研究概要
(詳細は主要な関連論文を下記に示しますので、DOIリンクよりそれらをご参照ください)
バイオマス(biomass)とは、化石資源を除いた生物由来の有機性資源で、持続的に再生可能な資源とされています。
近年の環境問題や資源問題を考えると、このバイオマスを有効活用して、循環型社会を構築することは重要となってきています。
なぜなら、植物系バイオマスは、光合成により二酸化炭素を固定化しているため、カーボンニュートラルとしても有益であり、バイオマスを利活用することで、石油や石炭など化石資源の使用を低減にもつながるからです。
また、バイオマスは、有機分子や有機成分の構造が複雑で、それらが混在しているため、炭素化過程を改質することが必要です。
そこで、本研究室では、バイオマスとして木材とセルロースナノファイバー(cellulose nanofiber)に着目して、それを炭素材料とすることで、活性炭(activated carbon)やカーボンナノファイバー(carbon nanofiber: CNF)の高機能化を目指しています。
その際、炭素繊維の工業的製法で利用される不融化を応用したヨウ素処理を利用して、炭素材料を作製しています。
・木質バイオマス由来炭素材料
木材にヨウ素処理を適用した木炭では、種類により異なりますが炭素化収率が、1.25~1.5倍向上 しました。
また、下記の電子顕微鏡写真のように、エッジ部分がよりシャープに、表面がより平滑な美しい組織の木炭を得ることができました。
これらを浄化用活性炭や電極材料としての応用を目指します。
スギから作った木炭の電子顕微鏡写真
ヨウ素処理したスギから作った木炭の
電子顕微鏡写真
・セルロースナノファイバー由来カーボンナノファイバー
バイオマス、特に木材のセルロース繊維をナノレベルの直径まで解繊したものをセルロースナノファイバー(cellulose nanofiber)と呼ばれています。
このセルロースナノファイバーは、様々な特性が優れているので、近年、世界的に着目されています。
セルロースナノファイバーはバクテリアからも生成でき、バクテリアセルロース(bacterial cellulose)と呼ばれます。
最も有名なバクテリアセルロースが、ナタデココ®です。
本研究室ではこのセルロースナノファイバー(cellulose nanofiber)から、カーボンナノファイバー(carbon nanofiber: CNF)を作製しています。
バクテリアセルロースにヨウ素処理を行うと、得られるカーボンナノファイバー(carbon nanofiber: CNF)の炭素化収率は、なんと約3倍向上しました。
また、下記の電子顕微鏡写真のように、ナノレベルの繊維を残すこともできます。
このカーボンナノファイバーを利用して、繊維強化複合材料や磁性カーボンナノファイバーを作製しています(詳細はカーボンナノファイバー強化炭素複合材料の高機能化や液相混合より高機能性浄化複合材料の作製をご覧ください)。
バクテリアセルロースの電子顕微鏡写真
(セルロースナノファイバー)
ヨウ素処理したバクテリアセルロース
から作製したカーボンナノファイバーの
電子顕微鏡写真
主なテーマ
・(バイオマス)ナノファイバーの原料や官能基構造の相違による炭素化過程および細孔形成過程の解明
・ヨウ素処理による(バイオマス)ナノファイバー由来カーボンナノファイバー(炭素化物)の作製と高機能化
・(バイオマス)ナノファイバー由来カーボンナノファイバー(炭素化物)への家庭用品の添加による高細孔特性化と電極への応用
・(バイオマス)ナノファイバー由来カーボンナノファイバー(炭素化物)への磁性付与による高機能性浄化複合材料の開発
関連論文
・K. Nakamura, N. Suzuki, T. Takase, "Preparation of magnetic carbon nanofiber derived from bacterial cellulose alloyed with magnetic fluid.", Diamond and Related Materials, 124 (2022) 108938, DOI: https://doi.org/10.1016/j.diamond.2022.108938.
・ 中村和正、佐藤雅俊、松崎利栄、高瀬つぎ子 「ヨウ素処理をしたバクテリアセルロース由来のカーボンナノファイバーで強化した炭素複合材料の摩耗特性」 炭素, 2016[274] (2016) 139-144, DOI: https://doi.org/10.7209/tanso.2016.139.
・ 【総説】安田榮一、赤津隆、田邊靖博、中村和正、干川康人、宮嶋尚哉 「(総説) カーボンナノファイバーの微細組織制御」炭素, 2012[225] (2012) 254-265, DOI: https://doi.org/10.7209/tanso.2016.139.
・ K. Nakamura, Y. Tanabe, Y. Nagakura, T. Nishizawa, K. Fukuyama, Y. Hatakeyama, E. Yasuda, “Improvements in char yield and pore properties of wood-derived carbon by iodine treatment.”, TANSO, 2008[234] (2008) 215-219, DOI: https://doi.org/10.7209/tanso.2008.215.