研究概要
(詳細は主要な関連論文を下記に示しますので、DOIリンクよりそれらをご参照ください)
様々な材料は一見すると、一つの特性のみにスポットライトが当たります。
しかし、実際に使用されている材料は、複数の特性を持つことが多いです。
複数の特性を高い状態で維持する材料の作製は、複雑な過程や多段階の過程を経て作られます。
環境問題やコストなどを考えると、材料の作製過程は簡単で一段階で行うことが望ましいです。
また、分子レベルで均一な特性を出現させるには、固相反応から作製することは難しいです。
本研究では、複数の高特性を持つ材料を、液相を利用して、シンプルかつ一段階で作製しています。
・磁性多孔質炭素材料
磁石を始めとした磁性材料は、実用的な材料として非常に重要ですし、多孔質材料も環境浄化材料として非常に有用な材料です。
磁性と多孔性の特性が両立できれば、吸着性能も向上し、材料自体の回収も容易となります。
磁性を分散させるための試薬として、磁性流体に着目し、液相にて混合することで磁性多孔質材料の作製を試みています。
セルロースナノファイバーが濡れている状態で磁性流体を加えて加熱処理することで、磁性を有するカーボンナノファイバーを作製することができました(下の写真はバクテリアセルロースに添加した磁性ナノ粒子の形態と、それを加熱処理しCNFとしたときのその上にある磁性ナノ粒子の形態)。
下図の吸着等温線より、磁性流体を添加したBCから作製したCNFはメソ孔、磁性流体を添加した後ヨウ素処理したBCから作製したCNFはミクロ孔が開きました。
バクテリアセルロース上の磁性ナノ粒子の電子顕微鏡写真
CNF上の磁性ナノ粒子の電子顕微鏡写真
磁性CNFの吸着等温線
●が磁性流体を添加したBCから作製したCNF、
○が磁性流体を添加した後ヨウ素処理したBCから作製したCNF
・磁性ガラス状炭素材料
本来炭素材料は弱い反磁性をもっていますが、これを強磁性とすることで実用の範囲を拡大することができます。
ガラス状炭素の原料が有機溶媒であることを利用し、原料の段階で磁性流体と混合し、分子レベルで磁性ナノ粒子が分散した(下図の拡大図)磁性ガラス状炭素を作製(磁化磁場曲線)することができました。
MFを添加したガラス状炭素の磁化磁場曲線
MFを添加したガラス状炭素の
電子顕微鏡写真
(角ばった粒子が磁性ナノ粒子)
・ガラス状炭素の多気孔化
ガラス状炭素は元々、閉気孔なので表面積が非常に小さいですが、これにマイクロメーターレベルの気孔を多数開けることで、より反応場が広い電極などに使用できます。
ガラス状炭素の原料が有機溶媒であることを利用し、そこにマイクロレベルのビーズを分散させた後に、加熱処理することで気孔が多数空いたガラス状炭素を作製することができました(下の写真は気孔の空いたガラス状炭素の表面と断面の写真)。
1000℃以上で加熱処理をすると気孔が多数空いているにもかかわらず、ガラス状炭素単体と同等の導電性を示します。
ポリマーブレンド法により作製した多気孔ガラス状炭素の表面の電子顕微鏡写真
ポリマーブレンド法により作製した多気孔ガラス状炭素の断面の電子顕微鏡写真
主なテーマ
・磁性流体を用いた多孔性と磁性を両立させたハイブリッド吸着能を有する新規高機能性浄化セラミックス複合材料の液相合成
・磁性流体を用いたガラス状炭素の強磁性化
・熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂をポリマーブレンドすることによるガラス状炭素の高気孔率化
関連論文
・K. Nakamura, N. Suzuki, T. Takase, "Preparation of magnetic carbon nanofiber derived from bacterial cellulose alloyed with magnetic fluid.", Diamond and Related Materials, 124 (2022) 108938, DOI: https://doi.org/10.1016/j.diamond.2022.108938.
・K. Nakamura, C. Kubo, R. Horibe, "Preparation of glass-like carbon with micrometer-sized pores by mixing thermosetting resin with thermoplastic microbeads.", Materials Letters, 312 (2022) 131691, DOI:https://doi.org/10.1016/j.matlet.2022.131691.
・K. Nakamura, K. Okuyama, T. Takase, "Magnetic properties of magnetic glass-like carbon prepared from furan resin alloyed with magnetic fluid.", Journal of Magnetism and Magnetic Materials, 425 (2017) 43-47, DOI: https://doi.org/10.1016/j.jmmm.2016.10.114.