ソフトウェア概要

ソフトウェア概要

HyDro(ハイドロ)とは、独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)が開発した、液滴の濡れ現象をシミュレーションするためのソフトウェアです。親水領域と撥水領域をもつ固体表面上に濡れ広がる液滴の形状を、独自開発のHybrid Energy Minimization(HEM)法によって高速かつ高精度に計算します。

一般に、均一な固体表面上に微小液滴を置いた場合、その形は球を切り取った形状となり、基板面と液滴表面のなす角θは接触角と呼ばれます。接触角は固体表面や液体の性質によって決まるパラメータで、いわゆる濡れやすい面(親水面)では接触角が小さく、逆に濡れにくい面(撥水面)では接触角が大きくなります。均一な固体表面とは、接触角が場所によらず一定の面ということもできます。

一方、均一でない固体表面に置かれた液滴の形状を予測することはそれほど簡単ではありません。これを数値計算によって簡便に予測するために開発されたソフトウェアがHyDroです。

HyDroでは、「液滴はエネルギーが最小(または極小)の状態に落ち着く」という基本原理に基づいて計算を行います。ユーザーはまず、固体表面を複数の領域に区切り、それぞれに異なる接触角を設定します。その後、液滴に適当な初期形状(球状など)を設定し、エネルギー最小化計算を実行します。エネルギー最小化計算が開始されると、プログラムは液滴を少しずつ変形させながら、よりエネルギーが低い状態へと導きます。最終的にエネルギーが最小(または極小)の状態に到達すると、計算が終了します。(本ソフトウェアでは、液滴の経時変化を計算することはできません。)計算過程や結果は3D表示によって確認できるほか、いくつかのテキスト形式で出力することができます。

初期形状(左)とエネルギー最小化計算後の形状(右)

HyDroの特徴

1. エネルギー最小化法による高速計算

標準スペックのPCを用いて、非常に短時間(数秒~数十秒)で計算が完了します。

2. 高い収束性

独自のアルゴリズム(Hybrid Energy Minimization法)により、不連続な表面エネルギー分布に対するエネルギー最小化計算を可能にしています。

3. 自動メッシュ分割

液滴形状を表すメッシュの分割は自動で行われ、計算過程において常に最適な状態に保たれます。

4. 高精度計算

最小限の近似と細かなメッシュ分割により、液滴表面の形状を精度良く計算します。

5. シンプルなコマンド入力インターフェース

テキストをベースとしたコマンド入力インターフェースにより、簡単な計算から複雑な計算まで幅広く対応します。