アモルファス氷の分子運動
水は0℃以下で容易に結晶化します。ですが、氷Ihを130K以下の低温で1GPa(1万気圧)以上に加圧するとアモルファス化し、アモルファスな水を調製することができます。この様にして調製した水をHigh Density Amorphous ice(HDA)と呼んでいます。このHDAを0.1Gpa以下に減圧するとLow Density Amorphous ice(LDA)になります。LDAは他にも調製方法があります。この二つのアモルファス状態の水の動的な性質を特徴づけ、違いを明らかにすることを目指しています。
高圧力下での水溶液の分子運動
アモルファス状態の物質の温度を上げれば液体状態になります。これはガラス転移と呼ばれています。水も同様にアモルファス状態から液体状態に移り変わると思われますが、アモルファス状態の水の温度を上げると急速に相転移が起こるので液体状態の観測は簡単ではありません。結晶化を防ぐために水にグリセロールを少量添加し、グリセロール水溶液とすることで、深い過冷却状態の水を作り出し、水とグリセロールの分子運動を観測することに挑戦しています。
グリセロール水溶液 JPCL, DOI: 10.1021/acs.jpclett.4c02462
マンニトールのポリアモルフィック相転移と分子運動の関係
水以外にもいくつかの分子性液体が二つのアモルファス状態を持つことが知られています。その一つ、マンニトールを用いて二つのアモルファス状態の分子運動を特徴づけることに挑戦しています。
液体窒素環境での低振動ラマン分光装置の開発
ラマン分光は自由度が高く、様々なマテリアルを対象にすることができます。我々のラボで作ることができる水および氷の高圧相は、液体窒素温度(77K)であれば1気圧に回収できることが多いです。なので、窓付きの特殊なデュワーを使い、液体窒素環境でラマン分光測定ができる装置を開発しています。現在は励起光が488nmの場合は150cm-1〜、532nmの場合は20cm-1〜の測定が可能です。
水溶液の高速カロリメトリー測定
高圧氷のプロトンダイナミクス
アルコール2成分系のガラス転移
ソルビトールの鏡像異性体混合物とガラス転移
グリセロールとそのオリゴマーのJohari-Goldstein β緩和