後藤 香
風三の芝居を観に行く時は、役者さんのサービス精神に身を委ね、
大いに笑おうと思って意気込んでしまいます。
普段の広瀬さんと話す時も、ついそのサービス精神に甘えて、いつもバカ笑いしてばかり。
人をやる気にさせる、楽しませる才能に長けた広瀬さんの劇団は、
結成20年を超えた今、劇団員の殆どが
父になり、母になり、出演が厳しい状況にあるようで、
出演者は20代の若者たちへバトンが渡されているところ。
過渡期にある風三の芝居には、
以前ほどの勢い・疾走感が見られないのが正直寂しいところです。
その代わりに丁寧さは増してきて、
人が成長するように、劇団も演出も変わっていっているのだろうと分かりつつ、
やはり、新しい方々にも、以前の役者さん個々から発せられていた、
バカバカしいまでのサービス精神を期待してしまいます。
今回の「キャプテンフォーエバー」は、梶川さんに加え、
最近出演のなかった広瀬さんが出演される事で、
牽引できていた部分がやはり大きいと感じました。
若手の皆さんの頑張り・成長は勿論感じましたが、
風三の芝居は、指導され、丁寧になぞるだけでは魅力は爆発しないのではないか、と、
個々の役者さんの「面白い事してやろう」精神にワクワクしたいな、と。
そんな中、おらんでも特に問題ないやろ、と思える小沢さん(私が観た回出演)の役どころに、バカ笑いしながら大安心しました。
ま、あの役どころに安心出来るのは、
それ以外を丁寧に創っているからに他ならないのだけど。
と、分かりつつ。
早く、若手が育てばいいな、と期待して、今後もずっと見続けます。
宮園瑠衣子
私たちは演劇に対してくだらなさを求めているのか、
と問われればノー!じゃない。
演劇は時勢を反映させるものだし、
対象が現実社会に置いて存在するものならば、
その世界に私たちが存在せざる得ないものです。
それをデフォルメする面白さも然り、
観客の想定をなぞることも、覆すことも魅力のひとつですよね。
広瀬さんの作品には、これらの要素が含まれていて、
良く整理されているなぁと印象を持ちます。
ただ、突如始まるコントが物語において特別な作用を与えなかったのは
既に物語が成立していて、そこに入る隙がなかったのかもしれません。
全体的に整理されているが故に予定調和になってしまう部分は少なくありませんが、
構造としては面白く、見えない背景の平行線にある小さな世界で、
それを繋ぐ役者の出入りをスムーズにしたのは
止めることのできない流動的な存在(披露宴)がいい効果を生んだのではないでしょうか。
後半はちりばめられた事柄を回収することで終わったのは残念と言うか、
もっと最後まで唸らせる何か欲しいと思いましたが……。
個人的興味で、披露宴と別室、西崎と超人仮面の入れ替わり、 絵本のグリとグラ、
被り物を半分に割る、身ごもった双子、 登場人物の 優柔不断さetc、
全体を通して二分する共通さが何かを匂わせている様に感じて、
どこか着地点があればもっと掘り下げられたのかもしれませんね。
作家は知らず知らずの内に、深層心理を描くことがあるといいますから。
幸田真洋
どうも。劇団HallBrothersで脚本・演出・役者をやっている幸田といいます。
広瀬さんは僕の大先輩ではありますが、僭越ながら感想を書かせていただきました。
僕は口が悪く生意気で冷たい、という捻じ曲がった性格ですので、風三等星・広瀬さんファンの方には不快な記述もあるかもしれませんが、どうぞご容赦ください。
最初に、そもそもなぜ僕なんぞがこういった形で感想を書かせていただくことになったかという経緯をお話ししますと、広瀬さんから依頼されたからです。
広瀬さんご自身は、実は打たれ弱いらしく、あまり感想や批評などを積極的に受けたいわけではないそうですが(僕もその気持ちよくわかります)、それでは自 分自身を成長させていくことはできない、もっと感想や批評を真摯に受け止める必要がある、とお考えになったそうです。
が、感想と言っても「おもしろかった」「おもしろくない」など、漠然としたものであるとなかなか成長の糧にしにくいもの。
そこで同じ劇作家の目線から具体的に良い部分・悪い部分を聞かせてほしい、と依頼されたのです。
僕はそんなことできません。
いいものを作りたいという気持ちはありますが、打たれ弱いので同じ劇作家にバシバシ欠点を指摘されたら立ち直れなくなるかもしれないからです。
しかし、それではいけないと、そうやって自分を甘やかしていては向上しないと、広瀬さんはお考えになったようで、その心意気に応えたいと、こうやって感想を書かせてもらうことになりました。
さて。
前置きが大変長くなりました。
それでは、感想を書かせてもらいます。
まず、率直に、簡潔に言うと、僕はあまり乗っかることができませんでした。
僕はリアルな演劇を作りたいと思っていますし、リアルなものを観るのが好きです。
そういう観点から言うと『キャプテン・フォーエバー』はあまりリアルではないように感じました。
それが乗っかれなかった大きな要因です。
根本の話になってしまいますが、80人の参列者がいる結婚披露宴を4人で回さなければいけないという状況に無理があるように感じてしまいました。
エンターテイメントだし、シチュエーションコメディだし、大事なのはそんな細かいところではない、と思われる方もいるかもしれませんが、しかし僕は「とはいってもその世界を支えるリアリティは必要なのではないか」と思ってしまうのです。
劇中のあのホテルが、とりわけ低予算をウリにしているというわけでもないようでしたし、天災が起きて従業 員が4人しか出勤できなかったというわけでもないし(そうなると結婚式どころではないですが・・・)、普通はあまり考えられないような80人を4人でまわ すという状況が納得できる設定を、僕はあまり感じられませんでした。
となると、世界の支えに亀裂が入っているように感じてしまい、すんなりお芝居の世界に乗っかっていくことはできません。
たとえばこれが、もっと特殊なホテル・結婚式場であれば違ったかもしれません。
もっと小さな、ハウスウェディングをウリにしているようなところで、しかも、もともと大手ホテルのウェ ディング部門で働いていたキャプテンが、大手が故のシステマチックな結婚式に違和感を覚え、自分はもっとお客さんの細かい要望にも手の届く、手作りで、小 さいけど温かみのある結婚式がやりたいと考え、大手ホテルを辞め、湖畔の小さなペンションを買い取り、自力でこつこつ改造してオリジナルのこだわりハウス ウェディングを作り上げた・・・とか。
それだと少ない人数でまわしていても「まあ、あるかもな」と納得できるかもしれません。
ドタバタの始まりである、「アレルギーのある人に、間違えてアレルギー物質の含まれた弁当を食べさせてしまった」というのも、やや強引な気がしました。
普通のホテルであるならそういうことには細心の注意を払っているはずで、それを簡単に間違えてしまうのはちょっと引っかかりを覚えてしまいます。
あの当日、ものすごく忙しいということが何度か劇中で語られますし、めまいがするほど忙しくてバタバタしていたら、弁当を渡し間違えてしまうことはあるかもしれません。
でも、たとえば昨日今日入ったばかりの新人バイトに申し付けていたら間違えていた、なんて方がまだ説得力があるかな、と思いました。間違えてしまうのが支配人というのも・・・。
また、忙しいということは情報として何度か出てきますが、あまり忙しいようには見えませんでした。
これは、戯曲の構成の問題かもしれません、演出の問題かもしれませんが、冒頭、スタッフはのんびり弁当を食べています。
その後の「アレルギーのある人に、間違えてアレルギー物質の含まれた弁当を食べさせてしまった」話に持っていくために弁当を食べているシーンが必要だった のかもしれませんが、式が始まる直前にスタッフルームで弁当を食べて、弁当の話を引っ張っていると、どう見てものんびりしているように見えてしまう。
だとすると後からいくら忙しいと情報が出て来ても、あまり忙しいようには感じられません。
そもそも式の直前に持ち場についていないのも杜撰なホテルだなと感じてしまいますし、だからこそ弁当の渡 し間違いを始め、数々のドタバタが起きるのだ、と言われたらそれはそれで説得力があるのかな、とも思ってしまいますが、ではそういったホテルでめまいがす るほど忙しくなるような稼働率になるのか、という疑問も出てきます。
閑古鳥が鳴くホテルで、経営的に追い詰められている時に大口の結婚式が入った。ここを乗り切れば起死回生 のチャンス、しかしベテランの従業員はほとんど辞めてしまった、残っているのは使えない若者やろくでなしの二代目支配人(こいつがホテルを傾かせた張本人 だったりして)、どうにか頑張ろうとするが失敗ばかり・・・という設定だったりすると杜撰なホテルでもその日だけは忙しい、というのはありえるかもしれま せん。
そんなホテルで結婚式を上げようと思うプロレスラーもなかなかいないかもしれませんが、ホテルスタッフの 友人で、どうしてもと泣きつかれたとか、今は落ち目のレスラーでお金はない、しかし見栄をはりたいというところで格安のところを選んだとか、納得できる設 定があればありかもしれません。
そうです。
つまるところ、納得のいく設定や理由がほしい、ということなのです。
お芝居はしょせんウソで、もちろん観客はウソだとわかっていて観に行くものですが、上手に騙されたいのです。
そのために劇作家は「あー、そういうのありそう」というウソを周到に準備する必要があります。
最後にもう一点だけ。
花嫁さんが「ウズベキスタン」の方という設定でしたが、僕の好みで言うと「ありそうで実際はない架空の国」を作ってほしかったです。「チュンマー」とか?なんかよくわからないですけど。
そうすると、結婚式だって「ありそうだけど実際にはない」特殊な風習をモチーフにできるので、もっといろいろな展開が出てきそうな気がします。
それに、「ウズベキスタン」というのはあまりなじみがありませんが、リアルに存在する国です。
そういうものを扱うのであれば「ウズベキスタンでなければいけない理由」がやはりほしい。
ウズベキスタンにはウズベキスタンの結婚式があるはずで、しかし劇中で行われていたのはきっと日本式の、普通の結婚式ですよね?
であるならばウズベキスタンである必要はないわけで、そこは劇作家がありそうでない架空の国をひねり出さなければいかないところかな、と思います。でないと、ウズベキスタンを軽く扱っていると取られかねません。
・・・なんだか、生意気なことばかり言ってしまってすみません。
しかし、何言われるかわからないのに、わざわざこういう企画をやろうとする広瀬さんの向上心には感服しますし、だからこそ本音を書かせてもらいました。
これからも期待しています、広瀬さん。
おしまい。
す。
後藤 香 編
風三の芝居を観に行く時は、役者さんのサービス精神に身を委ね、
大いに笑おうと思って意気込んでしまいます。
普段の広瀬さんと話す時も、ついそのサービス精神に甘えて、いつもバカ笑いしてばかり。
人をやる気にさせる、楽しませる才能に長けた広瀬さんの劇団は、
結成20年を超えた今、劇団員の殆どが
父になり、母になり、出演が厳しい状況にあるようで、
出演者は20代の若者たちへバトンが渡されているところ。
過渡期にある風三の芝居には、
以前ほどの勢い・疾走感が見られないのが正直寂しいところです。
その代わりに丁寧さは増してきて、
人が成長するように、劇団も演出も変わっていっているのだろうと分かりつつ、
やはり、新しい方々にも、以前の役者さん個々から発せられていた、
バカバカしいまでのサービス精神を期待してしまいます。
今回の「キャプテンフォーエバー」は、梶川さんに加え、
最近出演のなかった広瀬さんが出演される事で、
牽引できていた部分がやはり大きいと感じました。
若手の皆さんの頑張り・成長は勿論感じましたが、
風三の芝居は、指導され、丁寧になぞるだけでは魅力は爆発しないのではないか、と、
個々の役者さんの「面白い事してやろう」精神にワクワクしたいな、と。
そんな中、おらんでも特に問題ないやろ、と思える小沢さん(私が観た回出演)の役どころに、バカ笑いしながら大安心しました。
ま、あの役どころに安心出来るのは、
それ以外を丁寧に創っているからに他ならないのだけど。
と、分かりつつ。
早く、若手が育てばいいな、と期待して、今後もずっと見続けます。
普段の広瀬さんと話す時も、ついそのサービス精神に甘えて、いつもバカ笑いしてばかり。
人をやる気にさせる、楽しませる才能に長けた広瀬さんの劇団は、
結成20年を超えた今、劇団員の殆どが
父になり、母になり、出演が厳しい状況にあるようで、
出演者は20代の若者たちへバトンが渡されているところ。
過渡期にある風三の芝居には、
以前ほどの勢い・疾走感が見られないのが正直寂しいところです。
その代わりに丁寧さは増してきて、
人が成長するように、劇団も演出も変わっていっているのだろうと分かりつつ、
やはり、新しい方々にも、以前の役者さん個々から発せられていた、
バカバカしいまでのサービス精神を期待してしまいます。
今回の「キャプテンフォーエバー」は、梶川さんに加え、
最近出演のなかった広瀬さんが出演される事で、
牽引できていた部分がやはり大きいと感じました。
若手の皆さんの頑張り・成長は勿論感じましたが、
風三の芝居は、指導され、丁寧になぞるだけでは魅力は爆発しないのではないか、と、
個々の役者さんの「面白い事してやろう」精神にワクワクしたいな、と。
そんな中、おらんでも特に問題ないやろ、と思える小沢さん(私が観た回出演)の役どころに、バカ笑いしながら大安心しました。
ま、あの役どころに安心出来るのは、
それ以外を丁寧に創っているからに他ならないのだけど。
と、分かりつつ。
早く、若手が育てばいいな、と期待して、今後もずっと見続けます。