用意ください。

【時間割】

11月21日(土)

13:00 現地集合、受付開始

14:00~17:00 セッションA:「世界遺産をめぐる文化ポリティクス-日本・九州の事例より」

17:10~17:35 宿泊施設のバスで【宿泊会場】(栖の宿)へ

18:30~ 懇親会

11月22日(日)

07:30 朝食

08:15~08:45 宿泊施設のバスで【発表会場】(基山町民会館へ)

09:00~12:00 セッションB:「マイノリティと学び」

終了後、現地(基山町民会館)にて解散

【参加申し込みにあたってのご注意】

①会場の都合上、一泊二日の全日程にご参加いただける方のみ受付いたします。

1日のみの参加は、基本的にはできませんのでご了承ください。

②ご参加申し込みの締め切りは、2015年11月13日(金)までとさせていただきます。

③お申し込みはreligion@lit.kyushu-u.ac.jp まで「セミナー参加希望」の旨をメールにてご連絡ください。

④お申込みを頂いた方には、11月13日(金)以降ご確認のメールならびに最終のご案内をお送りいたします。

⑤万が一、申し込み後にやむを得ない事情で参加取り消しの場合は、必ず事前にご連絡ください。無断でご欠席の場合には参加費用を頂戴することになります。

⑥参加費用は現地(今年度は【宿泊会場】)にて、お預かりいたします。

⑦すべての連絡はメールにてお願いいたします。電話連絡は緊急の場合のみご利用く

ださい。

以上

セッションA:「世界遺産をめぐる文化ポリティクス-日本・九州の事例より

<趣旨>

近年の日本では、ユネスコのWorld Heritage:世界遺産(世界文化遺産および世界自然遺産)、Intangible Cultural Heritage:無形の文化遺産(世界無形文化遺産)、Memory of the World:世界の記憶(世界記憶遺産)など、俗に「ユネスコ三大遺産事業」といわれる遺産リストへの登録可否が非常に注目されており、当該遺産が存在する地域では地域浮揚の一つとして期待されている。特に、本研究会の中心地域である九州においては、2011年に福岡県田川市を中心として筑豊の炭鉱労働を描いた「山本作兵衛氏の炭坑の記録画および記録文書」が世界の記憶に登録され、2015年には「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」として九州・山口を中心とした日本の近代化を象徴する遺跡群が世界文化遺産に登録された。さらには、日本政府は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を2016年の世界文化遺産への登録に向け推薦書を提出した。

このような「(世界)遺産ブーム」とでも言えるような状況の中で、メディアを中心として観光およびそれに伴う地域浮揚の側面は喧伝される一方、遺産をめぐる様々な文化ポリティクスについては、一般的には「明治日本の産業革命遺産」についてユネスコの世界遺産委員会で問題になったように、ナショナルな政治問題とはみなされたとしても、それらのポリティクスがいかに生成されたのかというようなプロセスの問題としてはみなされていないように思える。また、文化人類学・社会学・民俗学ではまさにそうしたポリティクスやプロセスの議論が文化遺産論や観光論とともに議論が活発になりつつある。

そこで、本セッションでは、九州の事例を中心とした文化遺産について、様々な主体間の文化ポリティクスの現状を各発表者より報告して現状を把握し学問的な議論を深めるとともに、それらを学問の中で閉じたものにせずにいかに一般へと開いていくかということを目指したい。

<趣旨説明>

永吉 守(西九州大学、久留米工業高等専門学校ほか非常勤講師)

<発表>(なお、発表順は必ずしもこのとおりではない)

木村 至聖(甲南女子大学人間科学部文化社会学科准教授)

「文化の表象をめぐるスケールのポリティクス―軍艦島の「地元」高島を事例として―」

本報告では、2015年7月、新たにユネスコの世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つである、端島炭坑(通称・軍艦島)を事例として、それが地域の資源として注目され、やがて世界遺産とされていく過程で、軍艦島の「地元」という主体がいかにして形成され、それがやがていかにして「明治日本」というナショナルな表象のなかに取り込まれていったのかについて考察する。とくにここでは空間範域の社会的な構築過程あるいは政治経済的な構造化を論じる「スケール」概念を導入することで、ナショナルな枠を飛び越えて世界遺産というグローバルな価値づけ(=世界遺産)を目指そうとする地域社会の現状と、いまそこで起こっているポリティクスについて明らかにしていきたい。

永吉 守(大学等非常勤講師、承前)

「“明治日本の産業革命遺産”構成資産の三池炭鉱遺産群に関する実践者・研究者として」

発表者自身は「NPO法人大牟田・荒尾炭鉱のまちファンクラブ」および「九州伝承遺産ネットワーク」の主要メンバーとして「明治日本の産業革命遺産」の構成資産である三池炭鉱に関する遺産の保存と世界遺産登録に向けて活動してきた。その活動を振り返りながら、世界遺産登録過程と登録の前後における、地域内の価値の多様性、および政府ポリティクスの現状を報告する。

川松 あかり(東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士後期課程)

「筑豊地域における炭鉱の語り継ぎと二つのユネスコ遺産―記憶継承への期待と失望の中で―」

筑豊地域は、ユネスコ世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産から登録運動の過程で除外されたものの、これを機に、田川市がその多くを所有する山本作兵衛氏の炭坑記録画・記録文書等が見出され、日本初のユネスコ世界の記憶(世界記憶遺産)に登録されるに至ったという経緯を持つ。発表者は、この筑豊地域において、“炭鉱の過去が、誰によっていかに語り継がれているのか”を主題として調査を行ってきた。

世界遺産登録運動と並行して、田川市石炭・歴史博物館においては、2008年から、館長講座「炭坑(ヤマ)の語り部」が行われてきた。この講座は、当初の、世界文化遺産登録を目指して、遺跡というモノに付随する物語を収集しようとする場から、世界の記憶への登録へと目標が変化する中で、語り(≒記憶)そのものに価値を見いだし、これを聞き取ろうとする場へと移行してきた。しかも、世界の記憶への登録を目指すにあたり、「炭坑の語り部」において収集されるものは、田川市石炭・歴史博物館の立地する田川という場所を越え、広く炭鉱の「記憶」全般へと広がっていった。

現在、田川市内では、炭鉱の記憶と炭鉱が育んだ文化を田川から発信しようという様々な動きが起こっている。そうした動きを支える専門家たちは、記憶の多様性を認識し、その客観的な継承を目指しているように見える。しかしながら、発表者は筑豊各地で、世界遺産登録を軸に展開する田川での動きに対する不満や、自分の住む自治体の取り組みへの危機感、そして炭鉱の記憶を語り継ぐことに対する失望の言葉を耳にした。本発表では、二つのユネスコ遺産登録を巡る動きが筑豊各地にもたらした、炭鉱の「記憶」を継承することへの期待感と、これと表裏一体の関係にある失望や怒りを合わせてとらえて、報告を行う。

池田 拓朗(長崎国際大学大学院 人間社会学研究科博士後期課程)

「長崎の教会群の世界遺産化をめぐる文化ポリティクスと物語-長崎市外海地方を事例として-」

長崎におけるキリスト教の歴史は「布教」、「弾圧・殉教」、「信仰堅持(潜伏)」、「復帰」に要約することができる。この輝かしい歴史の物語の裏側には、殉教者および殉教できなかった先祖たちへの「慰霊」という物語も存在している。この2つの物語が長崎のカトリック信者にとって、コミュニティのアイデンティティを形成する根拠としての役割を果たし、同時に祈りの場である教会にその物語を示す「記念碑」(monument)という意味をも付与しているのである。そして現在、新たに「世界遺産」という物語が付加されようとしている。

本発表では、長崎のキリシタンたちにとって聖地と認識され、カトリックの歴史を表す代表的な場所である長崎市外海地方を事例として、地域の物語と世界遺産という物語が交錯していくことについて検討する。

<コメント>

田中 英資(福岡女学院大学人文学部現代文化学科准教授)

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セッションB: 「マイノリティと学び」

発表①:「家政婦月嫂(yuesao)の産育実践の習得と形成ー中国上海市の事例から」

発表者:翁文静(九州大学大学院博士後期課程)

発表②:「在日コリアンの文化的実践-生野民族文化祭、三・一文化祭に着目して」

発表者:金子真紀(九州大学大学院博士後期課程)

発表③:「身体を想像する-身体に障害がある人の学びを事例に-」

発表者:宮本聡(九州大学大学院博士後期課程)

コメンテーター:ゲーマン ジェフリー(北海道大学)

※セッションBの各発表者要旨に関しては、追ってご連絡いたします。