■『ジャンニ・スキッキ』のあらすじと演奏曲の大意
イタリアのオペラ作曲家ジャコモ・プッチーニ(1857~1924)が作曲した『三部作』の一つ。『三部作』とは,
「外套」―パリ・セーヌ河の荷物船で起きたヴェリズモ的な殺人劇
「修道女アンジェリカ」―尼僧院での尼僧の昇天を描く神秘劇
「ジャンニ・スキッキ」―大富豪の遺産を巡る騒動を描いた喜劇
のことで,まったく趣向の違った1幕物・3作品を,一晩に上演する想定で作曲されました。
『ジャンニ・スキッキ』の題材はダンテの『神曲』から取られ,舞台は1299年のフィレンツェ。
富豪ブオーゾ・ドナーティが亡くなり,遺言に「遺産はすべて修道院に寄付する」と書かれていたために,遺産の分け前を期待していた親族は大騒ぎ。
ブオーゾの甥リヌッチォは,知恵者ジャンニ・スキッキの力を借りようと提案しますが,親族は彼のことを「鼻持ちならない田舎者」と反対します。実はジャンニの娘ラウレッタと恋仲のリヌッチォは,
♪アリア「フィレンツェは花咲く木のように」
で,中世フィレンツェの発展とそこに集まる芸術家や財界人になぞらえて,ジャンニ・スキッキを朗らかに讃えます。
そこにジャンニとラウレッタが到着。案の定,ジャンニとブオーゾの親族は口論になり,ジャンニが立ち去ろうとすると,ラウレッタが,
♪アリア「私のお父さん」
で,リヌッチォとの結婚を認めてくれなければ,ポンテ・ヴェッキオ橋から身投げします,と切々と歌います。
愛娘の懇願に,ジャンニは渋々「遺言書を見せてみろ」と思案を始め,ついに名案を思い付きます。ラウレッタを「バルコニーに行って小鳥に餌をやっておいで」と外へ出し,
♪アリア「声はソックリだったか?」
で,ブオーゾに成りすまして遺言を書き換える計画を滑稽かつ雄弁に語り,「これは神への挑戦だ」と言い放つのでした。熱狂する親族にジャンニは,
♪アリア「初めに警告しておきますぞ!」
で,「遺言を書き換えた者は,片手を切り落とした上で,追放に処す」とフィレンツェの法律を語ります。
このあと公証人が到着し,ブオーゾに成りすましたジャンニが,なんと,「遺産は親友のジャンニ・スキッキに贈る」と言うので親族はビックリ。しかし,ジャンニが「片手を切り落とし追放」という法律を思い出させるので親族は何も言い出せず,遺言はジャンニの思い通りに書き換えられてしまうのでした。
親族が立ち去った屋敷のバルコニーでリヌッチォとラウレッタが,
♪二重唱「ぼくのラウレッタ!」
で幸せに浸るところで幕となります。