趣意書・提言

国立大学法人機器・分析センター会議* 設立趣意書

(*現 国立大学法人機器・分析センター協議会)

平成9年度第1回総会において「国立大学機器・分析センター会議」の設立趣意書が採択されました。その後、平成16年の国立大学法人化に伴い平成16年度総会において「国立大学法人機器・分析センター会議」へ、さらに平成24年度総会において「国立大学法人機器・分析センター協議会」へと名称変更しましたが、設立趣意を発展的に継承し現在に至っています。

 国立大学法人及び大学共同利用機関法人に設置された機器分析に関わる共同利用設備等は、昭和51年に筑波大学に最初の分析センターが設置されて以来、現在全国で50余となっております。これらの施設では各大学内の大型分析機器を集中管理し、全学共同利用等により効率的な運用を行っています。設立時期、大学内での組織・運営などの事情が異なるため、各センターが抱える問題点は異なると思われます。それでも、分析機器の管理と活用によって研究活動を支援する役割は共通しております。そこで機器分析に関する共同利用施設間での意思の疎通をはかり、内在する諸問題を討議する全国的な連絡組織を持つことは有意義であると思われます。

 平成8年7月に策定された科学技術基本計画において、今後の科学技術に対する具体的提案がなされました。研究開発推進の基本的方向として、社会的・経済的ニーズに対応した独創的・革新的技術の創成に資する研究開発を強力に推進すること、また、物質の根源、生命現象の解明など、自然と人間に対する理解を深める基礎研究を積極的に推進することが、が挙げられております。同時にこれらの研究開発を推進し、科学技術の発展に貢献するため、施設・設備等の研究開発基盤を抜本的に整備し、分析機器等は全学共同利用等によって効果的に使用するよう提言されています。

 機器・分析センターは、これまでも、学内共同研究施設として教育・研究における重要な役割を担ってきましたが、このような科学技術基本計画に沿った研究開発に対して、積極的な役割を果たす必要があります。高い精度の機器測定の支援なしにはビックサイエンスや新技術は生まれないことを考えると、センターの研究支援はますます重要になっています。また、時代的な要請として、センターの役割に柔軟性を持たせることも必要になってきました。たとえば、分析センターの施設・設備を研究チームの活動の場として弾力的、流動的に使用すること力堵えられます。また、センター間を結ぶネットワークを整備することによりセンターの利用方法を刷新したり、施設を拡充することにより、ゆとりある研究支援環境を実現することも可能です。さらに外部に対するセンターの役割として、物質に関するデータの収集、保存、供給などのデータバンク的機能の充実を図り、また、地域の科学技術関連施設への支援などについても考える必要があります。このように、学内の研究支援センターとしての機能を充実させると同時に、機器.分析センターの教育・研究における役割について発展的に考えることも大切と思われます。

 これらの問題は近い将来における機器・分析センターのあり方に関わる問題で、これを解決するためには全国的な規模の会議で討論し、英知を集結して解決の方策を見いだすことが必要です。また、この会議は科学技術基本計画に沿って研究推進を積極的に支援する方策を探るのに有効であると確信します。これにより、センターに現存する課題の多くは解決できると期待されます。

 以上の観点を踏まえ、「国立大学機器・分析センター会議」を発展的に継承するとともに、各大学等において機器・分析センターの役割を向上・充実させることを目的として、「国立大学法人機器・分析センター会議」を設立する。

平成16年11月12日         

国立大学法人機器・分析センター会議

平成9年9月30日          

(旧)国立大学機器・分析センター会議

提 言

平成23年度の総会では、文部科学省「設備サポートセンター整備事業」のスタートを受け、改めて「機器・分析センターが抱える問題点」を問うアンケートを実施し、そのエビデンスに基づき以下の提言を採択しました。本提言は会長校の岡山大学(当時)より文部科学省へ手渡されています。

 近年,国立大学法人等における大型教育研究設備等整備にあたっては,学内外共同利用を併せて推進することが求められています.こうして整備された教育研究設備等の共同利用サービスを長期に亘り安定的に提供するためには,常時良好な状態で維持管理する必要があり,そのためには,「稼働状態を把握・調整できる維持管理要員」と「稼働のための維持費」,「数年に一回程度の大規模メンテナンス費用および修理費用」の3条件の確保が不可欠です.しかし,大学で共同利用機器の管理運営に携わっている「機器分析センター」で構成される本会議のアンケート調査では,これらの「3条件の確保」を解決すべき問題点として掲げる施設が,回答の8割以上に上っています.

 特に,機器の維持管理要員については,大学全体の人員削減に加え,「任期制導入」による教員流動化のため,共同利用機器の維持管理を行える若手教員の確保が難しくなったことにより激減しています.各大学が,機器の維持管理に関して十分な技術を有する要員の確保に苦慮していることは,本会議のアンケート調査の結果でも明らかで,その解決は急務となっています.

 このような状況下,各大学においては機器の維持管理要員確保の方策として,

・技術職員(定員)の効率的運用システムの確立

・非常勤職員及び特別契約職員の有効活用システムの確立

・スーパーユーザー(分析機器の取扱いに習熟した大学院生等)養成システムの構築

といった努力がなされています.しかし,定員の効率的運用システムの確立に必要となる大学の組織改革は,多くの大学で極めて困難な状況が続いています.また,非常勤職員及び特別契約職員として雇用される定員外職員も多くは任期付きの採用となっているため,長期に渡る安定的な維持管理は行えないのが実情です.よって,定員の代替雇用だけではこの問題の根本的な解決を図ることができません.

 他方,文部科学省においては,今年度より「設備サポートセンター整備事業」が進められています.大学は,機器分析センターが抱える上記3条件に関わる課題の解決を支援する手段として,本事業に大きな期待を寄せています.

 以上を踏まえ,本会議は,「設備サポートセンター整備事業」を最低でも現在の4〜5倍の規模(24〜30校体制)まで順次拡充いただくとともに,技術職員の効率的運用システム等の大学組織改革を推進するための具体的措置を講じていただくことを文部科学省に対し強く要望いたします.


平成23年10月28日         

国立大学法人機器・分析センター会議