EUREKAユーザーガイド

はじめに

EUREKAクユーザーガイドは、動物行動情報学（Ethoinformatics）のための解析システム「EUREKA」の基本機能について説明します。簡易マニュアルとして利用することができます。EUREKAは、動物の行動系列データに潜む情報を抽出するために作られたシステムです。具体的には、行動系列をアルファベット（もしくは0から9の数字）で記号化したデータを入力として、次の2種類の解析を行うことができます。

• 統計解析

動物の行動系列データに関する次の統計的特徴量を計算します（括弧の中は元となる要素技術）。

• 行動単位の種類（記号の種類のカウンティング）
• 行動単位間の遷移確率（遷移行列）
• 行動系列の複雑さ（PerplexityとLinearity）
• 2つの行動系列データ間の類似度（Kullback-Leibler距離）
• 行動系列における高次の性質（行動生起をマルコフ情報源でモデル化した時の情報エントロピー）
• 行動パターンの頻度分布とランキング（N-gram統計）
• 構造解析

動物の行動系列を生み出す元となっている規則を推定し、遷移図として可視化します（括弧の中は元となる要素技術）。行動系列の確率的構造と決定論的構造の推定を行うことができます。どちらが適しているかは、系列データの性質によります。

• 行動系列の確率的構造の推定（N-gramモデル、可変長N-gramモデル）
• 行動系列の性質がChaining型（（主に）ローカルな情報でボトムアップに行動単位が束ねられている）の場合に有効
• 行動系列の決定論的構造の推定（可逆オートマトンの正例学習）
• 行動系列の性質がPlanning型（（主に）グローバルな制約を受けてトップダウンに行動単位が束ねられている）の場合に有効

EUREKA は、このような2種類の解析を提供することで動物行動の本質に迫るお手伝いをします。まず、系列データの統計的特徴を知ることで、対象の動物行動に規則性 があるのかないのか、あるのならばどのぐらい複雑なのか、などを知ることができます。さらに、系列データを構造化することで、どのような規則が行動を支配 しているのかを視覚的に知ることができます。言い換えると、前者は行動の系列データを値にマップし、後者は系列データを構造にマップします。

2章と3章では、サンプルデータをもとにしてEUREKAを用いた解析のやり方について説明します。

系列データの統計解析（StringStat）

系列データの構造解析（ModelRep）

付録