迷走する薬剤師~国際緊急援助隊~>チリ地震~幻の医療チーム派遣~
地震発生
現地時間の2月27日午前3時34分(日本時間午後3時34分)にチリのコンセプシオン(Concepción)の北北東117キロ付近、タルカ(Talca)の西南西99キロ付近を震源(米地質調査所の発表)とするマグニチュード8.8の地震が発生。
チリのバチェレ大統領は27日、被害の大きなチリ中部に「激甚災害」を宣言。
津波襲来
地震発生直後にチリ太平洋岸のタルカワノ(Talcahuano)を高さ2.34メートルの津波が襲い、翌28日午後には日本の太平洋岸にも到達。
日本では青森県・岩手県・宮城県に大津波警報(予想される津波の高さが高いところで3mを超える場合)が発表され、3県のDMAT(災害派遣医療チーム)には自動待機基準による待機要請がありました。
私もDMATに登録しているため、2月28日午前9時45分頃に上記を携帯のメールにて確認しました。
同日午後7時過ぎ、大津波警報が津波警報(予想される津波の高さが高いところで1mを超え、3m以下の場合)に切り替わったため、3県のDMAT待機は解除されました。
医療チーム派遣に向けた調整
鳩山首相は2月27日に「被害状況を調べ、救済が必要ならすぐに対策をとるよう関係省庁に指示した」と述べました。
28日に岡田外相は鳩山首相に、「JICA(国際協力機構)の職員2人をチリに派遣して邦人の安否確認と復興支援のための事前調査を行わせる。チリ政府は被災状況を確認するまで各国に支援部隊の派遣を控えるよう求めているため、当面、医療・救援チームの派遣は見合わせる方針である」と報告。
チリの被害規模と対応
3月2日に国連事務総長の報道官は、「UNOCHA(国連人道問題調整事務所)によると、チリ巨大地震による被災者数は200万人に達し、死亡者数は723人に、倒壊した家屋はおよそ150万棟に上った。チリはラテンアメリカでは災害対応体制が最も整った国の一つで、チリ政府は救援活動を指揮していく能力を持っている。チリ政府は国際社会からの援助を歓迎している。今必要な支援物資は主に、手術を行える野外病院、透析センター、発電設備、衛星電話、移動式橋梁などである」と述べました。
国際緊急援助隊医療チーム派遣決定
3月1日午後5時頃にJICAの国際緊急援助隊事務局よりJMTDR登録者に医療チーム派遣の連絡がありました。
「チリ国ビオビオ県周辺において、日本時間2月27日(土)午後3時34分頃、マグニチュード8.8の地震災害が発生し、被災地に近い地域を中心に大きな被害が出ています。これまでに死者が700名を越えたという発表がなされていますが、今後も被害の拡大が見込まれ、チリ政府は日本政府に対して医療チームの派遣を要請しました。
これを受けて日本政府は同チームの派遣を決定、JICAは、3月2日(火)から2週間の活動予定で、23名体制(団長1名、医師4名、看護師7名、薬剤師1名、医療調整員5名、業務調整員5名)の医療チームの派遣を決定しました。」
同日午後9時30分頃、JICAより私を薬剤師として選抜したとの連絡がありました。
集合時間:3月2日午後7時
集合場所:成田空港
医療チーム派遣中止
3月2日午前8時30分頃にJICAより「チリ政府が医療チームの派遣要請を取り下げたため、派遣は中止になりました」との連絡がありました。
チリ側の受け入れ態勢が整わず、すでに出発した先遣隊の3名以外の派遣は中止することになりました。
岡田外務大臣は今回の対応について、「結果的に空振りになるリスクを恐れては迅速な派遣はできない。災害だからよくあることで、それを見込みながらやっていくしかない」と説明。