次世代生物研究会設立にあたって

地球上の人口は2050年には90億人に達すると予測されています。今後の人口増加に対応して食糧問題をはじめ、環境やエネルギー問題などを解決する必要があります。これらの問題を解決する上で様々な生物の生命現象を分子レベルで解明したり、生物由来成分[タンパク質(酵素)、脂質、糖質や生理活性物質等]を利用するための研究を進展させる必要があると予想されます。これまでモデル生物である大腸菌、酵母、ショウジョウバエ、線虫、マウスなどはゲノム配列が明らかにされデータベースが構築されています。現在、これらの情報を元に生命現象の解明に向けた研究や生物工学的な研究など多くの研究が行われています。

 一方、これらの生物と比較して十分なゲノム情報の存在しない生物やこれまであまり生理・生化学的に研究されてこなかった生物が存在するのも事実です。このような生物の中には次世代を支えるようなユニークな性質を有する生物が存在する可能性も有しています。

 そこで、本研究会ではこのような生物にフォーカスを当てて、その生物の生理・生態だけでなく生化学的な研究を紹介する予定です。該当する生物としては、ミミズ、微生物(きのこなど)、水生・海洋生物や昆虫等ではないかと思われます。

例えばきのこを例に取ると、 森の掃除屋と呼ばれるように炭素循環において重要な役割を果たしているので、 きのこの木質を分解する能力(機能)を明らかにするための研究を進展させれば、環境やエネルギー問題を解決できる可能性を有しています。また、きのこの持つ機能性は健康を増進させる上で今後益々重要視されると予測されます。

今後、これまであまり注目されてこなかった生物由来の成分や生物機能を明らかにし,その利用を進めることが重要ではないかと考えています。次世代に向けてエネルギー問題、食糧問題、環境問題などを解決できる可能性があると考えられます。

2023年8月 上田 光宏