3月5日(月)
落合啓之(九州大学):Gamma factors of Selberg’s zeta functions and absolute zeta functions
階数1の局所対称空間の Selberg zeta のガンマ因子に対する黒川信重や
権寧魯らの研究を踏まえて、これらのガンマ因子が絶対ゼータとして解釈
できることを 説明する。この研究は黒川信重との共同研究である。
小森靖(立教大学):多重楕円ガンマ関数の積分表示と関数関係式
多重ガンマ関数の楕円類似である多重楕円ガンマ関数に関して、
成川(2004)は積分表示を用いて、ある関数関係式を得ている。
本講演ではこの関係式の直接的で簡便な証明を与え、さらに一般化
について紹介する。この研究は神戸大の野海正俊氏との共同研究である。
加藤正輝(神戸大学):二重余接関数の加法型公式とその一般化について
本講演では、二重余接関数(二重正弦関数の対数微分)が、ある加法型公式
を満たすことを紹介する。この加法型公式は、通常の余接関数の加法定理に
加えて、Dedekind和の相互法則やRamanujanの公式、二重ゼータ値の
parity result等を含んでいる。さらに、加法型公式の楕円ガンマ関数の対数微分
への一般化や複素周期の多重三角関数の超超越性にも触れたい。
3月6日(火)
木村太郎(慶應大学):場の量子論と多重関数
物理学では計算を進めると度々,無限大・発散が現れ,そこから
意味のある結果を導く際の正規化の手法としてゼータ関数を用いる
ことがあります.近年,局所化の方法と呼ばれる計算手法の発展により
様々な背景時空における分配関数などの取り扱いが可能になりましたが,
そこでは多重三角・ガンマ・ゼータ関数, およびそのq 類似・楕円類似が
いたる所で駆使されています.本講演ではそうした近年の発展を概観
しながら「多重三角関数とその一般化」の可能性を探りたいと思います.
竹山美宏(筑波大学):|q|=1における量子KZ方程式と多重正弦関数
量子KZ方程式はパラメータ q をもつ差分方程式系である。
可解な量子力学の模型のひとつである1次元XXZスピン鎖の相関関数は、
量子KZ方程式を満たす。
ここで、模型のパラメータが massless region と呼ばれる領域にある場合は、
対応する量子KZ方程式のパラメータqの絶対値が1となる。
神保・三輪(1996)は、この場合の量子KZ方程式の解を、
多重正弦関数を含む多重積分を使って構成した。
本講演では、この結果を中心として、関連する話題を紹介する。
梅田亨(京都大学):スターリング数と逆階乗級数
スターリング数の相反律は,逆階乗級数に関する等式とも
解釈できる.それに関連してでてくる函数について述べる.
野海正俊(神戸大学):楕円ガンマ函数と楕円超幾何函数
楕円ガンマ函数と楕円超幾何函数に関連した
話題から,最近の研究の進展を紹介する.
渋川元樹(大阪大学):An elliptic analogue of the Hölder's double sine function
Hölderの二重三角函数の積分表示からの楕円類似を考察し, その基本的性質を示す.
3月7日(水)
小野寺一浩(千葉工業大学):一般化されたWeierstrassの楕円函数の加法型公式
Lewittesによって導入されたEisenstein級数のある一般化は, 荒川の研究
により, 二重三角函数と深い関わりを持つことが知られている。本講演では,
Lewittesの函数をWeierstrassの楕円函数の一般化として捉え, それが満たす
加法型公式について解説する。
赤塚広隆(小樽商科大学):積分表示から見た多重三角関数およびその一般化について
多重ガンマ関数はBarnesゼータ関数のs=0における偏微分、
多重三角関数は多重ガンマ関数2つの組み合わせで定義される。
多重ガンマ関数と比較した時、多重三角関数の特徴として多重三角
関数の対数について緩い条件下でフーリエ級数型の級数表示を持つ
ことが挙げられる。
成川(2004)は多重三角関数がある積分表示を持つことを示し、積分路の
移動によって多重三角関数のフーリエ級数型表示と関連づけられることを
見出した。本講演では、パラメータsを特殊化する前の積分表示に対応する
ものをまず導入し、Barnesゼータ関数の和と、フーリエ級数型表示が結びつく
ことを説明したい。得られる結果の大部分は小森-松本-津村(2013)などに
含まれるが、Barnesゼータ関数単体や多重ガンマ関数でなく、Barnesゼータ
関数の和や多重三角関数を考えることの自然さについて、積分表示を中心に
講演者が思うところをお話ししたい。また、上述の先行研究の一般化の可能性
についても議論したい。
田中秀和(芝浦工業大学):絶対ゼータ関数論におけるε-因子の計算
絶対ゼータ関数のε-因子の計算について報告する. とくに, 多変数多重三角関数の
出てくる場合を詳しく解説する.
黒川信重(東京工業大学):多重三角関数と絶対ゼータ関数
多重三角関数は多重ガンマ関数二つの組み合わせで得られる。
これを一般化した形で、絶対ゼータ関数を二つ組み合わせてε関数という
ものを構成することができる。これは、多重三角関数の場合を特別の場合
として含むと同時に新しい場合がたくさん現れる。講演では、多重三角関数
の場合及びそうでない場合に関していろいろな例を挙げて解説したい。