Sondheim: A Funny Thing Happened on the Way to the Forum - Comedy Tonight
作詞家スティーヴン・ソンドハイム(1930-)が初めて作曲を手掛けたミュージカル『ローマで起こった奇妙な出来事』(1962年初演)のオープニングナンバー。
隣の娼婦に恋をした若い主人の恋を成就させたら自由の身にすると約束してもらった奴隷が,次々に周囲の人々を巻き込みハプニングを切り抜けようとするドタバタ喜劇。最後は急転直下ハッピーエンド,恋も成就し,奴隷は解放され,めでたしめでたし,というお話のプロローグの意味を兼ねて,明日は悲劇でも今日は喜劇,幕を開けようと歌われます。
Korngold: Die Gansleber im Hause Duschnitz
エーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトは,1897年生まれのオーストリアの作曲家。早熟の天才で,ウィーンで活躍しましたが,ナチスの台頭を受けてアメリカに渡り,映画音楽の作曲家として成功しました。代表作は,23歳で作曲したオペラ『死の都』。
「ドゥシュニッツ家のガチョウのレバー」は,1919年に友人の両親の結婚40周年パーティのプレゼントとして,半分しゃべりながら歌うSprechgesang(シュプレヒ・ゲザング)の手法で作詞作曲したもの。詞は,そのパーティで振る舞われたガチョウのレバーを絶賛するもので,ウィーン風のワルツに乗せて歌います。
J. Strauss: Die Fledermaus - Coluplets 'Spiel ich die Unschuld vom Lande'
ヨハン・シュトラウス2世(1825-1899)はウィーンで「ワルツ王」と呼ばれ,数々のウインナ・ワルツやオペレッタの名作を残しました。『こうもり』はその代表作。
銀行家アイゼンシュタインは,微罪で1週間ほど収監されることに。親友ファルケが「その前の慰めに舞踏会に出かけよう。奥さんには内緒で,ちょっとした火遊びも楽しみに・・・」と誘いに来ます。しかし,これはファルケが仕掛けたワナ。かつて仮面舞踏会でこうもりの扮装をしたファルケは酔いつぶれ,アイゼンシュタインに置き去りにされて,翌日みんなの笑いものになったのでした。
その滑稽な復讐劇が本筋ですが,この舞踏会には,アイゼンシュタイン家の女中アデーレも「女優」として潜り込んでいました。彼女はそこで出会ったフランス人公爵――実はアイゼンシュタインが収監される刑務所の所長――にパトロンになってもらうべく,「田舎娘を演じるなら」と歌い,自分の演技の才能を披露します。
R. Strauss: Kraemerspiegel - Einst kam der Bock als Bote
リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)はドイツの後期ロマン派を代表する作曲家。交響詩・オペラ・歌曲の作曲で知られ,指揮者としても活躍しました。シュトラウスはまた,音楽家の「権利」を保護するための活動にも積極的で,歌曲集『商人の鑑』は,その一端の過激な表出と言えます。
彼は楽譜出版社から「一定数の楽曲を提供する契約」の不履行を訴えられ,契約を満たすためにこの歌曲集を作曲したのですが,知人の評論家アルフレッド・ケルに作詞してもらったその内容は「出版社が,作曲家の作品を商売道具として貪り食っている」と,出版社をコテンパンに罵倒する内容だったのです。
今回演奏する第2曲は「あるとき牡山羊が使者になり,ばらの騎士の館を訪れた」と始まります。この「牡山羊(Bock)が使者(Bote)になり」というのは,当の楽譜出版社「Bote und Bock社」を指し,「ばらの騎士(Rosenkavalier)」はシュトラウス作曲のオペラのタイトルです。歌詞はその後「ばらの花束が棘で牡山羊を刺し,牡山羊は尻尾を巻いて逃げ帰った」と続きます。「花束」はドイツ語で「シュトラウス(Strauss)」。出版社の怒りは相当なものだったに違いありません。この辛辣な歌詞を『ばらの騎士』風の優雅なワルツに乗せるあたりも,シュトラウスの真骨頂と言えるでしょう。
Bernstein: A Wonderful Town - A Little Bit in Love
20世紀後半を代表する指揮者・作曲家の1人として知られるレナード・バーンスタイン(1918-1990)のミュージカル作品。
オハイオからNYにやってきた作家志望のルースと女優志望のアイリーンの2人の姉妹。ルースは出版編集者に原稿を持ち込みますが,変な取材を命じられ,アイリーンにはその美貌で出会う男たちがみなメロメロになり,いろいろ事件が起きます。最後には,アイリーンは騒動の評判から歌手となり,ルースは「静かな娘」が好きなベイカーとハッピーエンドで,騒々しい都会も素敵な「ワンダフル・タウン」となります。
「ちょっと恋してしまったかしら」は,アイリーンが編集者ベイカーに出会ってちょっと恋心を抱いてしまう歌。この曲のほかにも,「オハイオ」「コンガ」など人気のあるナンバーが含まれています。
Rodgers: South Pacific - Some enchanted evening
ジェームズ・ミッチナーの小説『南太平洋物語』を原作とした、オスカー・ハマースタイン2世(脚本、作詞)、リチャード・ロジャース(作曲)のブロードウェイミュージカル。1950年トニー賞受賞、1958年にアメリカ映画化された。
「魅惑の宵」は、フランス人の農場主エミールが、美しい南の島の夜景をバックに、年の差を超えて愛するネリーに自分の思いを伝える歌です。
Leon Jessel: Schwarzwaldmädel - Erklingen Zum Tanze Die Geigen
レオン・イェッセル(1871-1942)の代表作であるこのオペレッタ『シュヴァルツヴァルトの乙女』(1917年初演)は,シュヴァルツヴァルト(黒い森)の村に住む教会の楽士長レーメル,その小間使いベルベレ,都会ベルリンからやって来た若者ハンスと従者,ハンスを追っかける元カノ達の恋物語。結局レーメルのベルベレへの恋は実らないのですが,この「ヴァイオリンがダンスとともに鳴り響く」では,思わせぶりな恋の駆け引きが歌われます。
Friml: Rose Marie - Indian Love Call
ルドルフ・フリムル(1879-1972)はプラハ生まれで,アメリカでオペレッタやミュージカルの作曲家として成功しました。
『ローズ・マリー』は1924年の作品で,作詞家にはオスカー・ハマースタイン2世も名を連ねており,ブロードウェイやロンドンでロングランを記録し,3回映画化されたヒット作。カナディアン・ロッキーを舞台とした,フランス系カナダ人の娘ローズ・マリーを巡る物語です。「インディアン・ラヴ・コール」は恋人ジムとの二重唱で,ネイティヴ・アメリカンの愛の呼び声をまねて恋心を歌います。
Leigh: Man of La Mancha - The Impossible Dream
「見果てぬ夢」は,スペインの作家セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』に基づくブロードウェイ・ミュージカル『ラ・マンチャの男』(1965年初演)の中で歌われる印象的なテーマ曲。
中世のスペインで教会を誹謗した疑いで投獄された劇作家セルバンテスは,獄中で囚人たちから身ぐるみ剥がされそうになりながら自身の脚本だけは守ろうと,牢獄内で囚人たちを巻き込んで即興劇「ドン・キホーテ」を演じることに。劇中劇の中で,周囲からは狂人と見られながらも,自身の信じる騎士道を突き進むキホーテの姿に,いつしか周囲も心動かされていきます。人生の困難に立ち向かって信じる道を突き進む強さが歌われています。
Styne: Hallelujah, Baby! - Being Good Isn't Good Enough
1967年初演のミュージカル『ハレルヤ・ベイビー!』は,歌手になることを夢見る黒人少女の成長を描いた作品です。
Yvain: My Man
「私の愛しい人」は,1964年にブロードウェイで初演され,1968年アメリカ映画として制作された『Funny Girl』で挿入歌として歌われました。このミュージカルはブロードウェイで活躍した喜劇女優ファニー・ブライスの半生を描いたもので,バーブラ・ストライサンドが映画初主演しアカデミー主演女優賞を獲得しました。
Lloyd Webber: The Phantom of the Opera - All I Ask of You
『オペラ座の怪人』は、フランスの作家ガストン・ルルーの小説を基にしたロイド・ウェバーのミュージカルである。1986年にロンドンで初演されて以来、現在もロングラン記録を更新中。
19世紀末のパリ、顔の奇形のせいで世間から迫害され、母親からも見捨てられて育ったファントムは、オペラ座の地下に隠れ住んでいた。自らをエンジェルオブミュージックと称して、愛するコーラスガールのクリスティーヌに歌を教え、プリマドンナへと導く。
「君に求めることすべて」 は、クリスティーヌと幼馴染で子爵のラウルとクリスティーヌのラブソング。
Lloyd Webber: The Phantom of the Opera - The Phantom of the Opera
ロイド・ウェバー作曲『オペラ座の怪人』のテーマ曲。クリスティーヌと怪人の有名な2重唱です。
Bernstein: Westside Story - Somewhere
『ウェスト・サイド・ストーリー』(1957年初演)は,作詞はスティーヴン・ソンドハイム,作曲はバーンスタインで制作されました。
ニューヨークを舞台に,イタリア系アメリカ人の不良グループジェット団とプエルトリコ系のシャーク団の対立と,ジェット団元リーダーのトニーと,シャーク団リーダーのベルナルドの妹マリアの恋,恋する2人の思惑に反して行われた決闘で,弟のように思うリフを刺されて逆上したトニーがベルナルドを殺してしまうことから始まる更なる対立と悲劇を描いた現代の『ロミオとジュリエット』と称されるミュージカル。それまでのミュージカルがハッピーエンドのラブコメディ主流だったのに対し,人種間の対立という社会問題をテーマにした当時の衝撃作でした。
「サムホエア」は,1961年の映画ではトニーとマリアの二重唱ですが,オリジナルでは舞台裏の女声によって歌われる夢のシーンでした。ロミオとジュリエットの結末と異なりマリアは1人で力強く生きて行きますが,愛と許しを求めるように,「どこかに平和で静かな開かれた世界が私たちを待っている。どこかに新しい生き方,謝罪する道がある。私の手を取って,私があなたをそこへ連れて行く」と歌われます。
Gershwin: By Strauss
ジョージ・ガーシュウィン(1898-1937)はアメリカの作曲家で,ポピュラー音楽とクラシック音楽の両面で成功しました。代表作は『ラプソディ・イン・ブルー』,オペラ『ポーギーとベス』(最も有名なナンバーは「サマータイム」),ミュージカル『クレイジー・フォー・ユー』(『ガール・クレイジー』の改作;主なナンバーは「バット・ノット・フォー・ミー」「エンブレイサブル・ユー」「アイ・ガット・リズム」)。
「シュトラウス作曲」の原題は""By Strauss""。ミュージカル""The Show is On""のために書かれたナンバーで,歌詞はシュトラウスのウィンナ・ワルツを讃えるものです。「ブロードウェイの音楽はやめてくれ! アーヴィング・バーリン(『アニーよ銃をとれ』)も,カーン(『ショウ・ボート』)も,コール・ポーター(『キス・ミー・ケイト』)もダメ! ガーシュウィンなんてやかましいだけだし! 音楽は優雅なウィンナ・ワルツ,それも,ヨハン・シュトラウスの『ドナウ』や『こうもり』じゃなきゃ!」
今回の演奏では,二人のシュトラウスの名曲を挿入します。一人はもちろん,曲中で讃えられているヨハン・シュトラウス2世,もう一人は,今年生誕150年のリヒャルト・シュトラウスです。この二人,血縁関係はまったく無く,ヨハンは生粋のウィーンっ子で,「ワルツ王」と讃えられており,一方,リヒャルトはドイツ・ミュンヘン生まれですが,ウィーンを舞台としたオペラ『ばらの騎士』『アラベラ』を作曲し,ウィンナ・ワルツを巧みに取り入れました。1番の終わりにリヒャルトの『ばらの騎士』のワルツ,2番の終わりにヨハンの『こうもり』から「兄弟姉妹よ」をピアノ独奏でお楽しみください。
Schmidt: Fantasticks - Try to remember
ミュージカル『ファンタスティックス』はオフ・ブロードウェイで1960年から2002年まで17,000回以上,また全米や世界各国でも上演されています。
隣り合って暮らす家族と,子ども同士の恋を巡る物語で,「思い出してみて」はその第1曲に歌われます。「思い出してみて,あの9月のことを,穏やかだった生活を,夢や愛を。12月となった今,思い出し,振り返るのは,いいことだよ」