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ヴェルディ作曲 歌劇『イル・トロヴァトーレ』
ヴェルディ作曲 歌劇『イル・トロヴァトーレ』
歌劇『イル・トロヴァトーレ』(Il Trovatore)は、『リゴレット』、『椿姫』と並ぶ、ジュゼッペ・ヴェルディ(1813-1901)の中期の三大傑作に一つで、全4幕からなるオペラ。原作はスペインの劇作家アントニオ・ガルシア・グティエレスによって書かれた『エル・トロバドール』(El Trovador 吟遊詩人)で、台本はサルヴァトーレ・カンマラーノにより書かれたが、1852年7月に急死してしまい、彼の死後にレオーネ・エマヌエーレ・バルダーレにより補作され、1853年1月19日にローマのアポッロ劇場で初演された。
あらすじ
15世紀初頭のスペイン。アラゴン地方の貴族の家に二人の息子がいたが、弟ガルシアが病弱なことについて、あるジプシーの老婆が嫌疑をかけられ、火炙りにされた。老婆の娘のアズチェーナは復讐しようとこのガルシアを誘拐。老婆の死体の脇には幼い子供の骨が見つかる。兄弟の父、先代当主は悲しみのあまり世を去るが、兄ルーナに弟ガルシアは何処かで生きているから捜すように遺言したのであった。それから20年後。ルーナ伯爵は行方不明の弟を捜し続けていた。アズチェーナに育てられた吟遊詩人(トロヴァトーレ)のマンリーコは、アラゴン王妃女官のレオノーラと互いに愛し合っていた。同じくレオノーラを愛するルーナ伯爵は、マンリーコに決闘を挑む。この決闘でマンリーコが死んだと勘違いしたレオノーラは修道院入りを決意。修道院前でレオノーラを連れ去ろうとするルーナ伯爵の前に、ビスカヤ山麓に潜んでいたマンリーコが現れ、レオノーラと二人で逃げ去る。愛しあう二人が結婚式を挙げようとしていると、ルイスによって、アズチェーナがルーナ伯爵によって火刑にされると知らされる。復讐しようと怒りに燃えたマンリーコは出陣するが、結局ルーナ伯爵にマンリーコは捕えられる。レオノーラは我が身と引き換えに愛するマンリーコの助命をルーナ伯爵に願い、承諾を得ると隠し持っていた毒を仰ぐ。レオノーラは牢獄のマンリーコに命が救われたことを伝えるが、既に毒がまわったレオノーラは息絶える。レオノーラの裏切りを知ったルーナ伯爵は、マンリーコを処刑するが、アズチェーナは、ルーナ伯爵が処刑したマンリーコこそ、20年前に消えた弟ガルシアであると暴露し、復讐を果たす。ルーナ伯爵は恐れおののき、ただ呆然と佇むのであった。
♪第1幕第2場より
レオノーラのアリア「穏やかな夜~この恋は言葉では表現出来ないわ」
レオノーラ、マンリーコ、ルーナ伯爵の3重唱
15世紀初頭のスペインのアラゴン地方。アリアフェリア宮殿の庭園。夜も更け、厚い雲が月を覆っている。アラゴン王妃女官のレオノーラが、侍女イネスとともに庭園にやって来る。レオノーラは、イネスに一人の吟遊詩人(トロヴァトーレ)を愛するようになった経緯を語る〈Tacea la notte placida…Di tale amor, che dirsi…「穏やかな夜~この恋は言葉では表現出来ないわ」〉。「馬上試合で、無名の騎士が勝利し、私は彼の頭上に勝利の花冠を捧げた。その後、内戦が起こり、その騎士には逢えなくなってしまった。しかし、季節が巡って、ある穏やかな夜に一人の吟遊詩人の愁いに満ちた歌声が聞こえてきた。その中で私の名前が繰り返し歌われていた。急いでバルコニーに駆け寄ってみると、そこにいたのはまさにあの方だった。」と。この話を聞いたイネスは不吉な予感を覚え、その恋を諦めさせようとするが、レオノーラは聞き入れない。二人が居室へ戻って行くと、そこへルーナ伯爵がレオノーラに愛を打明けようと、彼女の居室に行きかける。しかしその時、吟遊詩人の歌が聞こえて来る。その歌を聞きつけて飛び出してきたレオノーラは、暗闇のため吟遊詩人と間違って庭園にいたルーナ伯爵に、「私の愛しい方!」と語りかけ、抱きついてしまう。それを見ていた吟遊詩人が「裏切り者!」と叫ぶので、レオノーラは人違いをしたことに気づいて動揺する。彼の足下に身を投げて人違いをしたことを詫びるレオノーラ。眼の前で自分が愛されていないことを知らされたルーナ伯爵。彼は激怒し、吟遊詩人に名前を名乗らせる。「マンリーコ」と答える吟遊詩人。恋敵がウルジェル派で死刑を言い渡された宿敵でもあることを知った伯爵は、マンリーコに決闘を挑み、マンリーコもそれに応える。そして二人は剣を抜き合い、それを見たレオノーラは気を失って倒れる。この「人違い」は、このオペラの重要な要素であり、真に愛し合う恋人同士ならば暗闇であっても人違いをすることはなく、レオノーラが人違いをしたのは、マンリーコとルーナ伯爵が実の兄弟であることを暗示している。
♪第3幕第2場より
マンリーコのアリア「ああ、美しい人」~カバレッタ「見よ、恐ろしい火を」
カステッロール城内の礼拝堂に続く部屋。マンリーコはレオノーラに、「敵は明日の夜明けとともに攻めてくるだろうが、勝利は味方のもの。」と話し、さらにマンリーコは不安がるレオノーラを宥める〈Ah! sì, ben mio…「ああ、美しい人」〉。マンリーコとレオノーラが神聖な響きが清らかな心に降り注ぐ〈L’onda de’ suoni mistici…神聖な響きが〉と歌い、喜びに満ち、いよいよ婚礼のため礼拝堂に入ろうとした時、ルイスが飛び込んできて、ジプシーの女が敵方に捕らえられ、枷をはめられて連行され、火炙りにされようとしていることを告げる。マンリーコは怒りに燃え、母の救出と伯爵への復讐を誓い〈Di quella pira…「見よ、恐ろしい火を」〉を歌う。このカバレッタの中間部の”O teco almeno”の部分と最後の”All’armi”の部分で、スコアには書かれていないハイCで歌うことが慣例化されており、これは、初演時マンリーコを歌ったテノール、カルロ・ボーカルデや、ロンドン初演時にマンリーコを歌ったテノール、エンリーコ・タンベルリックが歌ったものを、ヴェルディ自身も許可した歌い方とされ、このハイCを失敗することはテノールにとっての恥辱とも言われている。
ヴェルディ作曲 歌劇『椿姫 (La Traviata)』
歌劇「椿姫」は、ヴェルディの中期の代表作で、この作曲家が同時代から題材をとった唯一の作品。原作はA.デュマ・フィスの小説「椿姫」、原題は「La Traviata(道を踏み外した女)」。1853年ヴェネチアのフェニーチェ劇場にて初演された。
舞台は19世紀中頃のパリ。社交界の花として享楽的な日々を送る高級娼婦のヴィオレッタは、不治の病に冒されていた。彼女の館での夜会で出会った地方名士の息子アルフレードの求愛に真実の愛に目覚め、パリの喧騒を離れて共に暮らし始めるが、社会規範や家名を重んじる彼の父ジェルモンから、別れないと娘の良縁が破談になると強く迫られる。激しく拒絶したヴィオレッタであったが、葛藤の末に終には自ら去る決心をする。裏切られたと思い込んで憤ったアルフレードが漸く真実を知って駆けつけたとき、すでに彼女は死の床にあり彼の腕の中で息絶える。
♪第1幕より アルフレードとヴィオレッタの二重唱と合唱「友よ、さあ飲み明かそう(乾杯の歌)」~「あれは何?」
ヴィオレッタの館での華やかな夜会の場。かねてから彼女を密かに思慕していたアルフレードは今宵デビューを果たし、友人やヴィオレッタにも所望されるまま、恋心にときめきながら、美酒と愛と生きる歓びを即興の歌に託して披露すると、ヴィオレッタが、恋も人生も儚いもの、今このひとときを楽しみましょうと応じ一同も唱和する。客たちをもてなしながら、ヴィオレッタは突然苦しげに倒れかかる。
♪第1幕より ヴィオレッタとアルフレードの二重唱「何て蒼白い!」~「ある日、幸福に満ちた…」
心配して一人残ったアルフレードは、この暮らしは命を縮めると忠告し、自分が傍にいて守ることができたならと一年前から胸に秘めていた熱烈な愛を告白する。軽く受け流していたヴィオレッタだが、次第に一途な真心に激しく心を揺り動かされていく。再会を約する花を手渡して別れる。
♪第2幕より ヴィオレッタとジェルモンの二重唱「天使のように清らかな娘」
社交界を離れ、アルフレードと幸せに暮らすヴィオレッタのもとに、ジェルモンが突如現れ、アルフレードの妹の縁談の障害になるからと別れを迫る。ヴィオレッタは、アルフレードを心から愛していることや、自分が病気で最後が近いことを訴え抵抗するが、ジェルモンに「天に祝福されない関係は諦め、私達家族の救いの天使になってください」と説得され、ついには、絶望のうちに別離を決心する。「ひとたび堕ちてしまった女には、 立ち上がる希望などない。美しく清らかなお嬢様にお伝えください。 不幸にも犠牲を払う女がいると… 一筋の幸せの光しか残されていないのに、それを諦め死んでゆくと!」
ヴェルディ作曲 歌劇『ドン・カルロ』第4幕より
フィリッポ2世のアリア「ひとり淋しく眠ろう」
ドン・カルロはシラーの戯曲によるヴェルディ中期の傑作。
「ひとり淋しく眠ろう」は、王妃には愛されず、息子には刃を向けられた国王フィリッポ2世が絶望的な気持ちで孤独を嘆くバスの有名なアリアである。
彼女は私を愛していない いや、心を閉ざしたままだ 私への愛は持っていない
眠れば、裏切り者が見澄まし 王として王冠を失い、夫として名誉を失くす
眠れるのは、王家のマントに包まれて 私の人生が終わる時だけだろう
ああ、人の心を読み取る力を王冠が授けてくれたなら
ヴェルディ作曲 歌曲『リゴレット(Rigoletto)』
歌劇『リゴレット』は『トロヴァトーレ』『椿姫』と並ぶヴェルディの中期の三大傑作の一つで、心理表現に重きを置く作風を確立したと言える作品。
原作はフランスの小説家ヴィクトル・ユーゴーの戯曲『王様はお楽しみ』<Le Roi s'amuse>で、ピアーヴェの台本により登場人物名や題名を変更し『リゴレット』の題名で3幕4場のオペラを作曲、1851年にヴェネツィアのラ・フェニーチェ歌劇場で初演された。
舞台は16世紀の北イタリア、マントヴァ。リゴレットは好色な領主マントヴァ公に仕える醜い道化師。愛する一人娘ジルダを世間から隠しているが、公爵の廷臣達はジルダをリゴレットの愛人と勘違いして誘拐し、公爵にさしだしてしまう。リゴレットは暗殺者を雇って公爵殺害を謀るが、公爵を密かに愛するジルダは身代わりとなって絶命する。
♪第2幕より 第10曲 ジルダとリゴレットのシェーナと二重唱「日曜にいつも教会で」~「復讐、凄まじい復讐が」
公爵の邸内。娘を返せと怒り嘆くリゴレットの前にジルダが走り出る。リゴレットは廷臣たちを退け父娘が二人きりになると、4つの部分から成る二重唱が始まる。①リゴレットに促されジルダはアリア「日曜にいつも教会で」で公爵との出会いと彼への愛を語る。②リゴレットは娘を慰める二重唱で、こんな忌まわしい場所からは立ち去ろうと決意を固める。③牢獄に連行されるモンテローネ伯爵。彼もまた娘を公爵に弄ばれた父親だが、公爵の肖像画に「悪運の強い奴め」と罵りの言葉を吐いて連れ去られる。④その言葉にリゴレットは、伯爵の代わりに自分が復讐すると誓い、「やめて」と懇願するジルダとの激情的な二重唱で終わる。
♪第3幕より公爵のカンツォーネ「女心の歌」
美しい酒場女(実は暗殺者スパラフチーレの妹)目当てに、スパラフチーレの営む町はずれの曖昧宿にやってきた公爵が、リゴレットとジルダが垣間見ているとも知らず上機嫌で歌うカンツォーネ。
くるくる変わる女心を信じるは愚か者
女の嘘や媚に騙されるは憐れな御仁
さりとてその情けの味を知らぬこそ一番の不幸せものよ
ショーソン作曲『7つの歌曲』Op.2より
「蜂すずめ(Le Colibri)」
E.ショーソン(1855-1899)はフランスの作曲家で、マスネやセザール・フランクに作曲を学ぶ一方、バイロイトをしばしば訪れ、ワーグナーの影響を受けた。交響曲、室内楽、歌曲、歌劇など幅広い分野での作曲を手掛けた。この曲は初期の作品である「7つの歌曲」Op.2(1879-82年作曲)の第7曲。淡々とした静かな旋律で官能的な愛が歌われ、現在でもしばしば演奏されるフランス歌曲の人気曲の1つである。
詩はフランスの高踏派の詩人、ルコント・ド・リール(1818-1894)の作品で、その詩はフォーレやドビュッシーの曲にも多く用いられている。
<訳>
緑色の蜂すずめ 丘の王よ
露と明るい太陽を眺めながら
細い草で織られた巣の中で輝いている
空中にこぼれてる新たなひと筋の光のように
彼は急いで近くの泉に飛んでいく
そこでは竹が海のようにざわめき
そこでは赤いアソカが神々しい香りに花開き
湿ったひと筋の光を花唇にもたらす
金色の花に向かって 彼は舞い降りて とまる
そして薔薇色の杯に満たされた愛をたっぷりと飲む
死んでしまえばいい 飲みつくしてしまう前に!
清らかな君のくちびるの上で おお 愛しい人よ
同じように私も死にたかった
香りで満たした初めてのくちづけで
注釈
蜂すずめ:ハチドリ
アソカ:ムユウジュ(無憂樹)の木。仏教三大聖樹の1つで、釈迦の誕生に関わったとされ、黄色~赤橙色で房状の集合花をつける。
プッチーニ作曲 歌劇『ラ・ボエーム』より
ミミのアリア「あなたの愛の呼び声に」
イタリアの偉大なオペラ作曲家ジャコモ・プッチーニ(1857-1924)の代表作で,1896年に初演された。
19世紀初頭のパリを舞台にして,詩人ロドルフォとお針子ミミの悲恋物語を軸に,貧しいながらも自由奔放な芸術家の卵たちの青春群像が生き生きと描かれる。
冬も終わりの頃,夜明け前のパリ郊外アンフェール門付近。ミミは,恋人ロドルフォが親友のマルチェルロに「ミミは不治の肺病に冒されて日々弱っていく。最近自分が彼女に冷たくするのは,自分の貧しさが彼女を死に追いやってしまうのが苦しいからだ」と話すのを聞いてしまう。
ミミはロドルフォと二人きりになり,もう別れましょうと切り出す。「出会った日に買ってくれたあのピンクのボンネット,もしよかったら二人の愛の思い出にとっておいてね。さようなら,恨みはしないわ」
マスネ作曲 歌劇『ウェルテル』第3幕より
ウェルテルのアリア「春風よ、なぜ私を目醒めさすのか(オシアンの歌)」
ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を原作にしたフランスの作曲家マスネの代表作で、ウェルテルの自殺という破局に向かう悲劇の全編にわたって、憂いと官能を湛えた耽美的な音楽が流麗に彩る。1892年ウィーンにて初演された。
ウェルテルは人妻シャルロッテへの思いが断ち切れぬまま、クリスマスイヴに放浪の旅から戻って来るが、その様子にただならぬものを感じたシャルロッテが、気を鎮めさせようと以前彼が訳しかけていた旧いオシアンの詩集を差し出すと、ウェルテルはその詩にことよせて彼女への痛切な愛を告白する。
モーツァルト作曲 歌劇『コジ・ファン・トゥッテ』第2幕より
ドラベッラとグリエルモの二重唱「心をあなたに差し上げます」
Così fan tutte, ossia La scuola degli amanti(女はみなこうしたもの、または恋人たちの学校)は、モーツァルトが1790年にロレンツォ・ダ・ポンテの台本に作曲したオペラブッファ。
舞台は18世紀ナポリ。二人の青年士官が、老哲学者の「女には貞節がない」という言葉に反発して、彼らの恋人である姉妹の貞節を試す賭けをし、トルコ貴公子に変装して互いの相手を誘惑する。
「心をあなたに差し上げます」は、青年士官グリエルモがフェランドの恋人であるドラベッラを口説く2重唱。グリエルモは、フェランドを憐れみながらも「凍てついた心を君の手で温めておくれ」と、ドラベッラが付けていたフェランドの肖像画を外してハートのロケットを贈ることに成功する。
レオンカヴァッロ作曲 歌劇『道化師』より
ネッダのアリア「鳥の歌」
ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(1857-1919)は,現実の生活に題材をとった「イタリア・ヴェリズモ・オペラ」の作曲家で,代表作『道化師』は1892年に初演された。
舞台は南イタリアのモンタルト村。祭日に,旅回りの芝居一座がやってくる。座長のカニオは夜の芝居の宣伝をし,村の男たちと居酒屋に繰り出す。残ったカニオの妻ネッダは自由な生活に憧れ「鳥の歌」を歌う。
そこへ,ネッダと相思相愛の村の若者シルヴィオがやって来て2人は駆け落ちの相談を始めるが,戻って来たカニオにその場を見られてしまう。カニオは逆上し苦悩しつつも,芝居のための準備を始める。
夜になり,芝居が幕を開ける。筋は奇しくも,ネッダ扮するコロンビーナと恋人の逢引の場に,カニオ演ずる夫のパリアッチョが帰って来るというもの。カニオは,次第に芝居と現実の区別がつかなくなり,ついにネッダを刺し殺してしまうのだった。
ワーグナー作曲 歌劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より
合唱「目覚めよ,朝は近づいた」
ワーグナーは四部作『ニーベルングの指環』の作曲の合間を縫って,1867年に『ニュルンベルクのマイスタージンガー』を完成させた。市民の人情の機微や,伝統と新風をテーマにしたこの作品は,ワーグナーには珍しい,全音階的な喜劇となっている。
舞台は16世紀のドイツ,ニュルンベルク。手工業の親方(マイスター)たちは詩作や歌も嗜み(ジンガー),夏至のヨハネ祭には歌合戦が開かれる。集まった民衆は「目覚めよ,朝は近づいた」を歌って,マイスターの芸術を讃える。
ワーグナー作曲 歌劇『タンホイザー』
『リエンツィ』などの“習作”を除くと,ワーグナーの比較的初期の作品で,1845年に完成・初演された。
舞台は13世紀初頭のドイツ,テューリンゲン。領主ヘルマンに仕える吟遊詩人タンホイザーは,領主の姪エリーザベトとの清い愛を捨て,異教の愛の女神ヴェーヌスのもとで1年以上も快楽にふけっていた。その生活にも嫌気がさしたタンホイザーは,エリーザベトや仲間たちの待つヴァルトブルク城に戻るが,歌合戦で「愛の本質」を問われて「ヴェーヌス讃歌」を歌ってしまい,禁断の地にいたことが露見する。領主はタンホイザーにローマへの巡礼を命じ,恩赦が得られなければ追放に処すと言い渡す。
♪第3幕より ヴォルフラムのモノローグとアリア「彼女がここで祈っていると」「死の予感のように夕闇が大地を覆い~やさしい宵の明星よ」
ヴァルトブルク城近くの谷。エリーザベトは心に深い痛手を負いながらも,タンホイザーが赦しを得て戻ることを毎日マリア像に祈っている。タンホイザーの親友ヴォルフラムは,その愛の力に感動する。
しかし,戻って来た巡礼の一行にタンホイザーの姿は無かった。エリーザベトはマリアに,自らの命と引き換えにタンホイザーが救われるようにと祈る。エリーザベトを見送ったヴォルフラムは,宵の明星に歌いかける。彼女が地上から飛び立って天使になるとき,その道をやさしく照らしてくれと。